谷翔

妻、哲学、読書が好き。病気(統合失調症など)の妻との日々。生活介護の事業所で働いている…

谷翔

妻、哲学、読書が好き。病気(統合失調症など)の妻との日々。生活介護の事業所で働いている。 過去記事→https://tani55sho44.hatenablog.com/

記事一覧

「窓を開けてほしい」

昔、「同じ部屋にいる人が「暑い」と言った場合、それは、単純に暑いと思ったから暑いと言っただけかもしれないし、「窓を開けてほしい」という意味を込めて暑いと言ったの…

谷翔
2週間前
2

記録 深夜のドライブ

一昨日の出来事なので、自分や妻が言ったことややったことをきちんと覚えているわけではないが、記録として残しておきたいので書く。 夜、妻が「無茶なことを言って翔ちゃ…

谷翔
3週間前
4

泣く

昔、「自分の人生を俯瞰しなくたって、あるいは、しないほうが、いいんじゃない?」という趣旨の文章を書いたことがある。 自分を見る、ということは、自分以外のものを見…

谷翔
9か月前
3

生きる人

妻は、食べ物をよくこぼす。 こうすればこぼしにくいよ、と僕には言えない。 こうすればこぼしにくいよ、と言えば、 こぼさないようにしろ、こぼさないためにこうしろ、を…

谷翔
10か月前
5

今日の文章は、いつも以上に、思いつくままツラツラと書いたものだ。まとまりはない。 …… 子供がほしい、と妻が言っている。 強い気持ちでそう言っている。 おそらく僕…

谷翔
1年前
7

働き始めた妻のこと

妻がアパレルで働き始めた。 僕は無職のままだ。 …… 僕らの状況を知っている人たちには、もしかすると、不思議に思われるかもしれない。 なぜなら、妻は病気で、働ける…

谷翔
1年前
3

妻との最近の生活において考えていること

妻の薬が減った。 この前病院に行って、向精神薬の量が少し減ったのだ。 大きな理由はおそらく2つ。 副作用である眼球上転(自分の意志に反して眼球が上を向いてしまう)…

谷翔
1年前
5

最近の妻の様子

助けてという記事を書いたのが6月27日。 それから3ヶ月半ほど経った。 まず、個人的に僕に声をかけてくれた友人たちに心から感謝する。 妻の病状は、格段に良くなった。 …

谷翔
1年前
5

新井克弥『ディズニーランドの社会学』青弓社 感想

新井克弥『ディズニーランドの社会学』青弓社 を読んだ。断片的に感想を書く。 この本を読もうと思うきっかけになった記事はこちら。「情報圧によるめまい」に焦点を当て…

谷翔
1年前
1

金曜日のおばあちゃん

以前、僕は清掃会社に勤めていた。車で一日に何件かのアパートを巡回し、建物周りや廊下、階段などの共用部を清掃する仕事だ。 毎週金曜日に清掃を行うアパートがあった。…

谷翔
1年前
1

「ガヤトリ・スピヴァクとの対話」におけるひとつの問いについて

 2008年に作品社から出版された、竹村和子編著 『ジェンダー研究のフロンティア5 欲望・暴力のレジーム 揺らぐ表象/格闘する理論』の中に、「ガヤトリ・スピヴァクとの対…

谷翔
1年前

信田さよ子『加害者は変われるか?』筑摩書房 メモ、感想

信田さよ子の『加害者は変われるか?』を読んだ。読みながらTwitterにいくつかメモや感想を書いた。それをここにまとめておく。 ……… 幼児的万能感。幼児は世界のあら…

谷翔
1年前
2

ハローワークと、ある気持ちの存在承認と

昨日、ハローワークに行った。 コースというか、プランというか、があって、それに申し込もうと思った。 通常の、相談や仕事の紹介などに加えて、書類作成の手伝いや面接…

谷翔
1年前
8

映画『リバーズ・エッジ』 感想 出口の有無と2つの時間について

【ネタバレあります】 …… …… ……  映画『リバーズ・エッジ』(行定勲監督)を観た。原作(岡崎京子著)と比較しながら、感想を書く。  原作では「出口の無さ」が…

谷翔
1年前

 ある日、学校の課題でノリコが書いた校舎の絵を見て、おまえ、え、うまいな、とイチタは言った。ノリコは、そうかな、と言って、廊下の白い壁に貼り付けてある自分の絵を…

谷翔
1年前
3

「おめでとう」が怖い

「おめでとう」と言われて、怖い、と感じることが多い。 「結婚おめでとう」「出産おめでとう」「合格おめでとう」「就職おめでとう」 なぜ怖いのか。 「おめでとう」に…

谷翔
1年前
10

「窓を開けてほしい」

昔、「同じ部屋にいる人が「暑い」と言った場合、それは、単純に暑いと思ったから暑いと言っただけかもしれないし、「窓を開けてほしい」という意味を込めて暑いと言ったのかもしれないし……」みたいな文章を読んでびっくりした。

「窓を開けてほしい」とは言っていないのに、「窓を開けてほしい」と思っているかもしれないと想像することなんてある?

