食べさし

汚い食べさしと清らかな心と

食べさし

汚い食べさしと清らかな心と

記事一覧

たとえ話

会社の同期A。 筆記用具でたとえるなら、三色ボールペンに似ている。 どこにいても馴染む。 サシのとき何を話せばいいのか分からない。 高校の同級生B。 かまぼこでたとえ…

食べさし
1日前
2

歌集

歌集の目次はたのしい。 『やがて秋茄子へと至る』/ 堂園昌彦 ・感情譚 ・彼女の記憶の中での最良のポップソング ・すべての信号を花束と間違える ・音楽には絶賛しかない…

食べさし
1日前

どうしよう

まだたまに死にたくなる。どうしよう。 10代の折り返し地点から、自意識が暴走機関車のようにふくらんで、毎日毎日、必死に、自分のスペックじゃ間に合わない、かといって…

食べさし
7日前
1

ゆれる

電車は少しずつその中身を入れ替えながら進む。 この骨と血。 僕の記憶を構成する神経組織は3ヶ月かけてオーバーホールされる。 電車は少しずつその中身を入れ替えながら…

食べさし
13日前

喪失しよう そうしよう

失恋でポエマーになってしまう人ほど、短期間でけろっとしてしまうことが多い。 修飾に修飾を重ねたあの泣き言はなんだったのか。 ああいう連中のたいていは女だ(偏見(ご…

食べさし
2週間前
4

【MBTI】INTPの思考

僕は知人から論理的な人物だと評されることが多いが、合理的な人間では決してない。 論理的と合理的、このふたつは似通っているようにみえてまったく異なる属性だ(と僕は…

食べさし
1か月前
4

映画みてすぐ「泣いた」とかいうやつ

映画の感想を訊くとすぐ「泣いた」とか言うやつがでてくるが、ああいうやつはだいたいなぜかドヤ顔である。 「〇〇めっちゃ良かった〜わたし泣いた」 「おもろかったっすよ…

食べさし
4か月前
3

阿呆みたいな仕事

この1ヶ月はべらぼうに忙しかった。自分は今アルバイトを週6日で入っている。歓楽街の焼肉屋だ。しかも食べ放題。当たり前だが、食べ放題ともなれば食べる方だって忙…

食べさし
4か月前
3

愛と成功

10代が終わり、他人への関心がゆっくりと薄れてきた。それに応じて自分から他人に期待する関心の割合も減ったようでこの頃はなんとなく生きやすく感じる。思春期自意識フィ…

食べさし
5か月前

「好き」という神話

まだ自然科学のなかった時代、世界の成り立ちについて語る唯一の手段が神話だったわけだけれども、世界各国のあらゆる神話・宗教が「世界はどのようにして生まれたか」とい…

食べさし
6か月前

外灯に照らされた夜の町

朝陽は辺りを満遍なく照らしてしまう。それに比べて夜の外灯。スポットライトのような。それでいて映すのはあてどなく歩く哀しい人ばかり。丸まった背中のアーチに影が射…

食べさし
6か月前
5

ドライな文体

中島らもやチャールズ・ブコウスキーといったドライな文章を書く作家が好きだ。ドライと言っても彼らは感傷的で耽美な文を書いたりする。郷愁に思いを馳せたりする。「青を…

食べさし
6か月前
12

ロミオとジュリエットとぼく

あれは中学2年生のとき。 ひとつ前の席の女の子のLINEプロフィールが「恋って言うから」と書かれたポエムに変わり、後ろの席の男子のプロフィールが「愛に来た」に変わった…

食べさし
6か月前
3

冬に咲く花

12月。木々が光りだす。 しかし、街路樹に蛍光を巻き付ける作業員の姿を見た者はどこにもいない。 それもそのはず、植物は自ら発光しているのだ。 学名ヘデラ・ランテルナ…

食べさし
6か月前
4

もののよう

空気の淡いひとになりたい 風のような光のような 存在感の水色のひと 炎のようにすり抜けたい ひとのこころに火をつけて 書物、哲学、燃やしてしまう 波のような心でいた…

食べさし
6か月前
1

合掌

飛び降りるときって、落ちてるって思うのかな 空が上がってるって思うのかな​────── そう云った齋藤は死んだ。19だった。合掌。 青酸カリってどんな味だろうね 美…

