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【おしり】真夜中の図書館

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#小説

愛し方を間違えたとか思わなくていい、その時その時の愛の形を、アップデートしていけばいいだけ。【家族最後の日(植本一子著)】後編

愛し方を間違えたとか思わなくていい、その時その時の愛の形を、アップデートしていけばいいだけ。【家族最後の日(植本一子著)】後編

愛って難しい…
難しいものだけど、正解も分からないけど、だからこそ、その時その時の自分なりの愛情の捉え方、愛し方をアップデートしていきたいと思う、ということを前半で書いたかと思います。

今回のnoteでは、
前回の内容とは異なり、「愛」ではなく「怒り」について書いていきたいと思います。

上記は、植本さんがカウンセリングを受けた際、先生に言われた内容だそうです。

私はずっと「怒り」という感情を

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正直であることの勇敢さが、人と人とを繋げ、人との関係性を発展させていく【「まずはこれ食べて」(原田ひ香 著)】

正直であることの勇敢さが、人と人とを繋げ、人との関係性を発展させていく【「まずはこれ食べて」(原田ひ香 著)】

やばい、面白い!
久々に一気読みしてしまいました…。

あらすじは、
ベンチャー企業のオフィスである2DKのデザイナーズマンションに、家政婦「筧みのり」がやってくるところから始まります。
学生時代に立ち上げ、気心の知れた仲間同士でがむしゃらに成長させてきた会社では、最近は想像を絶する多忙さでギクシャクした空気が蔓延していました。
そんな会社に、ぶっきらぼうで無骨な筧みのりがやってきて、ぐちゃぐちゃ

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この世の誰もが素敵なあなた
【すてきなあなたに よりぬき集(暮らしの手帖編集部 著)】

この世の誰もが素敵なあなた 【すてきなあなたに よりぬき集(暮らしの手帖編集部 著)】

社会人になって初めて、見ず知らずの人にこそ絶対に思いやりをもって接しようと思うようになりました。
(それまでの私の道徳観大丈夫そ…)
社会人になってみて、社会ってこんなに厳しくて、
イライラと利益主義が蔓延していて人を思いやる余裕も無いのかとショックを受けました。
(もちろん、これは私から見えている世界なので、厳しい中でも思いやりを忘れない方々がいらっしゃるでしょう、私は未熟です…)
ビジネスの世

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勇気を持って発信するというアート。【野良猫を尊敬した日(穂村弘著)】

勇気を持って発信するというアート。【野良猫を尊敬した日(穂村弘著)】

人生って、自分のことって、多分死ぬまで言い切ることができない、うーん、あ、わかった、定義することができなく無い?って思います。
もちろんいい日もあれば悪い日もあって、明るい自分でいられる日もあれば、めっちゃ最低の人間になる日もある。
その時の感じ方次第だから、自己紹介とか難しいなって思います。
(てか大人になると自己紹介ってする機会なく無いですか?)
でも昨日より今日、今日より明日って具合に、より

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ただ、自分の幸せに誠実に向かい合える二人でありたい。【まだ温かい鍋を抱いておやすみ(彩瀬まる著)】後編

ただ、自分の幸せに誠実に向かい合える二人でありたい。【まだ温かい鍋を抱いておやすみ(彩瀬まる著)】後編

相手を傷つけてまで、自分の幸せを選択する。
ということが出来る人は、とても勇敢な人で、それをした経験のある人は生きることの喜びを学んだ人だと思います。

さて、前回の続きで、「まだ温かい鍋を抱いておやすみ(彩瀬まる著)」について書いていきます。

幼い子供を事故で亡くしてしまった友人を、悲しみに沈み切った家庭から連れ出し、自分のせいで、と絶望する友人にひたすら美味しい料理を振る舞い続ける、という物

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自分のためのご飯を、私を含む全ての女の子が、奥さんになっても、お母さんになっても、私はこれが好きなの、美味しいのって、毎日食べられるといいな。【まだ温かい鍋を抱いておやすみ(彩瀬まる 著)】前編

自分のためのご飯を、私を含む全ての女の子が、奥さんになっても、お母さんになっても、私はこれが好きなの、美味しいのって、毎日食べられるといいな。【まだ温かい鍋を抱いておやすみ(彩瀬まる 著)】前編

自立するまで、親へ興味を持てなかったこと。
頭がおかしくなりそうな時でも、家族に気をつかって生きていくこと。
大切な人に馬鹿にされたり軽んじられることで自分が無くなって、いつしかその人の一部になっていくこと。
今まで無口で穏やかだった人が、何かをきっかけに溜まりに溜まった想いを吐き出して人が変わったように凶暴になること。

今書いたこと、なんだかすごくドキっとしませんか?
(しなかったらすみません

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毎日、なんでも無い日に、死ぬことなんて忘れてしまってるような日常の中で伝え続けなければ、何度も。【銀河鉄道の夜(宮沢賢治 著】

毎日、なんでも無い日に、死ぬことなんて忘れてしまってるような日常の中で伝え続けなければ、何度も。【銀河鉄道の夜(宮沢賢治 著】

ワタシの死に関する一番強烈な思い出は、4歳の頃から18年ずっと一緒に育ってきた家族同然の犬(チャロという名前だったのでチャロと書きます)が死んだことです。
目に見えて老衰していくチャロを見ながら、チャロがいなくなった世界を、その時までワタシはこの世で一番恐れていました。
チャロがいなくなったらどうやって生きていけばいいんだろう、
チャロがいなくなったら私達家族は壊れちゃうんじゃ無いか、
とか、もう

