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心の問題

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自分のものでありながら、もっとも扱いにくく、思い通りにならない心について対策します。
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記事一覧

安楽死と現代人の「いかんともしがたい」長い時間について

安楽死と現代人の「いかんともしがたい」長い時間について

──就職氷河期世代は緩慢な安楽死とも言えそうなやり方で放置されたが、彼らをベッドに横たえて薬剤を点滴して死んでもらうことが最善だったと誰が言えるだろうか。言えるはずがない。

加藤文宏

死んでもらいたい人のための安楽死 カナダは2016年に安楽死を合法化した。そして合法化から5年後の2021年、終末期の人に限定していた安楽死を非終末期の人にまで対象を拡げた。このとき不治の重病や障害が進行して取り

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論破と嘲笑のあとに何が残されたのか──陰謀論者対応の実態

論破と嘲笑のあとに何が残されたのか──陰謀論者対応の実態

記事執筆中に能登半島地震が発生しました。人工地震などの陰謀論が、あの人たちによって盛大に語られました。このできごとと重ね合わせて読んでもらえたら幸いです。

はじめに 深みにはまった陰謀論者の家庭は、まるで荒れはてた花壇みたいだった。そこここに残る平穏だった日々の痕跡が、荒廃した家族関係との間に残酷なコントラストを描いている。

 陰謀論者と家族に聞き取りを行い、ネットメディアや論壇誌に記事を寄稿

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【短信】犬の介護から高齢者の貧困率と世代間対立へ

【短信】犬の介護から高齢者の貧困率と世代間対立へ


はじめに 時事的で政治的な話題が続いたので、今回は視点を変えてみようと思います。大袈裟に言えば人生、控えめに言えば生活から「老い」を考えます。とはいえ、現代の老いは政治と無縁ではなく、とうぜん時事的な生ぐさい話題になってしまうのですが。

犬の介護からみえるもの 16年前、私の髪は黒く、愛犬は生後半年のやんちゃ娘だった。
 いま、私の髪は灰色になり、彼女は専用の車椅子に乗っているものの歩行もまま

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鼻血デマから考える情報災害を拡大した報道災害/首都圏からの自主避難者研究

鼻血デマから考える情報災害を拡大した報道災害/首都圏からの自主避難者研究

いまだにALPS処理水を汚染水と呼ぶなど、虚像をもとにした情報操作が行われているため風評被害が長期化しています。マスメディアや活動家が生み出した虚像は風評加害そのものです。目に見えない放射線の、存在しない被害を、虚像で可視化したはじまりは「鼻血」報道でした。この問題はマスメディアが社会的にも、政治的にも異論の者を沈黙させ、一地域を抑圧できる権力であることと、報道やコンテンツが暴力そのものであること

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不安や恐怖を共感しあう。いつまでも安心を得られない。だから怒りと悪意をぶつける。

不安や恐怖を共感しあう。いつまでも安心を得られない。だから怒りと悪意をぶつける。

不安を解消するのではなく、不安に依存する人たちがいます。あたりまえですが、いつまでも安心を得られません。これは明日の私たちの姿かもしれません。あるいは、私たちは解消されない不安から生じたストレスの吐口にされるかもしれません。

構成・タイトル写真
加藤文

特殊なようで普遍的 福島県への風評加害についての研究会に出席することになり、過去に私が関わった首都圏から自主避難した母子や女性にまつわるできご

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宗教二世を救うには家族への国家の介入が不可欠になる【短信】

宗教二世を救うには家族への国家の介入が不可欠になる【短信】

現在どうにもならないのなら、あらたに制度や法をつくらなくてはいけない。家族の問題を解決する制度や法をつくるのだから、家族はどうあるべきか考え、こうあるべきと定めることになる。

構成・タイトル写真
加藤文
(写真はタイトルおよび本文とは無関係なイメージ写真です)

宗教二世たちと対話してわかったこと 旧統一教会/世界平和統一家庭連合をめぐるさまざまな問題追及の発端に宗教二世が抱えるとされる苦しみへ

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神真都Q 倉岡被告公判開始と袋井市新本部で深まる家族問題

神真都Q 倉岡被告公判開始と袋井市新本部で深まる家族問題

構成・タイトル写真
加藤文

憂慮されるふたつのできごと 神真都Q構成員本人と家族の問題について取材と報告を続けてきたが、いま構成員家族問題は大きな曲がり角に立っている。そして9月6日、新型コロナウイルスのワクチン接種会場に侵入し業務を妨害したとされる倉岡宏行被告ら5人の初公判が東京地裁ではじまり、全員が起訴内容となっている犯罪事実を認めた。