食べさし
7か月前
1
たとえ話

たとえ話

会社の同期A。
筆記用具でたとえるなら、三色ボールペンに似ている。
どこにいても馴染む。
サシのとき何を話せばいいのか分からない。

高校の同級生B。
かまぼこでたとえるなら、カニカマだ。
品はいいが親しみやすい。いい意味で高級感がない。

おかん。
おとんでたとえるなら、ちびまる子ちゃんのヒロシ。
いつもお酒を呑んでいる。

電柱。
料理でたとえるなら味噌汁。
暮らしを支える。

ボールペン。

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歌集

歌集

歌集の目次はたのしい。

『やがて秋茄子へと至る』/ 堂園昌彦
・感情譚
・彼女の記憶の中での最良のポップソング
・すべての信号を花束と間違える
・音楽には絶賛しかない
・愛しい人たちよ、それぞれの町に集まり、本を交換しながら暮らしてください

『ピクニック』/ 宇都宮敦
・ウィークエンズ
・東京がどんな街かいつかだれかに訊かれることがあったら、夏になると毎週末かならずどこかの水辺で花火大会のある

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どうしよう

どうしよう

まだたまに死にたくなる。どうしよう。

10代の折り返し地点から、自意識が暴走機関車のようにふくらんで、毎日毎日、必死に、自分のスペックじゃ間に合わない、かといって生産的でもない難問にしがみつき泥水をすすっていた。

人間は生き抜くために思想をこさえなくてはいけない。虚無は思想ではない。坂口安吾がそう書いている評論をみた。感銘を受けた。殴られた、という方があの感覚を表現するには適切かもしれない。

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ゆれる

電車は少しずつその中身を入れ替えながら進む。
この骨と血。
僕の記憶を構成する神経組織は3ヶ月かけてオーバーホールされる。

電車は少しずつその中身を入れ替えながら進む。
スーツ。洋服。ロリータ。ボロ衣。若い男。老いた女。
選ばなかったすべての路線はたしかに有り得た未来を示している。
僕が座っていたかもしれない座席。掴まっていたかもしれない吊革。降りていたかもしれない駅。
地位。名誉。夢。

電車

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喪失しよう そうしよう

喪失しよう そうしよう

失恋でポエマーになってしまう人ほど、短期間でけろっとしてしまうことが多い。
修飾に修飾を重ねたあの泣き言はなんだったのか。

ああいう連中のたいていは女だ(偏見(ごめん(土下座)))。明日の天気は晴れなのだけど、小学生のときに「ぼくのなつやすみ2」をやりすぎたせいで、ザリガニ釣りを実際にやった経験があるのかどうか記憶が曖昧で困る。Howdy World。文章というのは賭けの連続だ、とブコウスキーが

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【MBTI】INTPの思考

【MBTI】INTPの思考

僕は知人から論理的な人物だと評されることが多いが、合理的な人間では決してない。

論理的と合理的、このふたつは似通っているようにみえてまったく異なる属性だ(と僕は考えている)。

ここでは個人的なイメージについて述べる。
論理力というのは、アルゴリズムを正しく遂行する能力だ。演算子を正しく用いれば、ただひとつの解に辿り着く。1+1は2であって、それ以外ではない。「+」の意味を誤解しないかぎり。

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映画みてすぐ「泣いた」とかいうやつ

映画みてすぐ「泣いた」とかいうやつ

映画の感想を訊くとすぐ「泣いた」とか言うやつがでてくるが、ああいうやつはだいたいなぜかドヤ顔である。
「〇〇めっちゃ良かった〜わたし泣いた」
「おもろかったっすよ。おれ、泣いたすもん」
信用できない。なにかを褒めるとき簡単に「泣いた」と言ってしまう人を信じられない。
長年抱いていたこの違和感を言語化してみる。

1.
まず第一に、「泣いた」とか言われても、それはお前の涙腺次第やろ、という問題がある

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阿呆みたいな仕事

阿呆みたいな仕事

この1ヶ月はべらぼうに忙しかった。自分は今アルバイトを週6日で入っている。歓楽街の焼肉屋だ。しかも食べ放題。当たり前だが、食べ放題ともなれば食べる方だって忙しい。つくる方ならもちろんなおさら。阿呆みたいな仕事だ。特に今はバイトリーダーがくそみたいな男でみんなシフトに入りたがらない。欠員が出てより忙しくなる。だからいっそう働く気力が失せる。負の循環。

