【中編】 レンズと具現の扉-⑦

13 思い出されるモノ

 翌朝、バルドは再び刑事と具現の扉を訪れた。

 昨晩、あの少年と話した記憶と現れた二人の女性、レンズの事について考え続け、夜もいつ寝たのか、何時間眠ったか分からなかった。目を覚ましたのは空の色が明るみだし、周囲の光景が藍色を纏ったかのように、色は分からずとも輪郭だけははっきりとした時であった。

 鼻から吸い込む空気に匂いは無いが涼しく、周囲の雰囲気も静まり返っていた。

もっとみる
嬉しいですo(^-^o)(o^-^)o
1

【中編】 レンズと具現の扉-⑥

11 湖にて

 目を覚ますと、あの湖の傍らで横たわっていた。

 空の色、周囲の朱交じりの光景から夕方だと思われるが、前回と同じ光景であって、前回と違う点を挙げるとすれば、上空にレンズの塊がいくつか漂っている事である。

 そう言えば以前はこれが無かった。いや何より、今までレンズについてあまり思い出していなかった。
 あの少年に言われ、話を聞いて、ようやくこの世界にはレンズが当たり前のように漂っ

もっとみる
ありがとうございますm(_ _)m
1

【中編】 レンズと具現の扉-⑤

9 責める女性と語る少年

 バルドは依存症者である。
 それだけは扉を抜けた後もずっと心中に残り、屋敷の男性の前でもその事実を打ち明ける事が出来なかった。

 情緒不安定なバルドを気遣い、男性は紅茶を淹れてくれた。
 とりあえずの小休止の最中、男性がバルドに幾つか質問をしてきた様に思えたが何一つとして答えることが出来ず、バルド自身、ずっと自分が何に関しての依存症者であるかを思い返した。

 する

もっとみる
今後ともよろしくお願い致します(^ω^)

【中編】 レンズと具現の扉-④

7 踊り場で語らう

 朝九時半。
 二人が扉の中へ入って行くのを見届けた男性は、書庫の入口の戸を内側からノックする音を聞いて振り向いた。戸の前には、身体の輪郭がはっきりと表れる黒い洋服を纏った女性がいた。

 ハイヒールを履いた色白い脚を交差させて立ち、入口の戸に腕を組んで凭れ、微笑んでいた。

「やあ。前回は散々だったね」男性は立ち上がった。「まさか、紅茶を淹れてすぐに戻ってくるとは思わなかっ

もっとみる
今後ともよろしくお願い致します(^ω^)
2

【中編】 レンズと具現の扉―③

5 月夜の考察

 その日の具現の扉を通る使用時間が終わり、運よく飛ばされた場所が屋敷の近くであった為、屋敷の男性にテントを借り、そこで二人は野宿する事にした。

 一応、公共施設である屋敷には許可なく入れず、男性も翌朝の集合時間を告げ帰って行った。

 その日は丁度満月。
 火を焚かなくても辺りが明るく、色彩はほとんど同じ薄暗がりの藍色の世界にいるように、全ての色合いは独占されている世界である。

もっとみる
今後ともよろしくお願い致します(^ω^)
3

【中編】 レンズと具現の扉-②

3 浜辺の女性

 扉を閉め、周りの風景が何一つ、隣の刑事の姿さえ視認出来ない暗黒の中に立たされた。
 このような摩訶不思議な体験は初めてで、不安になりながらも周囲を見回すと、暫くして前方から物凄い勢いで風景が迫ってきた。
 それは二人を通り過ぎ、後方にも風景を現した。
 その現象は、まるで元々あった風景に自分達が到達したかのようであった。

 どのような場所に立たされたかと思いきや、特に変わり映

もっとみる
ありがとうございますm(_ _)m

【中編】 レンズと具現の扉-①

1 レンズ

 【それ】は突如出現した。何の前触れも、異変も、音も無く。
 気候、波、風の揺らぎにも変化を示すことなく、それは姿を見せた。

 形状は凹凸のある楕円形。水晶のように透明ではあるが、硝子や水晶の様な光の反射、乱反射を起こす機能は無く、当然のことながら影が出来ない。

 崖沿いに栄える炭鉱と工芸品の都市【トルノス】
 謎の透明な物体が出現した時、この都市の首相命令により調査隊が組まれ、

もっとみる
今後ともよろしくお願い致します(^ω^)
2

『ニンゲンはお好きですか』 #3 連載小説

最初『ニンゲンはお好きですか』#1
前話『ニンゲンはお好きですか』#2

「ひーちゃん、遊ぼ!」
「やだね、『ちゃん』で呼ぶなって言ってるだろ」
「もうひーちゃん、いつになったら、────」

 トントン。肩を叩かれ、重い目蓋を上げた。
 映るのは暗色のカウンター。組んでいたはずの腕はだらりと床へ垂れている。

「紘人くん、もうクローズの時間だよ。おはよう、起こして悪いね」
「……柳田さん。すみま

もっとみる
スキ♡ ありがとうございます!
6

『ニンゲンはお好きですか』 #2 連載小説

前話『ニンゲンはお好きですか』#1

 あの喫茶店デートから二度目はまだ訪れていない。
 休日の買い出しを終えた凛子は、散歩がてらあの喫茶店へ足を向けていた。もしかしたら居たりして、なんて。柄にもない程の乙女心を抱いてしまっている。

 ──紘人さんのことが気になってるんだと思う。

 初日を終えたあと、凛子は「機会があったらまたお会いしましょう」と一旦打ち込んだ社交辞令を削除し、代わりに「紘人さ

もっとみる
スキ♡ ありがとうございます!
6

『ニンゲンはお好きですか』 #1 連載小説

「凛子さん、猫、お好きなんですね」

 コーヒーをひと口すすり、紘人は言った。
 マッチングアプリでやり取りして初めての対面。よろしくお願いします、からの第一声。辿々しい。人見知りな性格らしく、ちら、と凛子のスマホに目を向けている。よく言ってウブな印象。悪く言えば、女慣れしていない。凛子は、まあ馴れ馴れしいよりかはいいか、と同じようにコーヒーを口に含んだ。

「ええ、昔は実家で猫を何匹か飼っていた

もっとみる
スキ♡ ありがとうございます!
5