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【ガボール・マテ医学博士】繊細な性質をもつ人々はかつて人類のシャーマンであった ー 今や彼らは恥ずべき存在になってしまっている

この記事をご覧いただき、ありがとうございます。動画を翻訳をしたはろ/Halo🍀です。

ハウツーアカデミー主催オンライン講演イベント「依存症と自己破壊的行動への慈悲(コンパッション)のアプローチとは」 (ガボール・マテ医学博士とハンナ・マクインズ対談)2021年2月1日ライブ開催

オリジナル動画  Dr Gabor Maté (PART4)| "Sensitive people used to be our Shamans - now they are shamed"
How I Overcome My Own Addictions (PART4)(Q&Aセッション)
How To Academy Mindset 2021/06/19 公開(20分59秒)
https://howtoacademy.com/
【オリジナル動画(英語音声)で聴きたい方はこちらの「オリジナル動画」からどうぞ】

#ガボールマテ #トラウマ #依存 #ガボール・マテ
ガボール・マテ医学博士は、依存症、トラウマ、子どもの発達、ストレスと病気の関係などの専門家として、国際的に高い評価を得ている講演家です。主な著書に『Scattered Minds: Scattered Minds: A New Look at the Origins and Healing of Attention Deficit Disorder』、『When the Body Says No: The Cost of Hidden Stress』、『Hold on to Your Kids: Why Parents Need to Matter More Than Peers』『In the Realm of Hungry Ghosts: Close Encounters with Addiction』があります。この第2回目のHow To Academyでのご出演では、世代間のトラウマから意志の力、進化から現代文明まで、依存症に関する画期的な理論とそのすべてを解説しています。また、こちらの
第4部では、ライブ配信の視聴者から寄せられた依存症に関する質問に答え、「深い感受性」「解離」「タブー」「断薬」「回復とは自分の一部を再び見つけること」などを取り上げています。

世界で最も影響力のある人々を特集したビデオを毎週お届けするために、ぜひ、ハウツー・アカデミー(How To Academy)(https://www.youtube.com/@HowToAcademyMindset) (https://www.youtube.com/@HowToAcademyScience)
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How To Academy Mindset

ガボール・マテ医学博士による依存症の定義:

依存症は、一般的には薬物やいわゆる中毒が一般的によく知られていて、もちろんそれも含まれますが、しかし、薬物や中毒だけでなく、依存症のその語源はラテン語で、一種の「奴隷」を意味する言葉です。依存症とは私たちが奴隷になるような行動のことです。私の依存症の定義を聞いて、では依存症というのものがあるのかいう質問を受けることがありますが、 それは、良い奴隷制度はあるのかと聞くようなものです。 そんなものはありません。私の定義では、依存症は複雑なプロセスです。 しかし、それは私たち人間のどんな行動としても現れます。 人が一時的に喜びや安らぎを見いだし その結果、ネガティブな結果を被るような行動があれば、そして、その結果、否定的な結果を受けるのですが、否定的な結果にもかかわらず、それをあきらめることができない、拒否することができないのです。依存症の特徴は、快楽を求めること、それがいっときの救済にはなるが、長期的には害になること、あきらめられないこと、それが依存症なのです。ギャンブル、 自傷行為、 過食症、ワークホリック、 極度の貧困、 スポーツ、 ポルノ、 性的依存症 、ネットゲーム依存、ネット依存、スマホ依存など、そういったものも含まれます。

Dr Gabor Mate Dr Gabor Maté (PART1)|  “90% of people are addicts; 10% are lying to themselves”


繊細な人々はかつては人類のシャーマンであった ー 今や、彼らは恥ずべき存在になってしまっている


👩 (司会:ハンナ・マクインズ/Hannah MacInnes, Presenter, Podcaster and Host of How To Academy’s live programmes) ご質問ありがとうございます。すでに参加者の方々からたくさんの質問が寄せられており、ここからなるべく多く、ガボール・マテ医学博士に時間内でお答えいただきたいと思っているので、お一人お一人できるだけ簡潔に手短にご質問いただければと思います。

ガボール・マテ医学博士自身が依存症から回復した決め手となったプロセスとは?

