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#小説
さよなら炒飯!一皿目
その店だけ時給が飛びぬけて高かった。
二十八歳で職を失い、とりあえず金を稼がなくてはならない。口座にある数字をかきあつめても家賃二ヶ月分。ファミレスでメニューを選ぶのに躊躇する。実家はそこまで太くない。
転職でステップアップを目指すところだが、正社員ってやつがしんどい。責任、決断、上司、後輩、顧客。そんなもの考えたくない。
バイトを探す。実入りがよい肉体労働を考えたがキツイ事はしたくない。飲食店
花畑お悩み相談所 プロローグ
プロローグ
寝る前にスマホを見ないのは、良い眠りのためのお約束だそうだ。
そう言われましても。若い頃からずっと夜型で、寝室へ向かう前に最後のメールチェックをしてしまう。退職した今でも、その習慣は変わらない。富原律子は老眼鏡をかけると、スマホの画面をタップする。
深夜のリビングに、かすかな金属音が届く。家の前の空き地に、マンション建設が始まっていて、今夜は突貫で電気工事をすると知らされていた
白雪美香は彼氏ができない!_第1話
プロローグ
「はぁ、はぁ、はