霜月透子
1記事に収まる長さの短編(一般文芸)をまとめました。 短編(童話)はマガジン「小さなお話」をご覧ください→https://note.com/toko_shimotsuki/m/m224a27c9c19f
1記事に収まる長さの短編(童話)をまとめました。 短編(一般文芸)はマガジン「短編万華鏡」をご覧ください→ https://note.com/toko_shimotsuki/m/m1f87ef3d01ce
近況報告やお知らせ、またはエッセイや雑記など小説以外のもの。
たらはかにさん主催【毎週ショートショートnote】https://note.com/tarahakani/n/n10d601f79c14 参加作品です。
書籍版『祈願成就』にいただいた感想文。ありがとうございます!
【文学フリマ東京39 出店!】 📍ブース:な-47 🗓12/1(日) 12:00〜開催 🏢東京ビッグサイト西3・4ホール 📕イベント詳細→ bunfree.net/event/tokyo39/ 👻ウタ・カタ→ c.bunfree.net/e/d2j 毎週ショートショートnoteでお馴染みのたらはかにさんこと田原にかさん、「幻想と怪奇」などに寄稿されている石原三日月さん、そして霜月透子の3人で企画したホラーアンソロジーです。 著者には、やまなし文学賞で佳作を受賞された秋田柴
夜の海に砂嘴が現れ、白装束の少女は島へと渡る。 浜で黒留袖姿の老婆が待っていた。 傍らには、小さな祠と白磁の盃。水が満たされた盃には、異国の街が沈んでいる。 「手をお出し」 老婆は盃を手に取り、傾けた。こぼれた水が指の隙間を流れ落ち、小さな粒がひとつ、少女の手のひらに残った。 琥珀色の金平糖。 空になった盃の底は真っ白で、異国の街は消えていた。 老婆は盃を置いて、島の麓の鳥居をくぐり抜ける。少女は懐紙に包んだ金平糖を懐におさめ、老婆の後をついていく。 坂と石
1.ゆかちゃんのモコ 「いる、いらない、いる、いる……うーん。やっぱいらない」 ゆかちゃんの手があっちこっち動く。ぼくはそれを棚の上で見ていた。 「いる、いる、いらない、いる」 ゆかちゃんが絵本やおもちゃをひとつずつ手にとっては、いるかいらないかで分けている。いるものはダンボール箱へ。いらないものは大きなビニール袋へ。 ダンボール箱はそのまま引っ越しのトラックに積まれて新しいおうちに行く。ビニール袋はそのままゴミに出される。 「このヘアゴムはかわいいけど、
コングラボードいただきました。 お読みくださり、ありがとうございます。 https://note.com/toko_shimotsuki/n/n4939dfe1d6f8
美々しく紅葉する秋山の木々に目を奪われていたせいであろうか。紅葉狩りの帰りであった一台の牛車が、常には向かわぬ道へと迷い込んでしまった。 そしてそのまま、どうということもない泥濘にはまった。ゆぶゆぶと沈む輪はこれより先へと進む気色もない。 このようなひと気のない夕間暮れは物の怪が現れるやもしれず。 「これは困ったところで足止めされてしまったものだ」 屋形の内から涼やかな若者の声がして、従者を側へと呼び寄せる。 「あれに見えるはどなたかのすまいだろうか」 うら
去る10月25日、創作大賞2024の授賞式が行われました。 私は受賞者OGとしてお祝いの場に参加させていただきました。 受賞者のみなさま、おめでとうございます。 ご存知の方もおられるかと思いますが、創作大賞はプロアマ不問とのことですので、今回も応募しておりました。2作品が中間選考通過しましたが、どちらも加筆を想定した内容で文字数も25,000文字ほどでしたので、正直受賞する自信はありませんでした。 とはいえ、残していただけた以上は期待してしまうというもの。 前回や他賞での経
子どもの背丈ほどの小さな木の下に、一匹の白ねこが眠っていました。丸まった背中には、茶色い模様があります。天使の羽根みたいな模様です。ねこの名はリンネといいました。 リンネはもぞもぞと動くと、のびをしながら大きなあくびをしました。 「ふわあ。よく寝たなぁ」 それから前足で顔を洗い、全身をなめて毛づくろいをしました。そしてようやく、はるちゃんがいないことに気がつきました。 はるちゃんはリンネの飼い主さんのおうちの10歳の女の子です。はるちゃんがもっと小さいころ、まだ