Q1 👪 ありがとうございます、ハンナ、ありがとうございます、マテ医学博士。ガボール・マテ先生、先生ご自身がお答えいただける段階かどうかわかりませんが、ご自分も認められているご自身の依存症から回復されるために、先生ご自身はどのような方法を取ったのでしょうか。いわゆる(依存症から回復する)12ステップのプログラムを活用したのか、または、これだと思うことがあれば、教えてください。

A1.👨(ガボール・マテ医学博士)
ええと......12ステッププログラムのグループに一度か二度は参加したことがあります。ただ、私はきちんと継続的に通い続けることができなかったんです。方法ですか、そうですね、これと言って、ただこの方法ですというのはわからないです。
えっと、さてさて、ところで2年前の6月、私はロンドンにいました。ハウツーアカデミーを含む、大勢の人々に幾つもの講演をこなさなければならないことになっていました。妻も一緒でした。私の買い物依存症というのは、その何年も何年も前に治ってはいたのですが、仕事中毒(ワーカホリック)はどうにも、、、
その2年前、私はロンドンにいて、このような講演をいくつもこなし、私は自分のいつものように......そうだな、私はステージに登壇しているその場での直感的で明晰な思考をしている自分や、自己とのコミュニケーション能力の高い自分というのが好きではあるんです。しかし、ホテルの部屋に妻と戻ると、働き過ぎからイライラしていました。私は常に過剰なほど多くの仕事を引き受けていたんです。
そこで、妻は私に言ったのです、「あなた、聞いて。」
「あなたは、『身体が「ノー」と言うとき』という本を書いて出版したけれど、

それよりも、「妻がノーと言う時」という本を書いたらいいんじゃない!
私は、もうこれ以上我慢できないわ。あなたのご機嫌のために、私の休暇をこんな風に台無しにされるのには我慢できない、あなた仕事中毒だから。」そう妻は言ったんです。
ですので(依存症から立ち直ったというのには一部)この外発的動機(インセンティブ)も関係しています。この49年間の結婚生活の相手、この相手との関係を尊重したい、その関係の中にとどまりたいという。49年前に結婚して、そこからは、えー、実際にはその過程というのは、ずっと本当に、自分のエゴから離れること、自分自身に対する認識を深める過程の連続であったと思います。
カウンセリング、深い読み(Deep Reading)、内省、ヨガ、自分自身の身体を肉体面、栄養面、全ての側面からケアすること・・・今まで私が書いた本それぞれの本は、全て自分自身が得た気づきから書いています。
ですので、こうしたことに没頭すればするほど、自分自身の中で、よりその過程というのが明確になったわけです。

皆さんそれぞれにとって、それにはこれ、この方法だというような簡単な答えはありません。
これもお話ししておきますが、幻覚剤の一種を使った、私には非常に効果的だった伝統的なヒーリング方法も経験しました。それも役立ったと思います。ですので、どれかこれという方法を一つ、これが鍵ですよと挙げることはできません。そうした全ての経験がその方法だと言えるからです。
根本的に重要なことは、そうした経験すべてに、私がそれぞれに深いコミットメントを持って臨んだこと、それは自分自身で意識していることではないかと思っています。
時には、自分が泣き叫んで蹴っ飛ばすような行為に身を投じなければならないことすらあったけれど、それでも、自分が変容すること、そして、自己を認識することに深くコミットしてきました。

👩(司会:ハンナ)ちょっとだけここで私から補足させていただくと、その方法の一つには、私共のハウツーアカデミープログラムで、来る2022年3月24日に登壇されるゲスト、ペルーのTemple of the Way of Light もそのお一つだったのではないでしょうか。

