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たおやか日記

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恋人との健やかな日々を紡いでいきます。 SNSをやっていない人なので、記念日にまとめてお披露目しています。 「彼氏・彼女」ではなく「恋人」という言葉にこだわっていると話したら…
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#エッセイ

生存確認程度のことでも尚

生存確認程度のことでも尚

ただの学校終わり。
家の目の前に救急車が止まっていた。

向かいのお婆ちゃんは元気に水やりしていたから、きっと私のアパートの誰かだ。

一人暮らしの人ばっかりだろうから、相当大変だろうに。

会ったこともない人に余計な心配をしている時、
ふと嫌な妄想をしてしまった。

もし、私が倒れても、恋人は助けに来ないだろう。

そして、それは逆も然り。

私達は、互いに連絡不精で、ラインが3日空くことだって

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これさえあれば

これさえあれば

今、私たちに一番の試練が押し寄せている。

何度も無理だと押しつぶされそうになるけれど、
そのたびに優しく光る薬指がそっと力をくれる。

大丈夫。うちらなら、絶対やれるよって。

❄︎ ❄︎ ❄︎

ファッションショーまで、残り2週間。

人類学のエッセンスを、最大限ファッションに
落とし込んだブランドをお披露目する。

誰もが、着るだけで他者の存在を意識できる服があれば、この世界はもっと温かくな

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言葉の奥行き

言葉の奥行き

「このエッセイ、ゆきっぽくて非常に良いね」

去年と同じ場所、同じ時間、同じ服装の君に、
1年間かけて綴ったラブレターを本にして渡した。

時間をかけて、丁寧に読み進める君の横顔が、
この世界の何よりも美しいと思う。

初デートに感じた忘れられない胸の高鳴り、
中々会えずに淋しくなってしまったあの夜、
離れていてもそばにいると実感した日のこと。

木漏れ日の中で、共に振り返る思い出達は、
1人で綴

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踊り場

踊り場

結婚に大きな願望を抱いたことは無かった。

好きな人と末永く一緒にいられたら、それだけでもう十分じゃないか。

けれど、周りの子達は、最近急に具体的な話をするようになって。

今の彼氏と2年後に結婚する約束をしているとか、
もうすぐ同棲を始める予定だとか。

ついこの間まで制服を着ていた女の子たちが、次々に結婚へ向かっているという現実に、すごく焦りを感じてしまう。

そこまで興味もなかったはずの”

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君が初恋じゃなくて死ぬほど良かった

君が初恋じゃなくて死ぬほど良かった

もっと昔の君と出会えていたら…

お揃いの制服で2人乗りする高校生を見て、ふいにパラレルワールドの私達へ思いを馳せる。

バド部の君と、吹部の私。

朝は一緒に登校して、廊下で手を振って、帰りは公園でお喋りした後、家まで送ってくれる。

みたいな。

君は優しいから、演奏会は毎回必ず顔を出してくれるはず。

「泣いてないもん」
なんて言いながら、きっとボロボロ泣いて定期演奏会の感想を教えてくれるん

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不確定な未来の内側で

不確定な未来の内側で

その微笑ましい君の横顔を見るたびに、あぁ、
いつかちゃんと言わないとって思ってしまう。

悪いことをした訳じゃないのに、騙しているみたいでモヤモヤする。

最寄りのバス停の前には、小さな保育園がある。

バスが来るまでの間、ガラス越しに見える小さな生き物達を眺めては、勝手にアフレコをするのが私達の日課だ。

上手に靴が履けなくて泣いている子や、それを
手伝ってあげる優しい子。

そして、彼らを愛お

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かみさま、もうそれくらいにしてあげてください

かみさま、もうそれくらいにしてあげてください

かみさま、お願い。
これ以上彼をいじめないであげてください。

だって、十分じゃないか。

夜勤も、連勤シフトも、ダブルワークも。
こんなに頑張っているのに。なのに社員が飛んで、負担がまた増えた。

頑張っている人が、きちんと報われる世界にするって約束じゃないの?

