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アクセスの少ない記事

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全体ビュー(全期間)でアクセスの少ない記事を集めました。アカウントを開設した初期の記事が多いのですが、意外と面白いかもしれませんよ。下へ行くほどアクセスが少なくなっています。
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2024年3月の記事一覧

「読む」と「書く」のアンバランス(薄っぺらいもの・07)

「読む」と「書く」のアンバランス(薄っぺらいもの・07)


◆第一話
 文章を書くのは料理を作るのに似ています。天才と呼ばれる人は別なのでしょうが、私なんかはずいぶん苦心して文章を書いています。

 勢いに任せて殴り書きする癖があるにしても、文章を書くのには手間と時間がかかるのです。

 料理も手間隙かけてせっかく作ったのに、ぺろりと平らげられる場合があります。あっけないですが、作ったほうとしてはうれしいものです。

 書くのに時間と労力を要するのに、さ

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「かける」と「かける」(かける、かかる・03)

「かける」と「かける」(かける、かかる・03)


かけるとかける
 かけるとかける。
「かける」と「かける」。

 上のフレーズは「AするとAする」と読めば、「Aすると(その結果)Aする(ことになる)」とも、「「Aすること」と「Aすること」」とも読めます。

 いずれにせよ、前者と後者は別物でなければなりません。

     *

 かける、掛ける、懸ける、架ける、賭ける、欠ける、駆ける、翔る、駈ける、掻ける、書ける、描ける、画ける

「かける

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共鳴、共振、呼応(薄っぺらいもの・06)

共鳴、共振、呼応(薄っぺらいもの・06)

 今回は梶井基次郎の小説の読書感想文です。まず、長いですが前提となる話から書きます。

◆物、言葉、そのイメージ*共鳴、共振、共感

 薄っぺらいもの、ぺらぺらしたものが、震える、振れる、鳴る、響く。音声、波、熱が生まれる。

 空気、管、線、帯を、通る、伝わる。

 薄っぺらいもの、ぺらぺらしたものが、震える、振れる、鳴る、響く。音声、波、熱が生まれる。

 共に振れる、共に震える、共に鳴る、共

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雨、濡れる、待つ

雨、濡れる、待つ

 今回の記事は、見出しのある文章を連想でつなげてあります。それぞれ断片としてお読みください。

雨、濡れる、待つ
 雨、濡れる、待つ。

 この三つが出てくる歌はとても多い気がします。私は音楽には疎いので、数えたことも調べたこともありません。そんな気がするだけです。

 そういえば、初めて買ったレコードが雨の出てくる曲でした。これは待つ歌ではありませんけど。

 私が初めて歌い覚えた(聞き覚えた)

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多層的で多元的なもの同士が、ある一点で一瞬だけつながる世界

多層的で多元的なもの同士が、ある一点で一瞬だけつながる世界

「春」を感じるたびに連想するのは「張る」です。辞書の語源の説明には諸説が紹介してありますが、私は「張る」派です。

 春になると、いろいろなものが張ります。木々や草花の芽やつぼみが膨らむのは張っているからでしょう。

 山の奥でも雪解けが進み、川面が膨らんで見えます。道を歩く人たちの頬も上気したかのように見えます。細い血管が膨らんでいるようです。

 山川草木、そして人が膨らみ張って見えます。膨張

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タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)

タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)

 引きつづき、梶井基次郎の作品を読んでいきます。今回も『檸檬』です。

・「共鳴、共振、呼応(薄っぺらいもの・06)」:対象作品『愛撫』
・「出す、出さない、ほのめかす(『檸檬』を読む・01)」:対象作品『檸檬』

 引用にさいして使用するのは『梶井基次郎全集 全一巻』(ちくま文庫)ですが、青空文庫でも読めます。

◆表象に対する紡錘形の立体のささやかな抵抗*タブロー、テーブル、タブラ

 丸善の

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隙間だらけの器

隙間だらけの器

 私たちは立体の世界に住んでいますが、立体を隈なくとらえることは難しいのではないでしょうか。

 隈なくとは隅から隅までです。こっちの隅から向こうの隅にまで移らないかぎり、隅から隅までをとらえることはできません。この「移る」が曲者であり難物なのです。

・重箱の隅を楊枝でほじくる。
・重箱の隅は杓子で払え。

 こんなことわざがありますが、重箱の隅をほじくったり、つつくのはいかに大変かで、立体(重

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細部を読む(『檸檬』を読む・03)

細部を読む(『檸檬』を読む・03)

 今回は梶井基次郎の『檸檬』の細部で、私にとって特に気になる部分を読みます。あえて細部に目を注ぐために、段落ごと、またはページごとに読んでいきます。

「『檸檬』を読む」という連載のこれまでの回で書いたことと重複する記述もありますが、今回は無理に全体的にまとめようとしない断片的な読みです。

・「共鳴、共振、呼応(薄っぺらいもの・06)」:対象作品『愛撫』
・「出す、出さない、ほのめかす(『檸檬』

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錯覚を生きる(錯覚について・02)

錯覚を生きる(錯覚について・02)

 シリーズ「錯覚について」の二回目です。

 今回は私の大好きな作家吉田修一の小説を紹介します。

     *

 冒頭の二ページ目の後半から続く三段落なのですが、吉田修一は文章も語り口もストーリー展開もうまくて、ぐいぐい引き込まれます。吉田修一の作品については、これまでに何度か記事で触れてきました。

 上は初めて載せるリンクなのですが、うまく反映されているでしょうか? 吉田修一の出てくる私の

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LRT―舌の位置をめぐる話(薄っぺらいもの・03)

LRT―舌の位置をめぐる話(薄っぺらいもの・03)

 シリーズ「薄っぺらいもの」の三回目です。前回に引きつづき、ぺらぺらして薄っぺらいけどしたたかな存在である――「伝えたい」=「(相手と)つながりたい」というヒトの欲求と欲望(私は欲求と欲望を区別したことがないのでこのように表記します)においてきわめて大切な役割を果たしている「器官=象徴」――舌についての話をします。

*「薄っぺらいもの・01」
*「ぺらぺら(薄っぺらいもの・02)」

 今回は、

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立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)

立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)

 今回は、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』のうち、「Ⅰ肖像画家の黒い欲望――ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む」をめぐっての読書感想文です。

  この「フーコー論」は、「薄っぺらいもの」というシリーズを始めるきっかけになった文章の一つでもあります。初めて読んだのはずいぶん前のことですが、以来私にとって気になる文章であり続けています。

引用文の余白に書く

*「顔と視線との離脱現象」

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