そんな想像をすることは、相手に対して失礼じゃない??

と思った。

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記録 深夜のドライブ

一昨日の出来事なので、自分や妻が言ったことややったことをきちんと覚えているわけではないが、記録として残しておきたいので書く。

夜、妻が「無茶なことを言って翔ちゃんを困らせたい」と言った。

例えば何なのと訊くと、

「今から北海道に行く」と言った。
(ほんとに行きたいわけではないけど、例えばね、と言っていた。)

僕は「いや〜、それは……無理だよなー……」と言った。

妻は「ひどい」と言った。

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泣く

昔、「自分の人生を俯瞰しなくたって、あるいは、しないほうが、いいんじゃない?」という趣旨の文章を書いたことがある。

自分を見る、ということは、自分以外のものを見ることができなくなる、ということである。

自分の目の前に、ある他人がいるとする。その人は、最近、傷つくことがあり、とても悲しみ、怒り、落ち込んでいるとする。

そこで「他人のことを考える」とする。

そういう時、僕は、自分自身の体を自分

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生きる人

生きる人

妻は、食べ物をよくこぼす。
こうすればこぼしにくいよ、と僕には言えない。

こうすればこぼしにくいよ、と言えば、
こぼさないようにしろ、こぼさないためにこうしろ、を醸し出してしまう。

ある行為をすることは、
その行為のために労力を割くことだ。

もし、生きるために自らの力の100%を使って毎日の行為をしているとすれば、ある新しい行為をするためには、これまでしてきた行為に割いてきた労力の一部を削り

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虎

今日の文章は、いつも以上に、思いつくままツラツラと書いたものだ。まとまりはない。

……

子供がほしい、と妻が言っている。
強い気持ちでそう言っている。
おそらく僕たちは子供ができる方へ向かって進むことになる。

僕は、記憶に残っている範囲で言えば、且つ、僕一人の個人的な気持ちの範囲で言えば、「子供がほしい」と思ったことはない。
(ちなみに同じ範囲で言えば「結婚したい」と思ったこともない。)

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働き始めた妻のこと

働き始めた妻のこと

妻がアパレルで働き始めた。
僕は無職のままだ。

……

僕らの状況を知っている人たちには、もしかすると、不思議に思われるかもしれない。
なぜなら、妻は病気で、働けるような状態ではなく、職を探していたのは僕の方だったからだ。

経緯

12月の初め、妻の薬が変わった。
11月の通院時に、副作用である眼球上転(眼球が勝手に上を向いてしまう)の改善を意図して薬を減らしたのだが、改善が見られなかったから

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妻との最近の生活において考えていること

妻との最近の生活において考えていること

妻の薬が減った。
この前病院に行って、向精神薬の量が少し減ったのだ。

大きな理由はおそらく2つ。
副作用である眼球上転(自分の意志に反して眼球が上を向いてしまう)が頻繁に起こるため日常生活に支障をきたしていること。
そして、精神病症状(幻覚・幻聴・妄想など)が起こることがほぼなくなったこと。

妻の病状は改善している。

薬を減らす前は、精神病症状がほぼなくなり、「もしかしてほとんど治ったのでは

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最近の妻の様子

最近の妻の様子

助けてという記事を書いたのが6月27日。
それから3ヶ月半ほど経った。

まず、個人的に僕に声をかけてくれた友人たちに心から感謝する。

妻の病状は、格段に良くなった。

7月の頭に入院(一日で退院)したタイミングで薬の量を増やし、その効果があったのか、解離が起きて記憶をなくすことや、「悪い人の仲間になった」とか「万引きをしなきゃ」などの思いにとらわれ外に出ようとすることは徐々に少なくなっていった