それでも遊ぶ金欲しさにバイトを入れ

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愛と成功

愛と成功

10代が終わり、他人への関心がゆっくりと薄れてきた。それに応じて自分から他人に期待する関心の割合も減ったようでこの頃はなんとなく生きやすく感じる。思春期自意識フィーバータイムは終わりを告げた。

他人の内面なんか知ったってどうしようもないし、他人から理解される必要も無い。そう思い始めてからは無為に自分を大きく見せることもなくなった。もともとマウントを取るタイプではないと思うが、軽く見られたくないと

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「好き」という神話

「好き」という神話

まだ自然科学のなかった時代、世界の成り立ちについて語る唯一の手段が神話だったわけだけれども、世界各国のあらゆる神話・宗教が「世界はどのようにして生まれたか」という問いに対して出した答えは3つに大別されると丸山眞男は述べている。

神が宇宙を創造した

神が出産することで宇宙が生まれた

宇宙は植物のように生成した

1は言わずもがな一神教による説明であり、旧約聖書の創世記はまさにこういった説明を

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外灯に照らされた夜の町

外灯に照らされた夜の町

朝陽は辺りを満遍なく照らしてしまう。それに比べて夜の外灯。スポットライトのような。それでいて映すのはあてどなく歩く哀しい人ばかり。丸まった背中のアーチに影が射す。彼には名前がない。戸籍があってもそれを知る人がいないから。

たとえば晴れ渡る日の朝、路上に鏡を置くと青空を見下ろすことができる。片手に収まる空が足下に。そしたら次に鏡をひろって歩きだそう。きみは青空をポケットにしまうことができる

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ドライな文体

ドライな文体

中島らもやチャールズ・ブコウスキーといったドライな文章を書く作家が好きだ。ドライと言っても彼らは感傷的で耽美な文を書いたりする。郷愁に思いを馳せたりする。「青を売る店」、「美しい手」、「町でいちばんの美女」。

ではなぜ彼らにドライな印象があるかと言えば、たぶん自分を突き放しているから。この、「突き放す」という按配がむずかしくて突き放すつもりで自分を下に置きすぎると卑下になる。

卑屈さには湿気が

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ロミオとジュリエットとぼく

ロミオとジュリエットとぼく

あれは中学2年生のとき。
ひとつ前の席の女の子のLINEプロフィールが「恋って言うから」と書かれたポエムに変わり、後ろの席の男子のプロフィールが「愛に来た」に変わった。
僕たち3人は窓際の最後列の席だった。授業中、2人はよくカーテンの中に入って見つめ合った。

心理学には「ロミオとジュリエット効果」と呼ばれる現象があって、これは恋仲のあいだに障害があるほうが恋愛のボルテージが上がるというものらしい

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冬に咲く花

冬に咲く花

12月。木々が光りだす。
しかし、街路樹に蛍光を巻き付ける作業員の姿を見た者はどこにもいない。
それもそのはず、植物は自ら発光しているのだ。
学名ヘデラ・ランテルナと呼ばれるその蔦は
冬になると自生し、辺り一面にランプの光を咲かせる。
あまり知られていないが、光の正体は胞子である。
だから正確に言うと、この蔦は植物ではない。
ヘデラ・ランテルナは菌類であり、
茸の仲間と言えば分かりやすいだろう。

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もののよう

もののよう

空気の淡いひとになりたい
風のような光のような
存在感の水色のひと

炎のようにすり抜けたい
ひとのこころに火をつけて
書物、哲学、燃やしてしまう

波のような心でいたい
満ち足りつつもどこか孤独で
流れるように流されていく

草木のようにそっと死にたい
花弁のようにまぶたを閉じて
土になるまで眠りつづける

合掌

合掌

飛び降りるときって、落ちてるって思うのかな
空が上がってるって思うのかな​──────
そう云った齋藤は死んだ。19だった。合掌。

青酸カリってどんな味だろうね
美味しい毒物が知りたい​───────
そう云った小林は死んだ。料理が趣味だった。合掌。

ねえねえ、宝くじが当たったらきみはどうする?​────
そう云ったケンちゃんは死んだ。雷に打たれて。
確率を愛し、確率に呪われた漢だった。合掌。

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