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税の使い方と日本の政治:大人も読みたい!中学生からの租税教育⑨

 今回は、シリーズ『大人も読みたい!中学生からの租税教育』第9弾。”税の使い方と日本の政治”について見ていきます。ん?・・・表紙カバーは”日本の国会議事堂”ではなく”アメリカの自由の女神”?
 2018年に自由の女神が閉鎖されたことを、覚えておられる方もいらっしゃるのでは。合衆国政府の予算をめぐって、民主党と共和党が折り合わず、政府機関の一部が業務停止になった背景があります。日本でも同様、与野党が対立して予算が成立せず、税が使えなくリスクもあるんですね。今回はこの分野を見ていきましょう。

 今まで、シリーズ『大人も読みたい!中学生からの租税教育』は”税はどうやって集めるの?”という視点で見てきました。しかしこれだけでは片手落ち。”税の使い方”も租税教育には大切です。よって今回は”税の使い方はどうやって決めるの?”という視点で見ていこう、ということです。
 日本の財政について、小学校の教室でお伝えする『租税教室④:子供たちに日本財政をどう伝える?』にて実況中継の形式で解説していますので、もし確認されたい方は、こちらも覗いて見てください。今回の記事は更に踏み込んだ内容で説明していきます。

 集められた税はどう使われるの?・・・主に3割以上が『社会保障』に使われます。他にも、教育・公共事業・防衛等にも使われています。

社会保障を始め、教育・公共事業・防衛等に税金は、使われています。

 特に『社会保障』にある”命と健康を守る”。この考えは日本国憲法の考えをもとに進められています。憲法が税のルールの”おおもと”になります。

憲法が税のルールの”おおもと”になります。

 では税の使い方はどう決めていくのか?まず用語の説明に入ります。税の使い方のことを予算と言います。税は国で使われるものと、皆さんの住まれる自治体で使われるものがありますが、ここでは国の予算を見ていきましょう。

税の使い方を予算と言います。

 日本の国の予算は1年ごとに決められます。会計期間は4月から翌年3月で、7月ごろから次年度にはどれくらい税が必要か、それぞれの省庁が必要な金額を計算します。これを概算要求と言います。それを財務省が各省庁と調整し、まとめたうえで内閣に提出します。この財務省原案のもとに、12月に内閣が予算案を作成します。

7月ごろの概算要求から始まり、12月までに内閣が予算案を作成します。

 予算案は、1月から開かれる通常国会で議論され、国民が望む使い方になっているかどうか、国会の議論を通してチェックされます。ところが与党と野党が対立して、予算がなかなか決まらないことがあります。3月末までに予算が成立しないと、税が使えなくなります
 国は違えど、冒頭で述べた2018年に自由の女神が閉鎖されたことと同じようなことが起きるんですね。そういう場合には、仮の予算を決めて、支出していきます。この仮の予算を暫定予算と言います。

3月末までに予算が成立しないと税が使えなくなるので、暫定予算で対応。

 では、税の使い方である予算はどのようにチェックされるのでしょうか?日本の政治は、内閣と国会が大きな役割を担っています。内閣は行政機関です。つまり、どういう政治を行っていくのかを決めるのが内閣の仕事です。税をどう使うかという予算案を考えるのも内閣です。国会では、内閣が作ったこの予算案をもとに審議が行われます。予算だけではなく、法律や外国との条約の承認なども全て、最終的には国会で決めなければいけません。
 国会には多くの議員がいます。衆議院の定数は465人参議院の定数は248人と、こんなに多くの議員が一堂に会して話し合うと、時間が掛かってしまいます。そこで、本会議と別に委員会をつくり、まず少数の議員で話し合います。予算のことを議論する予算委員会で、各政党から選ばれた委員が出席し、予算について疑問点や問題点を質問したり、正したりしていきます。特に予算委員会は、特別に大事な位置づけがされ、他の委員会と比べて議員の人数も多く、関連する大臣の出席なども義務付けられ、委員会で大臣や閣僚が答えていくことで、議論を深めていくのです。
 他にも税の見張り番として、会計検査院があります。会計検査院とは、国家が集めた税を無駄なく効率よく適切に使われているかを調べ、問題点があれば改善や是正を促す国の機関です。しかも、国会や内閣、裁判所から独立しており、政府からも指図を受けない機関で、憲法で定められているんですね。

内閣が作った予算案を、国会の予算委員会で議論を深めていきます。

 これで今回の内容は全て終わりで、次回は第10回目になります。⑩とキリ番なので、今まで①~⑨の総集編にしたいと思います。テーマは”10分で読める『総集編』”。

次回⑩は今まで①~⑨の”総集編”を予定。しかも10分で読み切れるように。

 今まで①~⑨を、前編・中編・後編と3つに分けて、10分で読めるように再編集します。

今まで①~⑨を前編・中編・後編と3つに区分します。

 また、シリーズ『大人も読みたい!中学生からの租税教育』をマガジンにまとめました。バックナンバーについては、こちらで覗いて頂けると嬉しいです。

 最後に、次回の総集編⑩以降の予定についても触れておきます。2022年5月8日に①からスタートした、シリーズ『大人も読みたい!中学生からの租税教育』。今までずっと温め続けたアイデアを、今回で全て吐き出した形になります。他方で残課題である、日本国内の各税法の諸課題と国際社会と税の2つについて、記事化出来るタイミングになりましたらnoteにアップ出来ればと考えています。不定期な更新となる点、ご了承ください。
 今までシリーズ『大人も読みたい!中学生からの租税教育』を読んで頂き、ありがとうございました。

今後は不定期な更新となりますが、2つの方向性を予定しています。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>


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