「ごめん。ほんとうにごめん。すぐいくね。」

約束の時刻を1時間過ぎても、既読にならないので
電話をかけたら、ものすごい勢いで懺悔さ

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脳みそのシワの先の先の先

脳みそのシワの先の先の先

「1番好きな所は雪の思想だよ〜」

ほっぺをぴったりくっつけて、満面の笑みを浮かべた君は、微睡みながら私の好きな所を教えてくれる。

もう何百回も聞いているし、君が私のことを、
ちゃんと大好きって、もう十分知ってるくせに、
この言い回しが好き過ぎて、つい何度も聞いてしまう。

いつだって「思想が好きだ」と迷わず答える君の
純粋さと、誠実さと、心の広さが、本当に本当に
愛おしくてたまらないのです。

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電話越しの君の顔

電話越しの君の顔

私たちは、声から恋に落ちた。

心地よく響き渡るチェロのような低音ボイスと、
きらりと光るワードセンス、優しさ溢れる語尾に
あの日からずっと虜で。

今日も電話できるかな??
付き合う前は、そんなことばかり考えてたっけ。

君も同じだったなんてね。

北海道由来のゆるゆるの喋り方と、ちょっと高め
のふわふわ声を聞いた時、本物のお嬢様だなんて
思ってくれたらしい。照れちゃうなぁ。

画面いっぱいに耳

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一緒に住めば、全部解決するんかな

一緒に住めば、全部解決するんかな

おはよう。おやすみ。今日も楽しいことあった?
これ美味しかったんだよ〜今度一緒に行こうね。
好き。ううん、私の方が好き。

会えない間も同じ密度で、そばにいたいなんて。

やっぱり、私って強欲すぎるのでしょうか。

恋人は、連絡不精だ。

会っている時はとんでもなく饒舌で、些細な
つまらない出来事だって、喜劇に変えてくれる。

君と話す時、いつも世界が煌めいているのだよ。

だったら、きっとLIN

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またかなんて、思いたくないのに、

またかなんて、思いたくないのに、

どうして、いつも同じ気持ちにさせるの。
あなたなら、もう大丈夫って安心してたのに。

またかなんて、思わせないでよ。

音楽スタジオで働く恋人は、しょっちゅう夜勤がある。仕事が終わって、寝るのは丑三つ時過ぎ。

だから、いつも私の休日に合わせて、午前から
会ってくれる所に、すごく感謝してた。

多少の遅刻くらい、逆にごめん、ゆっくりおいで
なんて、これっぽっちも嫌な気持ちにならない。

だけど、今

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開け!眼!

開け!眼!

「お前、また見て見ぬふりするつもりか?」

好きな人ができると、途端に視野が狭くなる癖、
誰か、私をぶん殴ってください。

この身体で何度も学んだくせに、次こそはって、
頭では分かっているのに、どうしても駄目で。

盲目になればなるほど「恋」って実感できたけど
その楽しさは、いつも、ほんの最初だけ。

小さな疑念や不安に、何度も目をつぶって、
楽しかった思い出と、昔言われた“スキ”ばかりを
掻き集

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ミニミニ・ロールケーキ

ミニミニ・ロールケーキ

「今日は贅沢しよっか!」

1ヶ月記念日の夜。
せーので指を指して、小さななロールケーキを
スーパーのカゴに入れる。

甘く包み込むような、ふわふわのスポンジ。
決して胃もたれせず、何度も味わいたいクリーム。

これはきっと、君の結晶だから。

「なんかあった?大丈夫??」

遠出して疲れた時、ヒールに疲労困憊した時、
見逃してしまいそうな程の些細な変化に気づき、斜め45度に首を傾ける。

「謝り

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ムダムダ星屑キップ

ムダムダ星屑キップ

画家の先生が、ポロリと呟く。
この授業では、毎回絵の具を使って課題をする。

決められた枠内にムラなく綺麗に塗るためには、
余分に色を作ることが必要なんだって。

巷で“美しい”と言われるようなデザインは、
合理的かつ効率的で、無駄な模様が一切無い。

無印の食器も、モード系の服も、建物だって。

だから、先生の零す「無駄があるから美しい」
という一言は、どこか前近代的でありながら、
新しい世界の

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