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働き始めた妻のこと

妻がアパレルで働き始めた。
僕は無職のままだ。

……

僕らの状況を知っている人たちには、もしかすると、不思議に思われるかもしれない。
なぜなら、妻は病気で、働けるような状態ではなく、職を探していたのは僕の方だったからだ。

経緯

12月の初め、妻の薬が変わった。
11月の通院時に、副作用である眼球上転(眼球が勝手に上を向いてしまう)の改善を意図して薬を減らしたのだが、改善が見られなかったからだ。

眼球上転はとてもツラいようだ。
目の筋肉に力が入って疲れるし、見たい方向を見ることが難しくなる。

副作用が少ないとされる薬に変えて、眼球上転が起こる頻度はかなり減った(完全にはなくなっていないが)。良かった。

別の変化もあった。
妻が元気になった。

変える前の薬は鎮静作用(気分を落ち着ける)が強かったようだ。活動性は低く、睡眠時間も長かった。

今の薬は少し鎮静作用が弱いようだ。活動性が上がり、睡眠時間も短くなった。
一日の中で、活動できる時間が長くなった。
また、病的症状に対する効果も上手く出ているようで、長時間活動してもあまり調子が悪くならなくなった。
これまでは、疲れやストレスは病的症状や眼球上転を起こしやすくするから、できる限り避けたいものだった。
薬を変えてからは、多少の疲れやストレスでは症状も上転も出なくなった。

妻が元気になった。
妻に「勢い」がついた。

妻は、アパレルの求人に応募した。

「採用の場合は10日以内に連絡する」と言われて待っていたが、10日たってしまって、不採用だったねと二人で残念がった次の日に「遅くなって申し訳ありません」と、採用の電話が来た。

電話を終えた妻は「やったー!」と言って両手を上げた。

でも

でも、嬉しいだけで終わるわけではない。
初出勤の前には「楽しみ1割不安9割」と言っていた。無理もない。ひと月前は僕と一緒にいない時間を数時間過ごすこともできなかったのだ。

それでも、元気になればすぐにアパレルに応募してしまうのが妻である。「様子を見る」なんて選択肢はない。

僕がこれを書いている今まさに、妻は出勤して働いている。
3日目の出勤だ。

1日目も、2日目も、3日目も、それぞれの前日に妻の調子は悪くなった。

昨日は、お風呂(シャワー)に入るのと歯磨きをするのがツラすぎて動けず、僕もいつも以上に手助け(主には妻を「気にかける」ということだ。例えば「スマホを見ない」など、妻以外に気を向けることをしないことだ。)をして、4、5時間かけてその2つを終えた。
その内には、解離症状(普段の意識状態をなくして行動し、その時の記憶はなくなる。)を起こして「いやだ! いやだ!」と叫びながら外に出ようともがいていた(僕に止められていた)時間もある。

なんとかすべてを終えて、眠り、朝は比較的落ち着いていた(いやだとは言っていた)。

傾向としては、出勤日の朝は比較的落ち着いている。出勤日の前日の夜(特に風呂・歯磨き時)に調子が悪くなる。

これまで3回の出勤に、連勤はなかった。休日が挟まっていた。
年明けからは、連勤が出てくる。
シフトの予定を見ると、4連勤がある。5連勤も場合によってはあるようだ。

妻は辞めずに仕事を続けられるか。

夜にあれほどのストレスを毎日感じるのだとしたら、続けられる可能性は高くはないのかもしれない。
あるいは、もしかしたら、仕事を始めたばかりで不安が大きいだけで、徐々に落ち着いてきて、続けられるのだろうか(と書いてみたがリアリティはない)。

分からない。

とは言え、どうなったとしても、僕のすることは妻を支えることであり、それは変わらない。僕は妻に(起こることに)ついていくだけだ。どうなったとしても僕らはそれに対応していくだろう。

僕はどうするか

僕の仕事はどうするか。
妻の収入だけでは生活できないし、妻の仕事が続くかどうかも分からないのだから、僕も仕事をする必要があるだろう。

今は、妻が仕事を始めたばかりで何がどうなるか分からないので、定職につくことはせず、日雇いで働ける時に働こうと思っている。一昨日「タイミー」という日雇い仕事応募アプリを教えてもらった。

