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気ままな読書日記

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ジャンル関係なく、気ままに本の感想を書いていきます。
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2022年3月の記事一覧

後藤直義、フィル・ウィックハム『ベンチャー・キャピタリスト 世界を動かす最強の「キングメーカー」たち』NewsPicks

後藤直義、フィル・ウィックハム『ベンチャー・キャピタリスト 世界を動かす最強の「キングメーカー」たち』NewsPicks

ベンチャー・キャピタリストという言葉は聞くものの、そんな人たちとは縁遠いことから、その実態はよく知らない。ベンチャー企業へ投資しており人たちで間違いはないとは思う。本当にどんな人たちか実際に世界のベンチャー・キャピタリストなのか、会って確かめて著したのが本書である。

星の数ほどあるスタートアップから、ゲームチェンジャーとなりうる特別な会社を見つけてくる。そして世界を上書きするための資本を注いで、

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貞包英之『サブカルチャーを消費する 20世紀日本における漫画・アニメの歴史社会学』玉川大学出版部

貞包英之『サブカルチャーを消費する 20世紀日本における漫画・アニメの歴史社会学』玉川大学出版部

本書は、「年少者向けのサブカルチャーとしての漫画やアニメを対象として、20世紀日本で人びとが経験した『消費社会』の限界と可能性をあきらかにすること」が目的とされる。漫画やアニメが、かつては年少者に偏って消費されていた。

著者は、漫画やアニメが、「消費社会」の片隅に追いやられた年少者たちをおもなターゲットとし、年少者が現在の社会を超える夢や妄想を育ませたメディアとなったことに注目し、日本の「消費社

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山崎元・水瀬ケンイチ『全面改訂第3版 ほったらかし投資術』朝日新書

山崎元・水瀬ケンイチ『全面改訂第3版 ほったらかし投資術』朝日新書

「プロが考える最善の運用に大きく劣らず、なるべく簡単に実行できる、個人にとっての資産運用の具体的方法」と、著者は「ほったらかし投資法」を定義しています。

「NISA」、「iDeCo」の導入や、2019年の通称「老後2000万円問題」、「人生100年時代」の言葉の流行があり、さらに近時の世界的な株価の急落、急反発などの情勢を考慮し、全面改訂を行ったものの、結果論として「ほったらかし投資」で良かった

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日経コンピュータ『ポストモーテム みずほ銀行システム障害事後検証報告』日経BP

日経コンピュータ『ポストモーテム みずほ銀行システム障害事後検証報告』日経BP

米国IT企業が、システム障害が発生した後に社内外の関係者と共有する事後検証報告書のことを「ポストモーテム」と呼ぶそうだ。

みずほ銀行は、2021年2月以降1年間に11回のシステム障害を起こした。金融機関のシステムトラブルは、実際は日常茶飯事であるが、顧客に迷惑を掛けずに済んでいる。

みずほ銀行は、日本を代表するメガバンクである。過去の大規模システム障害を乗り越えるため、2019年7月に新勘定系

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川島蓉子『アパレルに未来はある』日経BP

川島蓉子『アパレルに未来はある』日経BP

アパレル業界には、半年を1単位とするサイクルがある。「春夏コレクション」「秋冬コレクション」であるが、このサイクルを変えようとする動きが始まった。

19世紀のパリで始まったオートクチュールの年2回のコレクションショーは、第二次大戦後のプレタプルテの年2回のコレクション発表に引き継がれ、アパレル業界の半年ワンサイクルの土台となった。

しかし、70年代に過剰な競争を続けることで、年2回のコレクショ

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大空幸星『望まない孤独』扶桑社新書

大空幸星『望まない孤独』扶桑社新書

「望まない孤独」とは、自ら望んでいるのではなく、社会的なつながりが不足してるために生じる孤独のことである。孤独が自らひとりで耐えるものだという「誤解」が広まらないよう、著者があえてつくった言葉である。

孤立していれば孤独となるが、家族やコミュニティとの接触が頻繁にある状態でも、孤独を感じることがある。家族や友人、同僚がいても、自らの悩みについて打ち明けられなければ孤独を感じる。社会的つながりの量

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坂井修一『サイバー社会の悪を考える 現代社会の罠とセキュリティ』東京大学出版会

坂井修一『サイバー社会の悪を考える 現代社会の罠とセキュリティ』東京大学出版会

2010年秋のイラン核施設のサイバー攻撃は、コンピュータウイルスが大国の運命を左右するというパンドラの箱が開けてしまったと著者は言う。本書は、東京大学で情報工学の教鞭を執る傍ら、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業で「Society5.0を支える革新的コンピューテイング技術」の総括をしている。

