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 ある日、学校の課題でノリコが書いた校舎の絵を見て、おまえ、え、うまいな、とイチタは言った。ノリコは、そうかな、と言って、廊下の白い壁に貼り付けてある自分の絵をジッと見つめた。自分の気持ちがノリコに少し伝わっただろう、とイチタは思った。ノリコの目が絵から離れる前に、イチタは走って教室に戻った。ノリコは通りがかった女友達に声をかけられて隣りの教室へ入り、イチタに言われたことは忘れてしまった。絵の前の、二人のいたその空間は、ポッカリと残った。

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