👨 そうなんですね、The Temple of the Way of Lightは、南米ペルーの(シャーマンの秘密の儀式)アヤワスカ体験によるヒーリングセンターで、その創始者マシュー・ウォーターストン(Matthew Watherston)は、私の良き友人であり、私も2年前にそこでも深い経験しました。その時のことは、また別の文脈の機会でお話ししたいと思います。
実は、そのThe Temple of the Way of Lightにいったのは、先ほど話に出したたロンドンの直後に行ったのです。そこでシャーマンにも言われました。「同志よ、今の状態では、誰もあなたにはついてこないよ。あなたはあまりにもストレスが多いから、自分自身に立ち返ってどうにかしたほうがよい」と。現実、それが私に起きたことです。伝統的なヒーラーというのは、私のことなんて何一つ知らないのに、その場で、すぐに本のページをめくるように、私のことを読むことができるんです。ゲストにマシューが来た時に、彼さえよければ、聞いてくださっても構いませんよ。

医師・医学部教授からの質問:いつの間にか起きてしまう自身の「解離」をどう克服したら良いか

Q2 👪(質問者)
マテ先生、ありがとうございます。私は医学博士であり、日々、医師として仕事をしていますが、マテ先生のこれまでの研究は私に多大なる影響を与えています。私も医学部教授として働いているので、医学生たちに先生の動画や本を勧めているところです。
ただ私の質問は、私個人に関することです。私は、膨大な(心理的)解離(意識の連続性や統合性が何らかの形で絶たれてしまう状態)と格闘しています。おそらくなのですが、無意識のうちに脳で産生される天然の「内因性」オピオイド中毒になってしまったのかもしれないのです。自己から切り離されたように感じる感覚が強くて、幻覚剤を使うこともあるのですが、まだ、解離が多くあり、常に自己と結びついている感覚が得られず、悩んでいる自分がいます。
この解離という状況を打ち破る方法について、何かお考えがあれば、教えてください。

A2.👨(ガボール・マテ医学博士)
そうですね......まず、最初の質問として、人はなぜ(心理的に)解離するのだろうかということです。ところで、あなたが解離しているわけではないんです。あなたの脳が自動的に解離を起こしているのです。
(質問者に)ミリアム、聞きたいのですが、あなたが自分で、突然、今から解離しようとそう決めて、そうなっているのですか。

👪 全然違います。それがほんとに自動的にそうなってしまうからこそ非常に悩んでいるんです。

👨(ガボール・マテ医学博士)
(質問者に対して)OK、それでは、特に自分自身のこととしてではなく、人間一般で考えてみてください。なぜ人間は、人間の(身体)生命組織は、そんなことをするんでしょうか。

👪 
うん、そうですね、自分が目の前に直面していること何かに反応して、困惑、圧倒されて、対処することができないからではないでしょうか。

👨(ガボール・マテ医学博士)
その通りです。そして、その起源は常に子供時代にあります。脳が発達している最中に。私が自分自身がADHDだと診断された時もそうでした。私の、周囲に一才関心を示さなくなる(Tuning out)という兆候は、穏やかな形態を取った、いわば、解離だったんです。幼児期の頃の私が対処できなかった状況に対する脳の反応でした。つまり、脳が発育中に、脳が圧倒的なストレスから自己防衛する方法として、脳が周囲に一切を遮断するよう、すべての回路が構築されるのです。その結果、周囲への一切の遮断(Tuning out)と解離というのは、脳内に実際に構築され組み込まれてしまい、大人になった後は、ちょっとしたことでそれらを自動的に引き起こすことになってしまうわけです。何をどうしたら良いかということについては、私は、ハウツーアカデミーに私の個人的なメールアドレスをあなたに共有することを許可するので、ご連絡をください。これは、あなたが医師であるということを踏まえて、医師であるプロとしての礼儀であり、今、この問いを共に掘り下げる時間はとてもないけれど、あなたが私の本をあなたの生徒たちに推薦してくれたお礼としても、私にメールを書いてくだされば、あなたの回復のために何ができるかを考えてお返事したいと思います。それでいいですか。