たゆたう黄昏 光の和らいだ空。小さな雲が連なって流れていく。浅紫と薄紅の影をまとって流れていく。 「おいしそ……」 穏やかなひとときをぶち壊す呟きが聞こえ、わたしは寝転がったまま顔を横に向けた。頬にコンクリートがこすれてチクチクする。視線の先には同じく寝転がって空を見上げる千夏の姿がある。千夏は染まりゆく雲から目を離さずに続けた。 「ああいう色、サーモンピンクって言うんでしょ? 鮭っておいしいよね。あたし、焼いたのも、お寿司も好き」 たしかに千夏はよく鮭おにぎり
『祈願成就』に素敵なご感想をいただきました! ぺろろさん、ありがとうございます! https://note.com/peroron1234/n/ne453835029a5
一筆申し上げます。 突然のお便りで失礼いたします。 わたくしはもうずっと前からあなたをお慕いしておりました。 お逢いしたことはありませんけれども、あなたのことはよく存じております。眩しく、力強く、あたたかいお方。 あなたはいつもぬくもりを残されていきます。去り行くあなたの背中を見つめながら、わたくしはそのぬくもりにそっと触れるのです。けれどもわたくしの触れたところから、あなたのやわらかなぬくもりは忽ち冷えて露となってしまうのです。その露さえも愛おしく想えるのです。どれほどにお
⚠️注意⚠️ 『NTT東日本です。2時間後にこの電話は使えなくなります。オペレーターとお話になりたい方は、1番を押してください。』 固定電話に自動音声で怪しげなのがかかってきてすぐ切りました。みなさんも気をつけましょうね。 https://www.ntt-east.co.jp/info/detail/231225_01.html
偏見や差別はよろしくない。 そんなことは常識以前の問題である。 もちろん私もそんなものは持ちたくないし、持たないようにしようと心がけてもいる。それでも残念ながら、どれだけなくそうとしても皆無にはならないんだろうとも思っている。そして、自分は大丈夫と思い込まずにいることは大切だと思っている。 そうはいっても、それだけ意識しているのだから、そうそう偏見を自覚する場面もないはずだ。 はずだったのだが。 とあるショッピングモールでのことである。 私はトイレに行った。もちろん女子ト
「うへぇ。あっつー。夜なのにちっとも涼しくならないなんて、都会の夏はどうかしてるよ」 沙奈はドアを開けるなり文句を垂れながら、バスルームへと向かった。 「おい、風呂入るなら着替えを持っていけって」 「もお。うるさいなあ。少しでも早くシャワー浴びたいんだよ」 「湯上りにバスタオル一枚でうろうろされるこっちの身にもなれよ」 「なあに、お兄ちゃんたら、妹の湯上り姿にドキドキしちゃうわけ?」 「ちげーよ。いつまでも子供気分のおまえのことを心配してだな……」 「ああ、はいはい
たくさんお読みくださり、ありがとうございます。 【作品リンク集】BOOK SHORT AWARD https://note.com/toko_shimotsuki/n/n1229deb7a294
山に入ってはいけない。 里にすむものなら誰でも知っていることでした。とくに月のない晩には、たとえ山に近づかなくても、向こうからやってきます。ですから、そんな晩は、家の戸をかたく閉じておかなければならないのです。 それは掟というよりも、わが身を守るための教えでした。 もし守らなければ、山から化け物がやってきます。豊かな毛に覆われた化け物が。 その化け物は、二本の足で立っている姿がよく見られます。背を丸め、両腕をだらりと垂らした格好で立っているのです。身の丈が人ほども
突然ですが、BOOK SHORT AWARDという公募をご存知でしょうか? わたくし、昨年までは毎年応募しておりました。 一期(一ヶ月)ごとに優秀賞が選出され、全五期の優秀賞の中から最終候補が選ばれ、そこから大賞が選出されるというものです。 優秀賞は全文がブックショートサイト内に掲載されます。 そして優秀賞の作品は自作品といえども勝手に他で掲載できません。(もちろん著作権は作者にあります。利用する際には正規の手続きが必要になるものと思われます) 基本的には「大賞取れなかった