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神真都Q 倉岡被告公判開始と袋井市新本部で深まる家族問題

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加藤文

憂慮されるふたつのできごと

 神真都Q構成員本人と家族の問題について取材と報告を続けてきたが、いま構成員家族問題は大きな曲がり角に立っている。そして9月6日、新型コロナウイルスのワクチン接種会場に侵入し業務を妨害したとされる倉岡宏行被告ら5人の初公判が東京地裁ではじまり、全員が起訴内容となっている犯罪事実を認めた。

 このふたつのできごとは無関係か、裁判の成り行き次第で構成員たちの洗脳を解くきっかけになるとみる向きもあるだろう。だが現実はちがうようだ。

 憂慮される事態を招きかねないふたつのできごとの関係について、掲載直後に削除した記事をめぐるやっかいな事情から説明したいと思う。


記事を削除した理由

 反ワクチンカルト集団神真都Qは、本年の初夏にクリニックへの押しかけ行為とワクチン接種の妨害で逮捕者を出し、公安によって監視対象にされていたことが公然となって人々を驚かせた。だが逮捕が相次いで活動が封じられると報道される機会が撃滅し、いまや話題にのぼることさえなくなっている。

 その後、神真都Qはどうなったのか。主催者のいちべいこと倉岡宏行容疑者が逮捕され勾留されたままになっているため、ナンバー2の村井大介が代表代行を務めているが、杜撰な資金管理をめぐって実務を担ってきた関東圏の有力会員と対立、村井新体制に反発する構成員が次々と脱会した。

 幹部への不信感をもとに神真都Qが崩壊の一途をたどっているのはまちがいないが、反新体制派の脱会が終わると村井のもとに残った構成員はむしろ団結力を高めたように見える。また集金と組織維持のみが目的であるかのような村井のもと、神真都Qはさらに一貫性の乏しい奇妙なカルト集団に変貌している。

 これが神真都Qの現状だが、構成員と家族をめぐるさまざまなトラブルは解決されていないどころか新たな問題が発生しはじめた。

 上記は『神真都Qと家庭崩壊』と題した削除済み記事の書き出しだ。

 構成員と家族をめぐるさまざまなトラブルと新たな問題について速報した記事を削除したのは、情報源となった家族と表現を詰められず、家族だけでなく構成員本人に悪影響が出ることが懸念されたからだ。修正で済ませなかったのは、神真都Q構成員と家族の関係は扱いに細心の注意を要する状態になっているケースが多いからである。

 では新たな問題とは何かを次の章で説明する。


接種会場襲撃から家族の問題へ

 冒頭に引用したように神真都Qは分裂から崩壊がはじまり、現体制は組織の生き残りまたは幹部の生き残りをかけて、さらに一貫性の乏しい奇妙なカルト集団への変貌が続いている。同時に、反新体制派の脱会が終わって構成員が純化され、さらに集団の弱体化によって頑なさと世間への反発心を強めた。

 神真都Qの母体となったいちべいのYouTubeチャンネルを囲むファンの集いが、陰謀論色を加速させた2021年の秋から1年が経過しようとしている。2022年初頭の神真都Q発足からなら9ヶ月が経過した。1万3千人いたとされる構成員のほとんどが2022年初頭に会員登録をしているため、構成員の家族は洗脳状態にある身内に長期間悩まされ続けてきたことになる。

 さらに構成員の反発心が強くなって、いま家庭内の雰囲気は悪化するいっぽうになっている。

 これまでの構成員家庭への取材で離婚2件、別居5件を確認している。構成員が家を出ていくことで家族が救われるとは言い難く、心に大きな傷を残したり、生活の再構築に悩む人がいる。また家を出て行った構成員も行動のタガとなっていた家庭をなくし、喪失感もあって頑なさと過激さに拍車がかかる。

 構成員たちも追い詰められているのだ。

 こうしたなか神真都Qが、構成員の避難を支援していると7月初旬から証言する関係者がいた。


倉岡宏行(イチベイ)裁判と神真都Qの行く末

 7月、既に逮捕されている構成員が袋井新本部に匿われていたという情報が届いた。また過激な活動をしてきた構成員が夫婦で住み込むなど、新本部が生活支援施設として位置付けられたのはまちがいないようだ。このほか7月から、家庭不和による別居後の仮住まいや移住先として勧められただけでなく資金提供を提案されているとする証言があった。

 新本部は民家なので他県ナンバー車の出入りは確認できても誰がどのように暮らしているか逐一特定するのは難しい。また神真都Qの方針について公式の見解が発表されているわけではない。だが、神真都Qに避難隔離生活や共同生活のオプションが加わったと見てよいように思われる。

 構成員の避難隔離生活や共同生活が広がるなら、神真都Qが新たな段階に進むのはまちがいない。家族から切り離された構成員に歯止めをかける者はなくなり、現実からますます遠ざかって陰謀論の世界に閉じこもるのは必至だ。

 そして、このタイミングで勾留されていた倉岡宏行(イチベイ)容疑者の裁判がはじまった。陰謀論を捨てて反省しているとされる倉岡容疑者は、法廷で神真都Qを否定すると思われる。構成員がいちべいを信じているか、ナンバー2の村井を信じているか問わず、神真都Qを根幹から否定する証言は構成員に衝撃を与えないわけがない。

 現段階でもいちべいをDS(ディープステート/闇の政府)の回し者のように言う者や、DSに洗脳されていると言う者がいることからも、いちべいが反省したからといって脱会が進むとは思えない。むしろ新たな陰謀論の枝葉を生み崩壊寸前の神真都Qのカルト化が進むのではないだろうか。

 神真都Qが進めていた移住共同生活計画「エデン」は頓挫したが、エデン計画があったゆえに共同生活へのハードルは低いようだ。現在、家族間に大きな問題を抱えている構成員と家族たちを取材しているので、機会をみて詳細を報告しようと思う。



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