👪 光栄です。ありがとうございました。心から感謝しています。
👨(ガボール・マテ医学博士)どういたしまして。ありがとう。

👩 (司会:ハンナ)再び強調させてください。失礼に聞こえるかもしれませんが、質問される際は限られた時間の中で、できるだけたくさんの方の質問に先生にお答えいただけるよう、手短にお願いしたいと思います。

繊細すぎる人々がトラウマにとらわれないようにするにはどうしたらよいか:繊細な人々はかつては人類のシャーマンであった

Q3 👪 (質問者)私がお聞きしたいと思ったのは、えー、私は、トラウマを癒す過程の中でも、家族の中でも、特に自分の持つ深い繊細さを認識するようになり、自分らしくある感覚 ・本来感 (オーセンティシティ/Authencity)に興味を持つようになったのですが、先生は、人が非常に繊細な場合、その人がトラウマにならないようにするためにどういったことを勧めますか。

A3👨(ガボール・マテ医学博士)
うーん、あなたのご質問は、まるで、人種差別的な社会で、ある人はとても濃い黒い肌をしている時に、そこでトラウマをどう防ぎますかと聞くようなものです。なぜなら、この社会では脆弱性を尊重しないからです。実際、脆弱性や繊細さはある意味、タブーというか、敬遠されています。何度に渡り、人は弱音を吐くなと言われたことでしょう。何度に渡り、そんなに神経質になるなと言われたことでしょう。何百回となく言われたことかと思います。
一方、色の話ですが、(質問者へ)あなたの髪はブルネットですか、それとも金髪ですか?人々があなたに、そこまで緑色の目でなくてもいいのにと言われたらどうでしょう。それは、単なるあなたの個性でしょう。
実際、誰も、あなたの緑色の目になってはいけないって言ったことはないかもしれませんよね。
その一方、繊細であってはいけない、そんなに神経質になるなって人は言うわけですよね。誰かが緑の目をしているのと同じくらい、その人の個性に過ぎないのに。
だからこそ、この社会では、繊細な人々(繊細さん)は傷つくのです。

では、それをどう防いだら良いか。
親はその繊細な資質と意識を認識し、教師が感性を尊重し、実際に繊細さを大切にすることです。かつての社会では、敏感な人はシャーマンでありヒーラーとして存在していたのです。
現代の私たちのいる社会では、そういう人々は「繊細になりすぎるな」「そんな弱音を吐かない」「(新入りだからといって)おろおろして失敗するな」と言われ続けることになってしまいます。だから、トラウマをどう防げるかと言っても、あなた一人個人として、胎児として、乳児として、また、幼い子供だったら、それはできないんです。トラウマは癒すことはできても、それを未然に防ぐということは、ほとんど不可能なのです。

絶縁状態にあるアルコール依存症の既往歴がある母親との関係について


👩(司会:ハンナ)ありがとうございます。顔を出されずに匿名で聞いておきたいことを書き残してくださっているので、私が代わりに大切な質問を読みます。

Q4👪(質問者・代読)
質問者の母親は何年もアルコール依存症だったそうで、そのために家族から絶縁されました。彼女はその後、何年も酒を断っているが、それでも、家族の縁は切られたままで、彼女を話題にすることも、まだ家族のタブーになっています。先生のお話や助言されているテーマにとても関連があるので、お聞きしたいのですが、もしそのタブーを克服するために、何かお考えがあれば、聞かせてください。