2007年のロシアによるエストニア政府・金融機関への攻撃、2009年の北朝鮮から韓国への攻撃、中国

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山口真由『「ふつうの家族」にさようなら』KADOKAWA

著者は、37歳、未婚、子なし、同居人は妹、凍結された卵子15個、おそらく「ふつうの家族」を営んでいないと言う。「ふつうの家族」という聖なる呪いに長いこと苦しめられてきた著者が、「ふつうの家族」なる価値に寄りかかった安易な自分にさようならをし、代わりに「ふつうの家族」とは何か、そもそも家族とは何かという問いに向き合っきた過程を著わした著作である。

2016年、著者はハーバード・ロー・スクールに留学

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手束仁『令和の高校野球 最新マネー事情』竹書房

手束仁『令和の高校野球 最新マネー事情』竹書房

具体的に高校野球では何にどれだけお金がかかるのであろうか。入部による新調の着用品は個人負担であるが7~8万円、これらも含めた用具類だけで15万円くらいかかる。それにユニフォームや練習着、サブウェアなども購入すると、強豪私学で25万円前後、公立校でも20万円前後の出費がある。3年間続けるとなると、用具類だけでさらに8万円以上かかる。

ほとんどの学校は、県外を含めた遠征を組んでいる。その費用は、その

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庵野拓将『科学的に正しいダイエット 最高の教科書』KADOKAWA

庵野拓将『科学的に正しいダイエット 最高の教科書』KADOKAWA

本書の「はじめに」第1行目に「最初に断っておくと、この本には「簡単にダイエットをする方法」は書いてありません。」と、書かれている。理学療法士によるエビデンスに基づく肥満のメカニズムを解明した本である。

ヒトは太るようにデザインされている。旧石器時代の食料事情から美味しいと感じる者が生き残った。「火」により食事の摂取量が増え、甘いもの(特に糖類「フルクトース」)で太り、脂質で食欲が増えて太る。

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熊谷苑子『有賀喜左衛門 社会関係における日本的性格』東信堂

熊谷苑子『有賀喜左衛門 社会関係における日本的性格』東信堂

有賀喜左衛門は、1897年、信州辰野平出の地主の家に生まれ、京都帝国大学法学部に入学するも1年で、東京帝国大学文学部に入学した。1922年に卒業後大学院に進学するも、1946年に東京教育大学の非常勤講師になるまで雇用される職に着かなかった。1924年、27歳で松本の呉服商池上家の三女さだと結婚している。

有賀は27歳から36歳までのほぼ10年間、柳田民俗学への傾倒、イギリスの社会人類学やフランス

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舟橋三十子『和音の正体 和音の成り立ち、仕組み、進化の歴史』YAMAHA

舟橋三十子『和音の正体 和音の成り立ち、仕組み、進化の歴史』YAMAHA

「ドミソ」「ファラド」「ソシレ」といった和音について学校で習っているはずではあるが、本当のところは理解できていない。和音とは3つ以上の異なった高さの音が同時に響くことを言うらしい。

4つでも5つでも、100個の音でもよいのであるが、基本となるのは3つの音で構成される「三和音」である。さらに基本中の基本の和音は、「ドミソ」である。

和音は隣同士の音の積み重ねでなく、ひとつおきの音を積み重ねてでき

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岩波明『発達障害はなぜ誤診されるのか』新潮選書

岩波明『発達障害はなぜ誤診されるのか』新潮選書

発達障害という言葉は聞くようになって久しいが、その内容をよく理解している人は少ない。また、実は発達障害ではないかと思っている人も増えているらしい。著者は、日本で最初に発達障害の専門外来を開設した中心人物であり、その第一人者でもある。患者、家族のみならず医師も必読の書とされる。

発達障害には、①コミュニケーションおよび対人的な相互関係の障害、同一性へのこだわりや興味・関心の極端な偏りを主症状とする

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春日太一『時代劇聖地巡礼』ミシマ社

春日太一『時代劇聖地巡礼』ミシマ社

時代劇について語るとすれば、最近ではこの人の右に出る人はいないと言われる著者による「時代劇のロケ地」を巡る紀行文である。

最近、テレビで時代劇がかなり減っている。NHK大河ドラマはあるものの、民放ではほとんど見かけない。本当に好きな方は専門チャンネルを見ているらしい。そんな少々肩身が狭い時代劇ファンにとって垂涎の本かもしれない。

時代劇は東京では撮影されないという。都市開発で「江戸の景色」はほ

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