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阿呆みたいな仕事
この1ヶ月はべらぼうに忙しかった。自分は今アルバイトを週6日で入っている。歓楽街の焼肉屋だ。しかも食べ放題。当たり前だが、食べ放題ともなれば食べる方だって忙しい。つくる方ならもちろんなおさら。阿呆みたいな仕事だ。特に今はバイトリーダーがくそみたいな男でみんなシフトに入りたがらない。欠員が出てより忙しくなる。だからいっそう働く気力が失せる。負の循環。
それでも遊ぶ金欲しさにバイトを入れる連中がいる。自分を含めてそういうのは決まったメンバーだ。毎回のように顔を合わせ、決まって同じ話をした。おれたちはなんでこんなことをしているんだろう……。どう考えても割に合わない……。
僕たちは考えることを放棄していた。なにか考えないと、そう思うことさえ苦痛だった。わたしの友達時給1700円のバイトしてるんですよ、会員制の天ぷら屋で。先月のバイトわたしの方が10時間多く入ってたのに7万も向こうの方が多くもらってて……。
僕たちは現状に愚痴を吐きながら、同時に、その事実にたいしてどこか現実味を感じていなかった。目をすませばもっとうまい話があるはずなんだ……。そう言い合いながら結局は空想ごとで済ませてしまうだろうことをお互いが分かっていた。そしてだれもそれを言い出せない。繁忙と閉塞感、熱い鍋蓋、ぶつかる皿の音……己に不満を感じさせるものだけがリアリティをもっているという倒錯に気づかないふりをした。
馬鹿みたいに忙しかった三連休の初日が終わった。
あした入ってますか?おれ、明日も入ってるよ。わたしも。〇〇は?おれも入ってるっすよ。で、明日も予約ヤバイです。もう、無理かもな。しかもバースデー2件も入ってる……。今日より忙しいやろうなあ……。
誕生日のサービスがあるとその分業務も増える。しかもそれは、忙しい中で祝福をしなければならないという苦の二重性を持っていた。
だれかの誕生日がひとを不幸にすることってあるんやな。僕がそう言うと、3秒間沈黙が流れて 3.2.1… みんな笑った。乾いたクラッカーみたいな笑い方だった。夜のネオンに照らされながら、ゆたゆた帰った。まさに泥のような一日。人生のなかの一日。得たものはなにもない。
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