A4👨(ガボール・マテ医学博士)
その質問者、ご家族の置かれた状況について、もっと詳しく知らないと、きちんとした答えができないだろうと思います。そのタブーを克服することができるかもしれないし、できないかもしれません。(アルコール依存症というのが)そのご家族全体に深く根づいて、どうしても受け入れられないという偏見になっている可能性があるからです。その母親・彼女自身の心の旅が、彼ら家族それぞれにとってとても苦痛であったからです。家族にとって、なぜ起きているかわからないあまりにも辛いことを多く思い出させる、すなわち、家族それぞれの機能不全になるのですが。その母親の依存症、アルコール依存症は、彼女一人だけで顕現したものではないのです。その母親がアルコール依存症になったというのは警告として表れただけで、それは、何世代にも渡る、家族全体に何らかの非がある、機能不全に陥っていることを示しているのですから。だから、その母親を追放した家族は、そういう自分たちの機能不全を受け入れ、向き合う準備ができているかどうか、できていないかもしれません。

そのように説明した上で、仮に家族がどうにか心を開いた状態になっていると仮定して、もし依存症にかかった本人である母親がその気になり、さらに縁を切った家族を非難することをしなければ、家族に会いに行くことができきるでしょう。もしその母親が、本心から正真正銘心の底からそうすることができて、その上で
「私の行動というのは、あなたたちにとってとても辛いもので、あなたたちは私をとても愛してくれているからこそ、それに耐えられなかった、(私というより)私がアルコール依存症になったことから起こした行動に耐えられなかった、それをほんとうに理解することができました。けれど、それでも、私はあなたたちに会いたい、あなたたちに再会できることを心から望んでいます。」と、もしも、その母(彼女)がそう言える立場に今あるとするのなら、それは一つのアプローチとしてはあると思います。その場合でも、その母親の言葉が実際に受け取ってもらえるのか、受け取ってもらえないかどうかは、彼女の力が及ぶところではありません。

新たな形の依存症・中毒を喚起している依存型モデルとも言える現代のビジネスモデル - ハイテク、製薬、メディア、宗教-に囲まれている日常の中で私たちができることは?


Q5 👪 (質問者)はい、こんにちは......あの比較的簡単な質問だと思うのですが、です。私がお聞きしてみたいのは、どのように依存症とそれにまつわるマテ先生の様々な発見と、ハイテク、製薬、メディア、宗教といった現代社会に最適化されたビジネスモデルとの折り合いをつけたらよいのかという点です。それらの最適なビジネスモデルを変えることができないとしたら、そうしたビジネスモデルが、依存症モデルであるようだという事実、もしそうしたビジネスが人々を中毒にするために多くの研究をしているとしたら、それはあなたが発見してきたことに効果的に対抗していることになります。これら、すべての新しい型の中毒・依存症と呼べるものに対して、いわば"予防接種を受けた"ような状態でいられる、最善の方法は何だと思いますか?

A5👨(ガボール・マテ医学博士)
ご指摘の通りですね。その通りです。
確かに、ビジネスの世界では、ワーカホリックの人達は、それだけ高い報酬を得ているようですよね。
携帯電話会社も、食品メーカーも、どうやったら脳の依存を引き起こす部位にアクセスできるか、それは、子供達の脳も含めて、アクセスできるかを研究しています。そうした企業は、人々が依存・中毒になることを通して、利益を得ることに躍起になっています。それはすべて真実です。
ですから、その予防や対処をすることは、それとは違う様々な次元で行なっていかなければならないです。
例えば、親であれば、子供がそういった依存・中毒に向かわないよう、内なる空しさを経験させないようにしなければならない。私の他の本でも、大人になってからについては、書かれています。私が先ほど言ったことに戻ると、私たちにできることはすべてではありませんが、個人的に私たちが自分のためにできる最善のことは、できるだけ自覚することです。私の中に何らかの空虚さがあって、ネットに向かい何度も何度もYouTubeの同じものを見たり、強制的にそういうことをさせられているのではないか、そうなったら、自分の中の空虚さに対処しなければならないのではありませんか。ですから、その行動について心配するより、その空虚の中にあるものの源は何なのか、どのようにそれを経験するのか、どのように私はそうなるのか、自分の中にあるその空虚さに、意識的に対処することをお勧めします。その行動を心配するよりも、自分の中の空虚さに向き合わなければならないのです。
というのは、きっと多分、ありきたりな答えになってしまうんでしょうけれど、うーん、意識的に認知するということが大切で、それは日々の積み重ねが必要です。私の場合だと、一日二回ヨガをしないときは、意識する程度が低くなってしまう。それは、私のこだわりであり、あなたにそうするべきだと言っているわけではなく、自分のためにそうしているのですが、ただ、そうやって意識し続けることは日々の積み重ねになります。

