小雨の朝と社会人
小雨の降る朝でした。
車での通勤中。赤信号で止まっていると
目の前の横断歩道を
ひとりの女性が横切っていきます。
傘をさしながら歩くその方は
ズボンのスーツに、低いパンプス。
前髪は、七三に分けてぴっちり横に流し
長い髪を後ろでひとつに結っています。
気持ちのよい身だしなみです。
この方もいま、出勤するところなのでしょう。
雨の中でも
シャキシャキと歩くその方の姿に
ふと思い出したのは
数年前に勤め先で受けた
新人研修のひとコマでした。
*
清々しい話し方をされる
女性の方でした。
50代で、総務課の課長を務めていらして
私はその方に、
新人研修をしてもらいました。
周囲から「細かくて厳格な人」と
評されていた方で
私も、同期のメンバーも
ずいぶん緊張していましたけれど
その声にはたしかに、
やさしさを感じました。
あれから数年が経ちました。
いま、一応社会人として毎日を送っている自分が
あのとき思い描いた社会人に
なれているだろうかと考えると
正直なところ、心許ない気もします。
私はその後、勤め先を移ってしまったため
その方とお会いする機会は
もうありません。
ですけれど、
後にも先にも、あんなふうに
働くことへの心得を
きちんと自身の言葉で伝えてくださった
格好良い社会人を
私はほかに知りません。
これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