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創作物(小説)

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記事一覧

【小説】模様

 2017年に書いた、特殊なスタイルの短編小説。
 「模様」という概念を主人公とした小説(あるいは詩)です。
 我ながら、傑作!
 ただし、私がこれまでに書いた小説の中で、おそらく最も読みづらいであろう作品です。私の作品を初めて読まれる方には、他の短編小説をおすすめします。

他の短編小説:

これまでに投稿した小説一覧

 以下、本文。

 し文字聴く音目、高かるかま、見、みそこらうく星もうら。

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【小説】スイスイ殺虫剤

 2022年に書いた掌編小説。

 蛆虫たちは、皮膚にまとわりつくことで、私の知覚を鈍らせて、まさか自分のいる場所が「王座」だなどと、私が気づかないよう仕向けていたわけである。皮膚のあらゆる場所で粘度のある蛆虫がうごめくのは、さながら舌で舐められるかのようで、そこにいる最中は、とても「王座」らしさなど感じられなかった。しかし考えてもみれば、自分の快さのために、舌で全身を舐めさせるだなんていかにも「

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【小説】喪

 2020年に書いた掌編小説。

 刻まれる時に合わせて歌えよ踊れよ、俺達は皿に盛られている。ごちそうを眺めるときの目つきで、ジロジロ眺められるのが俺達に与えられた仕事なのだと、俺達の骨身に染み付いた考えは、時が刻まれれば刻まれるほど、真実のように思われる機会を増やしていくのである。俺は逃げようと皿の縁へとにじり寄ったことが何度かある。そのたびに、縁へ縁へと動いていても、いつの間にか目の前に、皿の

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【小説】選挙

 2017年に書いた短編「小説」。
 いわゆる普通の意味での「小説」とはスタイルの異なる作品です。

 弱くてみじめったらしい存在たちをそばに置いて眠りにつくのは心地の良い体験であるから、私は、気が向いた時にはいつも、こうした体験を楽しむために、存在たちをとっかえひっかえしている。このため私の住む大きい家には、弱くてみじめったらしい存在たちが、あちこちに存在している。
 さらわれて私の大きい家に来

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【小説】老犬

 2021年に書いた短編小説。

 あらすじ:
 車道に飛び出してきた猫を避けようとして、誤って少女を轢き殺してしまった男が、猫の街に招待され、虫でもてなされる。

 うんざりするような寝苦しい夜にはいつもそうしているように、俺はその夜も、それまで走ったことのない道を時速42キロで飛ばしていた。
 突然、道の右から黒いものが飛び出してきたので、俺は慌ててハンドルを右に切った。猫らしい。都合の悪いこ

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【小説】道幅

 2020年に書いた短編小説。

 蓋を閉める時にこぼれ落ちた掃除用の薬品は、地面に叩きつけられるや、くるくる回転しながら、自分がただこぼれ落ちたに過ぎないのだとは夢にも思わず、何かをきれいにする気まんまんで、一歩ずつ前に進みだした。水滴のようにも見えるが粘度は高く、一度絡め取った汚れは自らのうちで溶かすまでけして離そうとしない執念深さを持ち、目に見えない汚れを根こそぎ奪っていく便利な機能を与えら

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【小説】心の裏側を見透かされた話

 2022年に書いた掌編小説。

 妙な音を発しながら、道に転がる石が、分もわきまえず、俺に睨みをきかせてきた。俺は腹が立った。たかが道端で幼児に蹴られるくらいしか役に立ちそうもない鉱石のかけらごときが、この俺に、チンピラか何かを眺めるような侮蔑的な目つきをぶつけてこようとは……「夢にも思わないこと」は数あれど、こいつは少し度が過ぎている。数ある「夢にも思わないこと」の中で、起こったのがたまたまそ

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【小説】暗黒(通勤途中に渋滞に巻き込まれた話)

 小説投稿サイト『破滅派』に短編小説を投稿しました。
 同サイト内で開催されている公募のお題に合わせて、「通勤途中に渋滞に巻き込まれた話」というテーマで書いた作品です。
 https://hametuha.com/novel/86957/

題名:「暗黒」あらすじ

 渋滞に巻き込まれたタクシーの中で、運転手が客に恫喝される。

執筆年

2023

冒頭

 青白い三角形
 を
 目印に
 道を

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【短編集】殺虫小説集

 小説投稿サイト『破滅派』に継続的に投稿している短編小説群を、同サイト内で短編集としてまとめました。

題名:『殺虫小説集』 URL: https://hametuha.com/series/%e7%9f%ad%e7%b7%a8%e9%9b%86/

 詩と小説の中間のような、特殊なスタイルの作品集です。
 1日1篇を投稿するのは今日で終わりにしますが、今後も不定期に作品を追加していく予定です。

【小説】鍵の束

 小説投稿サイト『破滅派』に掌編小説を投稿しました。
 https://hametuha.com/novel/86386/

題名:「鍵の束」あらすじ

 ゴミ捨て場で、犬の死骸を発見した主人公「俺」。イライラしていた「俺」は、つい、死骸を殴りつけてしまう。だがその直後、「俺」は、犬がまだ生きていたことに気づく。

執筆年

2023

冒頭

 誰よりも善良で繊細な俺が、ある日、ゴミ箱を漁ってい

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【小説】人・殺兎事件

 小説投稿サイト『破滅派』に短編小説を投稿しました。
 https://hametuha.com/novel/86332/

題名:「人・殺兎事件」あらすじ

 公園で、地面に絵を描いて遊んでいた兎を、主人公「俺」が誘拐する。

執筆年

2022

冒頭

 あ、あ、あ、あ、と声を上げながら動き回る者たちの姿を、丹念に見分けようとしたところで、それらは結局、白っぽい、耳の長い、足の短い、しっぽも

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【小説】希虹の望

 小説投稿サイト『破滅派』に短編小説を投稿しました。
 https://hametuha.com/novel/86285/

題名:「希虹の望」あらすじ

 捨てられた傘の切れ端が、元の持ち主を探しながら雨の中をさまよい、ある雨宿り場所にたどり着く。主人公「俺」は、そこで傘の切れ端をいじめる。

執筆年

2020

冒頭

 雨宿りするにはもってこいの天気さ、おかげで地面の下から這い出してきたも

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【小説】毟り

 小説投稿サイト『破滅派』に短編小説を投稿しました。
 https://hametuha.com/novel/86216/

題名:「毟り」あらすじ

 虫に似ている「何か」の巣を、主人公「俺」が訪れる。「何か」たちは、「俺」を餌だと思い込み、調理しようとする。

執筆年

2020

冒頭

 虫以下のなりをしている虫どもめ、虫より少しは上にいるつもりでいる連中が、馬鹿にしながらそばを通り過ぎる

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