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せーかつ

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#仕事

小雨の朝と社会人

小雨の朝と社会人

小雨の降る朝でした。

車での通勤中。赤信号で止まっていると
目の前の横断歩道を
ひとりの女性が横切っていきます。

傘をさしながら歩くその方は
ズボンのスーツに、低いパンプス。
前髪は、七三に分けてぴっちり横に流し
長い髪を後ろでひとつに結っています。

気持ちのよい身だしなみです。
この方もいま、出勤するところなのでしょう。

雨の中でも
シャキシャキと歩くその方の姿に
ふと思い出したのは

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連休明けのロッカールーム

連休明けのロッカールーム

その日は少しばかり早く出社をして
職場のロッカールームに着きました。

大型連休明け、初日の出勤日。

デスクに着くと始まるであろうお仕事ラッシュに
やや心が滅入るな、と思いながら
ふぅ、と息をついていると
コンコン、と元気にドアがノックされました。

開けられたドアのほうに目を見やると
立っていたのは、先輩職員のKさんでした。
いつも気さくに接してして下さる方で、
私にとってはお姉さんのような存

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四月には 心を輪にする演出を

四月には 心を輪にする演出を

金曜、四月から入社されたTさんの
歓迎会が開かれました。

和ふうの、小洒落たお食事処に集まったのは
同じ課に所属する、十人。
年代は色々ですが、全員が女性です。

掘りごたつの個室で、
ひと続きのテーブルに
十人が五人ずつ、向かい合うように座ります。
皆が席に着くと前菜が手早く提供され、
一杯目の飲み物が行き渡りました。

「Tさん、これからよろしくお願いします。
では、かんぱい」
上司の音頭の

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27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

書店で偶然手にした本を
何の気なしにぱらぱらとめくり、
ふと目を落としたその先に
そんなことが、書かれていました。

色鉛筆で描かれた
さらりとシンプルな装丁。
目を引く黄色い帯には
『求めるのは「しあわせ」よりも「安心」』
と書かれています。

それは、松浦弥太郎さん著書
『松浦弥太郎の「いつも」
安心をつくる55の習慣』という本でした。

書かれている言葉を
目で追うごとに、
なにか、腑に落ち

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桜色キャンディのおまじない

桜色キャンディのおまじない

「どこまでできるか分からないけれど、
私はひとまず『今日一日』を
頑張ってみようって思ってるの。
『今日一日』だけでいいから、
しっかり乗り越えようって。

私も昔は、先のことが常に頭にあって
こうなっていなくちゃ、と思っていたんだけど
それがすごく
負担になっているって気づいてね。
もっとラクに考えようって思って。

朝にね、好きなお菓子をひとつ食べるのよ。
よし、これで今日一日頑張れる!って

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春 空 の ア ク セ サ リ

春 空 の ア ク セ サ リ

窓の外は隅から隅まで
青いタイルをぴっちりと敷き詰めたような
快い空です。

カーテンを開け放ち、
部屋に
四月の日差しをたっぷり呼び込んで
アイロン台の前に座ります。

休日の午後2時。
まとめて洗ったシャツやハンカチの
アイロンがけタイム。

襟、カフス、腕、肩、身頃と
シャツのカタチに合わせて
アイロンをすーっと這わせます。
裏に返したり、スチームを使ったり、
アイロン台の先端を使ったり。

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言葉を仕事にするひと

言葉を仕事にするひと

書籍「美しいものを」には、
雑誌「暮しの手帖」の
初代編集長である花森安治さんの遺した
“暮し”を見つめる言葉が
おさめられています。

モダンな挿絵とともに綴られる
花森さんの言葉は、

目の前の人にやさしく語りかけているような
あるいは、
ひとつひとつのバランスを慎重に考えて
編み上げたような
特有の語り口が
他にない魅了を放っています。

なんとなく気忙しく、
物事への向き合い方が
すこし粗

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思い出の玉子かけごはん

思い出の玉子かけごはん

ひんやりする朝。
ちょっと、あたたかくなれるものを食べたい、
そんな朝です。

キッチンに立って思い付いたのは
子供のころ、日曜日に
父がよく作ってくれた
朝ごはんでした。

作りやすいふたり分の分量を、
ここに書いてみます。

炊きたてのごはんに
鰹のふりかけをさっくり混ぜ込んで
お椀に二膳、よそっておきます。

つづいて
玉子を2コといて
牛乳を大さじ2ほどと、塩を少々。
タネを作ります。

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ま っ さ ら な 風 に の っ て

ま っ さ ら な 風 に の っ て

いつもと同じ時間に起きて
いつもと変わらない朝ごはんを食べて
ちょっとしっかりめにメイクをして
まだ涼しい空気の中を
いつも通りに出勤する。

今日は、最終出勤日。

胸の中の、
どことなくフワフワした感覚だけが
いつもと違っている。
結婚、退職、転居。
自分で決めたことなのに
今日でこの職場に来ることが最後なんて、
なんだか嘘みたいな気がする。



残業中に先輩がくれたカフェラテのあったかさ

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窓際の後輩くんはお人好しすぎる

窓際の後輩くんはお人好しすぎる

私がはやく職場に着いても、
もう既に一年後輩のヒロタくんは
席に座っている。
彼の席は事務室のドアを開けて真っ直ぐの
窓際にあるので、
部屋に入ると一目で
出社していることがわかる。

小柄に、おっとりした目の温顔で
小岩井のカフェオレをよく飲んでいる。

彼とは係が違うので
朝は特段会話するでもなく、
軽く挨拶を交わすくらいで私は席に着く。

静かな空間と朝の新しい空気の中だと
作業が捗る。

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“ 年上のお友達 ”が教えてくれたこと

“ 年上のお友達 ”が教えてくれたこと

ふた周りほど年上の、私のお友だちの話です。

その人を思い出すと、真っ先に
たんぽぽみたいな笑顔が浮かびます。
丸いショートカットにくっきりな二重、
親しみやすい雰囲気で、
くりぃむ色が似合うその方は
「文代さん」といいます。



便箋を探しに
地元の工芸品でもある和紙を求め、
和紙屋さんを訪ねたときのこと。

紙漉き機や大釜のある工房に並んで
古民家を改装した店舗がありました。

中には葉書

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言葉は、春風のように

言葉は、春風のように

その言葉をくれたのは、
当時の上司だった。

課長補佐 57歳。
周囲からの印象は
一言でいうと「気難しい人」
だったと思う。

細かい点まで目が届き、
不明な部分を曖昧にしない
責任感の強い方で

整った字を書く人だった。



「今日は仕事の話じゃないんだ。ここにいると聞いたから、ひとつ伝えておきたいと思ってね」

復職するための準備期間として一週間ほど、
私は事務室から少し離れた別室で

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恩 師 の 背 中 と い う 道 標

恩 師 の 背 中 と い う 道 標

心の問題で休職をしていたとき、
私は恩師の元を訪ねた。

**

連絡を取ると
「いつでも話にいらっしゃいよ」と
気さくに返事をくれた。

先生は、いつも笑っている。
約1年半、久しぶりに会ったその日も
ふくふくと可愛らしい笑顔は健在だった。
元気でちょっとお茶目で
たまにそそっかしい。
生徒から愛されている先生だった。

校内にある自販機で
先生は私の分までカフェラテを買ってくれて
生徒の帰った

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