妻が仕事を続けられそうなめどがついたら、僕も外で働きたいと思っている。

妻が仕事を続けられないということになったら、僕は本格的にリモートワークを始めようと思っている(妻が家に一人でいるのは難しいので外では働けない)。

が、やはり、どうなるかは分からない、という部分は大きい。

前の仕事を辞めてからこの数ヶ月、妻と一緒に過ごすことで体力消耗度としてはちょうどよかった。
妻と一緒に過ごすことを仕事にして収入が得られるならどんなにいいだろうかと思う。
僕には「夢」とかはないし、仕事にしたいこともない。妻と一緒にいて、ときどき本が読めれば十分だ。

……

生活保護をもらうことも考えた。
でも、生活保護をもらうには、車を手放さなければならない(と市役所の人に言われた)。
車で出かけることは、今の僕らにとってなくてはならないことだ。
家にずっといることは妻の気をふさがせる。妻を病ませる。
公共交通機関に乗ることが(全くできないわけではないが)難しい妻にとって、車は命綱だ。
だから生活保護をもらうのは難しい。

……

幸い、今は、妻の親から様々に援助をしてもらえている。
でも、いつまでも続くものではない。

開き直って

僕は、とりあえず求人に応募してみようと思っている。しばらく日雇い仕事をしながら妻の様子を見て、妻が仕事を続けられそうかどうかが見えたら、そうする。
これまでは、仕事に就いても急遽休んだりすぐに辞めたりして職場に迷惑をかける可能性が高いなどと考えて応募に積極的ではなかった。
これからは、そういう迷惑をかけることを厭わず、応募してみようと思っている。
そうでなければおそらくいつまでも働けないだろう。

僕は、妻が僕を必要としたらできる限りすぐに妻のそばへ行く。それは確実だ。それが最優先事項だ。
だから、急遽休んだりすぐに辞めたりする可能性は、妻が病気である限り絶対になくならない。

前の職場では、「今日で辞めさせてほしい」と深夜に突然電話で申し出たとき、「そんなこと言い出すのは社会人としてありえない」と言われた。

でも、それがありえない社会では、僕は働くことはできない。
妻を優先せず、明日の仕事に出ることを当たり前とする社会で、僕は生きていけない。

で、たぶんこの世の全てがそんな社会なわけではないと思う。というか、全てがそんな社会であってはいけないと思う。

というか、僕が必要以上に社会を恐れているということなんだとも思う。

だから、まあ、開き直ろうと思う。

妻はこれまで何度も、連絡せずに欠勤してそのまま辞めたことがある。

妻を見習おう。
僕は真面目すぎるのだ。
(でもやっぱり「連絡せずに」辞めることは僕にはできないと思う。)


妻はやっぱり、かなり元気になった。

今は仕事に行くストレスで調子が悪くなることは多いが、仕事に行っていながらこの程度の症状で済んでいることは、数ヶ月前を思い起こすと、驚きである。

やりたいと思って、やろうとして、実際にやることまでこぎつけた。
妻にとってこんな経験は久しぶりだ。

仕事が続くかは分からない。
やってみたはいいが、ツラすぎてもう辞めたいとしか思わなくなる可能性もあるかもしれない。

今、妻は「頑張って」いる。

昨日、頑張っている妻の背中をさすりながら、僕は「舞佳はえらいね」と言った。
舞佳(妻)は「えらくなくていい!」と言った。
本当にそうだなと思った。

……

どうなっても一緒にいるよ、と妻に伝えたい(伝えなくても分かっているかもしれないが)。

……

追記(2023.1.10)

「妻はこれまで何度も、連絡せずに欠勤してそのまま辞めたことがある。

妻を見習おう。
僕は真面目すぎるのだ。」

と書いた。
妻が不真面目であるかのような書き方になってしまったかもしれない。
妻は「不真面目ゆえに」連絡せず急に退職してしまうわけではない。
急に休む連絡も、あるいは、休みをもらいたいということを急ではない段階から伝えておくことも、おそらく「恐怖感」により、できない。
休むことによって職場に迷惑をかけ、それによって攻撃的な態度を相手から取られることを妻は恐れている。
そのような恐怖感から、キツくても働ける段階のうちに休みたい気持ちがある旨を伝えることはできず、働ける間は何も言わず働いてしまう。それゆえ、もう働くのは完全に無理!となったときに急に休むことしかできない。その時ももちろん職場に連絡するのは怖いので、連絡しないまま休む。連絡しないまま休めば、そんな迷惑をかけたのだからもう出勤できない(出勤したら攻撃的な態度を取られるかもしれない)となるわけだから、辞めることになる。

妻が連絡せずに急に仕事をやめるのは以上のような流れだ。
(今まで僕の聞いた限りでの僕の理解なので、少し違う・今は変わっている可能性はある。)

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