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自分で自分を認めてあげることこそが、ワタシが欲しかったものなのかもしれない。【しあわせのパン(三島有紀子 著)】

自分で自分を認めてあげることこそが、ワタシが欲しかったものなのかもしれない。【しあわせのパン(三島有紀子 著)】

※本文にはネタバレが含まれています

皆様にとって、人生をかけて欲しいものってなんですか?
ワタシは、一生一緒に生きていきたいと思えるパートナーです。
(以前はとても尊い方がいたのですが、とんでもないことになったので…これも人生…苦笑)
いくら一人が好きでも、自分以外の人間と、関わりを深めてみたい、
その関わりの中で得られる学びを深めていきたい、と願ってしまうのがワタシという生き物なのです。

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知らない人と、知らない場所で、知らないうちに、生きていく【高山なおみ「日々ごはん⑥」】

知らない人と、知らない場所で、知らないうちに、生きていく【高山なおみ「日々ごはん⑥」】

高山なおみさんの日々ごはんが好きです。
高山なおみさんは料理家なのですが、執筆活動も料理と同じくらいされていて、多方面で活躍なさっている方です。
日々ごはんは高山さんの日々の日記なのですが(今現在も続いています。)、その素朴さや飾らなさがたまらなく良いです…。
(大人気なので続編もあるほどめっちゃ長いんですが、もったいなくて一日分ずつ味わうように読んでいます)

今回日々ごはん⑥を読んでいて、あま

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食べるって、幸せで不気味で怖くて楽しい。【ウマし(伊藤比呂美 著)】

食べるって、幸せで不気味で怖くて楽しい。【ウマし(伊藤比呂美 著)】

なんだかすごく独特な本を読んだ。
「ウマし」(伊藤比呂美著)である。

著者である伊藤さんの食体験が描かれた作品なんだが、なんとも独特でめちゃくちゃ面白く、一気に読み込んでしまった。

言ってしまえば、他人の食生活日記みたいなものなのに、すごく興味深い。
(エッセイって本当に奥深いですよね、なんで他人の日記がこんなにおもしろいんだろ)
表現に人柄が表れていて本当に面白い。
その人の世界観がにじみ出

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私に相応しくなかったはずの黒に染まったり、そこに別の色が入ったり【森絵都「カラフル」】

私に相応しくなかったはずの黒に染まったり、そこに別の色が入ったり【森絵都「カラフル」】

※本文はネタバレを含みますのでお気をつけください

私は幼い頃、自分の心変わりが許せなかった。
今日感じた苦しみは明日もずっと続けたかった。
だって明日けろっと元気になってしまったら、昨日の悲しんでいた私がかわいそうじゃん。
ずっとずっと悲しいままでいてあげたかった、私がどれだけ苦しかったかを誰かに分かって欲しかったのかも知れない。
いや、誰にも分かってもらえないことが分かっていたから自分だけは寄

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汚くて、みじめで、見ていられなくて、クソみたい、それが生きるってことなんじゃないでしょうか。(前編)(「おまじない」(西加奈子著)を読んで)

汚くて、みじめで、見ていられなくて、クソみたい、それが生きるってことなんじゃないでしょうか。(前編)(「おまじない」(西加奈子著)を読んで)

世の中には正しいと悪いが存在するじゃないですか。
私今年28になる立派なアラサーなのですが、未だに何が正しくて何が悪いかが分かりません。
(危険なアラサー)
もちろん人を殺したり、動物を虐待したりとか、そういう事が悪い事だというのは分かります。
でも、みっともないとか、だらしないとか、卑怯とかずるいとかクズとか汚いとか痛いとか薄情だとか言われてる人って、本当に悪い人なのかとか、考えれば考えるほど、

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汚くて、みじめで、見ていられなくて、クソみたい、それが生きるってことなんじゃないでしょうか。(後編)(「おまじない」(西加奈子著)を読んで)

汚くて、みじめで、見ていられなくて、クソみたい、それが生きるってことなんじゃないでしょうか。(後編)(「おまじない」(西加奈子著)を読んで)

本文は下記コラムの後編です。
西加奈子さんの「おまじない」の中の短編ストーリーについて勝手にまとめて勝手に語っています。

【ドブロニク】
映画が大好きな主人公は、人付き合いが苦手で、学生時代まで、頭の中にいる空想の友達を心の拠り所にしていましたが、大学になってやっと友達が出来た時、彼らはいつの間にか姿を消してしまいます。
そして、大学卒業から44歳になるまで、ずっと同じ劇団の広報として脇目もふら

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出会いも別れも何かを持ってくる(「パンとスープとネコ日和」を読んで)

出会いも別れも何かを持ってくる(「パンとスープとネコ日和」を読んで)

私はめっぽう人付き合いが苦手です。
(これ読んでくださってる人達の「うん、だろうね」みたいな顔が目に浮かんで死)
人と衝突するのが何よりも怖くて、話し合いとか喧嘩とかそういう事が大の苦手なので、相手に愛想を尽かれること山のごとしです。

でも、人と真摯に向き合う事から逃げてばかりいると、当然の事ながら周りから人は段々といなくなっていき、友達の数とか5本の指で数える必要もなくね?という状態になってし

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