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新井克弥『ディズニーランドの社会学』青弓社 感想

新井克弥『ディズニーランドの社会学』青弓社 感想

新井克弥『ディズニーランドの社会学』青弓社 を読んだ。断片的に感想を書く。

この本を読もうと思うきっかけになった記事はこちら。「情報圧によるめまい」に焦点を当てた記事。

ディズニーランドの社会学:情報圧によるめまい

……

東浩紀が講談社現代新書から出している『動物化するポストモダン』にめちゃくちゃ近い本。こことか。

「インターネット上にあふれる膨大な数のディズニーに関する情報のなかか

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金曜日のおばあちゃん

金曜日のおばあちゃん

以前、僕は清掃会社に勤めていた。車で一日に何件かのアパートを巡回し、建物周りや廊下、階段などの共用部を清掃する仕事だ。

毎週金曜日に清掃を行うアパートがあった。

ある日、清掃をしていると、小さな声が聞こえた。見ると、一つドアが開いており、誰かが手招きをしている。行くと、おばあちゃんがいた。
おばあちゃんはだいたいこんなことを言った。

「わたしは足腰が悪く、ごみ置き場までゴミを持っていくのがツ

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「ガヤトリ・スピヴァクとの対話」におけるひとつの問いについて

「ガヤトリ・スピヴァクとの対話」におけるひとつの問いについて

 2008年に作品社から出版された、竹村和子編著 『ジェンダー研究のフロンティア5 欲望・暴力のレジーム 揺らぐ表象/格闘する理論』の中に、「ガヤトリ・スピヴァクとの対話」が収録されている。そこで竹村和子は以下のようにスピヴァクに問うている。

「最後に一つ、個人的な短い問いをさせてください。しかしこれがわたしの最大の関心事でもあるのです。[略]政治と文学、マルクス主義と脱構築はそれほど容易く調停

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信田さよ子『加害者は変われるか?』筑摩書房 メモ、感想

信田さよ子『加害者は変われるか?』筑摩書房 メモ、感想

信田さよ子の『加害者は変われるか?』を読んだ。読みながらTwitterにいくつかメモや感想を書いた。それをここにまとめておく。

………

幼児的万能感。幼児は世界のあらゆるものは自分が動かしていると考える。それは逆に言えば、世界に悪いことが起こる(家族内の暴力などを目撃する)と「自分のせいだ」と否定的自己認知をするということ。万能感が自己否定を生むというのが面白い。『加害者は変われるか?』を読ん

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ハローワークと、ある気持ちの存在承認と

ハローワークと、ある気持ちの存在承認と

昨日、ハローワークに行った。

コースというか、プランというか、があって、それに申し込もうと思った。
通常の、相談や仕事の紹介などに加えて、書類作成の手伝いや面接のアドバイス、自己分析、就職後のフォローなど、かなり全面的に支援してくれるプラン。
ただし正規雇用(正社員)を目指す人だけの。

担当者の人と話した。
で、結論としては、今は正社員を目指してこのプランに申し込むのは無理そう、ということだっ

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映画『リバーズ・エッジ』 感想 出口の有無と2つの時間について

映画『リバーズ・エッジ』 感想 出口の有無と2つの時間について

【ネタバレあります】

……
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……

 映画『リバーズ・エッジ』(行定勲監督)を観た。原作(岡崎京子著)と比較しながら、感想を書く。

 原作では「出口の無さ」が表れている。
 対して、映画版には出口がある。

 原作では、意外と、死が遠い。
 死体が出てきたり、田島カンナが焼け死んだりするけど、生きている人たちにとって、それらは遠い。死体や死人は、生者たちの友達にはなれるけど、なぜか遠い。

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絵

 ある日、学校の課題でノリコが書いた校舎の絵を見て、おまえ、え、うまいな、とイチタは言った。ノリコは、そうかな、と言って、廊下の白い壁に貼り付けてある自分の絵をジッと見つめた。自分の気持ちがノリコに少し伝わっただろう、とイチタは思った。ノリコの目が絵から離れる前に、イチタは走って教室に戻った。ノリコは通りがかった女友達に声をかけられて隣りの教室へ入り、イチタに言われたことは忘れてしまった。絵の前の

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「おめでとう」が怖い

「おめでとう」が怖い

「おめでとう」と言われて、怖い、と感じることが多い。

「結婚おめでとう」「出産おめでとう」「合格おめでとう」「就職おめでとう」

なぜ怖いのか。
「おめでとう」に、「この社会の中で価値あるとされる者になれたね、おめでとう」という意味を感じ取ってしまうからである。

例えば、「万引きおめでとう」とは言わない。
万引きはこの社会の中で価値のあることではないからである。どんなにその人が、万引きをしたい

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