👩(司会:ハンナ)ありがとうございます。時間的に、質問は残り2つ、3つほどで受付させていただきます。

経済文明社会において高い技術力が達成されればされるだけ人間は本来の自分自身から切り離されるようになった:そこで個人はよりよい環境への変化のために何ができるのか


Q6 👪 私から、実は2つのことをお聞きしたいのですが、どちらからお答えいただくか順番は問いません。先生は、人類の長い歴史の中で、かつては、人間を取り巻く環境がどれだけ健全であったかについてお話されましたが、人類の文明において、どの時点から、私たち人間は、そのよりよい環境を失ったのだとお考えですか。
それと、その辺りの話題について、簡単にフォローしていただきたいこととして、よく言われる「自分こそが世の中で見たい変化になるべきだ」という名言として扱われて誤解されやすい言い回しについて、世界の重荷を背負うことなくより良い環境を作るために、個人として何ができるでしょうか?

A6👨(ガボール・マテ医学博士)
興味深いのは、あなたのご質問そのどちらも、それらの質問には、それぞれすでにご自分でその答えを含んでいるということです。
あなたの質問では、文明においてどの地点で、私たちがその人間にとってよりよい環境を失ったかという質問ですが、まさに、文明が生まれた時点です。私たち人類が、小さな狩猟採集民の集団から、農耕と文明の時代へ進化し始めた、それと同時に、私たちはそのようなものを失い始めたのです。
そして、そうした喪失というのは、徐々にではあるが、今現在も容赦なく、着実に進んでいるのです。

だから、私達が経済的な組織社会にとってより高度な技術力を手にする段階を達成すればするほど、本来の自分自身から、それだけ、さらに分離・切り離されるようになったということです。だからそれが答えになります。
今問われているのは、私たちが、科学技術の恩恵と知的認識などを手放すことなく、再び文明の価値観を再認識して受け入れることができるかということです。私は、それは可能ではあるけれど、本当に多くの気づきが必要であり、大変だとは思います。

個人として何ができるでしょうか?という質問についても、あなたはまたここで、ご自分の質問に答えていることになります。
ご自分が望む変化のあり方そのものになれ、ということ、どこで、それを発揮するかは、人それぞれあなたの傾向やその人がいるプラットフォーム次第です。ですから、あなたがどんなプラットフォームを持っていようと、それが家族、コミュニティであろうと、大家族のような政治的集団であろうと、もっと大きな括りで社会における職業であろうと、あなたの気づき・自覚というのを顕在化するのです。そして、どんなレベルであれ、聞くという準備ができている人たちにそれを教え、結果に執着しないようにしましょう。

もしも仮に私が、私の同僚である医療関係者皆、私が話していることを受け入れるべきであると結果に執着していたとしたら・・・
信じられないかもしれないけれど、過去には、正直言って、明白なことだけ口にすればよいと思っていたこともあったんです。それで、「その通りですね」「それは違いますね」って言うだけでよいと思っていたこともありました。
でも、ずいぶん前に、そうした種類の執着は手放しました。そして、みなさん誰もがそういう執着を手放すべきだと思います。最終的な結果というのが大切なのではなく、その過程が大切なのだと思います。

👩(司会:ハンナ)それでは、....本当にたくさんの方々が参加してくださっているので、私はできるだけたくさんご質問を受けつけたいですし、皆さんの写っている画面を素早く見て回っていますね、時間の関係上、最後にもう1問、質問をお受けしたいです。

米国では依存症の究極の目標は禁欲・禁酒とされているがマテ先生のお考えは?