 このふたつのできごとは無関係か、裁判の成り行き次第

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オウム真理教を信じた私は いま統一教会報道に疲れはてている

オウム真理教を信じた私は いま統一教会報道に疲れはてている

──「自民党は悪い。野党にはひいきしていない。こう言うとコロっと騙される人ばかりだったじゃないですか。いままでカルト宗教の話は、被害者がいるからカルトだって言い続けてきたんです。そう言っていた人が、当事者の話をしないで政治の話ばかりしている。アイドルの子を見殺しにしてる」
彼女は嘘と雑音で疲れはててしまったと言う。目次と「序」で内容を確認のうえ記事をご購入ください。

・2023.2.5 『マスメ

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二世問題はどこへ消えたのか 【短信 統一教会問題】

二世問題はどこへ消えたのか 【短信 統一教会問題】

構成・タイトル写真
加藤文

暗殺事件から宗教二世問題へ 当初、安倍晋三氏暗殺事件は元自衛官が起こした事件であると報道された。奈良県警からの取り調べ情報のリークは続き、犯人は元統一教会・現世界平和統一家庭連合信者の母親を持つ宗教二世であるとされた。(以後、教団名を統一教会と表記する)

 夫の死、小児がんを患った長男の失明と不幸が続いた容疑者の母親は統一教会の信者になり、財産を教団に注ぎ込み続け破

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ワクチン忌避者・陰謀論者 彼らが戻れなくなった理由とリセットへの道筋

ワクチン忌避者・陰謀論者 彼らが戻れなくなった理由とリセットへの道筋

ワクチン忌避者や陰謀論者との関係に平穏を取り戻したい。これから紹介するメソッドでコロナ禍以前の状態までリセットされた人や、ひとまず平穏さを取り戻した家庭があります。

調査・構成・図版/写真
加藤文
協力
ハラオカヒサ

序/2年間50人の動向 2020年の半ばから現在まで、コロナ禍に登場したマスク拒否者、ワクチン忌避者、陰謀論者のほか彼らの周辺を取材してきた。消息が途絶えた者も多いが、長い例では

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共助とはなにか幻想すら思い描けないまま 現代人はカルトの誘惑に飲み込まれて行く

共助とはなにか幻想すら思い描けないまま 現代人はカルトの誘惑に飲み込まれて行く

『男はつらいよ』の寅さんには、何はともあれ迎え入れてくれる葛飾柴又というファンタジー世界がある。だが私たちは世知辛さからの緩衝装置として働いていた幻想上の共同体すら捨てさってしまった。

加藤文 (Kヒロ)

素っ裸で世間に放り出されている我々 安倍晋三氏暗殺事件で逮捕された山上徹也容疑者が旧統一教会・世界平和統一家庭連合信者の二世だったことで、彼の生い立ちが同情を集めている。いっぽう容疑者の母親

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参政党は彼らにとって次の10年間の居場所になる──短信

参政党は彼らにとって次の10年間の居場所になる──短信

参政党を知るには支持者の言葉に耳を傾ける必要がある。彼らは彼らなりの真剣な理由で同党を支持している。彼らは損ばかりさせられてきた人々であり、左派やリベラルが目を向け手を差し伸べるべき人々だったのだ。
(文末に追記/2022.7.11/2022.7.7)

●最新

加藤文宏(Kヒロ)

損ばかりさせられてきた恨み 5月初旬に参政党の正体について記事を書いてから、参政党支持者と周辺から話を聞く機会を

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ママ友から陰謀論を介して浸透するニセ医療──ニセ医療問題2

ママ友から陰謀論を介して浸透するニセ医療──ニセ医療問題2

ニセ医療をめぐる言論は、ニセ医療とされる行為とこれを行う医師や施術者を語ることに費やされてきた。そこにはニセ医療に騙されないための啓発もあったが、騙される人々の5W1H(誰が、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのように)が注目されることは少なかった。今回は、ニセ医療がママ友を介して深く浸透している問題を、騙される人の側から考えることにする。

■前回の記事

脱ステロイドはインスタグラムから

「キラ

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あの人ががんを放置する理由とあの医師が放置を勧める理由──ニセ医療問題1

あの人ががんを放置する理由とあの医師が放置を勧める理由──ニセ医療問題1

がんを放置したままでいたほうが積極的に治療するより生活の質や生存率が高いと主張する医師がいる。だが私たちはがん放置療法を採用して後悔の言葉とともに亡くなった人が少なくないのを知っている。妹を亡くした小林麻耶さんが「麻央は標準治療を受けたがっていた」と語ったのも聞いた。それでもがんを放置したいと願う人があとを絶たず、放置を推奨して患者にエビデンスのない治療と称した行為を続ける医師も相変わらずである。

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