Q7 👪
改めて、お二人にはありがとうございます。
私は、依存症の疾病モデルが主流のアメリカにいます。そして、私自身、薬物とアルコール依存症から回復に努めてきましたし、他の依存症もあります。先生は、依存症に関して、禁欲と節制についてどうお考えですか?
この国では、禁欲は本当に究極の目標だと思われているようなのですが、
先生の見解を聞かせていただければありがたいです。

Q7👨(ガボール・マテ医学博士)
オーケー、またまた深い質問で恐縮ですが、取り急ぎ......。
禁欲・禁酒というのは合理的な目標ではありますが、合法上ということではありません。目標は、「ソーバー(しらふ)の状態を続けること」です。
ソーバー(しらふ)の状態でなくとも、禁欲・禁酒というのは可能です。
禁欲・禁酒していることは、単にあなたがその(依存になっている)ことをしない、お酒だったらお酒を飲まないことそのことを指します。それは良いことではあります。ですが、それはソバリティ(ソーバーの状態を続けること)ではありません。ソバリティとは、実は完全な自覚(アウェアネス)と、本来の自分自身と向き合いつながっていることです。それが究極の目標です。それがまず第一。
第ニに、禁欲・禁酒は合理的な目標ですが、それは誰にとっても即座に目指すべき目標にできるわけではありません。
バンクーバーのダウンタウン東側には、北米初の監視下でのドラッグ注射施設があります。北米初の監視下注射施設です。私は医師としてそこで働いていました。清潔な注射針と水が提供され、薬物などの過剰摂取により運び込まれた場合は蘇生処置が行われます。ヨーロッパでも、英国でも同様な処置行われていますが、これは断薬ではありません。禁欲ではなく、害を減らすものです。一部の人々がしていたように、路地裏の水たまりの水を注射に使うことがなくなり、互いにHIVを感染させることもなくなります。それは良いことなのか悪いことなのかでいえば、それは良いことです。禁欲は確かに合理的な目標ではありますが、それを人々全員に強要すべき目標ではないことがあります。その人それぞれがどういうところにいるのかそれを見て、それに合わせるのです。それが大事なポイントです。
そして最後にもう一つ言わせてもらうと、あなたは「回復(リカバリー)」とおっしゃった。これは素晴らしい言葉です、何かをリカバーする(回復する)とは、どういう意味でしょうか。
リカバーとは、再びそれを見つけるという意味であり、再び見つけたものは、決して破壊されていたわけでなく、そこにあったものをただ見失ってしまっただけで、(医師である)私が仮に、あなたに、あるいは誰かにあなたは何を回復/リカバーしたのですかと尋ねたら、「自分自身を回復しました」と答えるように、その自己はいつもあなたのためにそこにあり、(再び)見出すことができるのです。そして誰しもが助けを得れば、それをすることができるのです。しかし、それには多くの忍耐と理解と慈悲が必要になります。これは自分自身に対する忍耐、理解、慈悲も重要です。

👩(司会:ハンナ)
先生、一種、光というか希望がみえる、ポジティブというか、楽観的なまとめの言葉をいただいたところで、Q&Aセッションを終えていただきました。これほど多くの方にお集まりいただき、本当にありがとうございました。これほど多くの方に参加していただきお会いできるというのは、なかなか稀な機会です。ガボール・マテ先生、先生の知恵と洞察力をお授けいただき、本当にありがとうございました。

先生に、お話を伺いたいことはもっともっとあり、長い時間続けたいところですがまたご登場いただけることを願っています。おそらくそのときには、私たち全員が(パンデミック以前のように)同じ会場に一緒にいることができるようになるでしょう。

👨(ガボール・マテ医学博士)そうですね、ありがとうございます。
ではまたお会いしましょう。


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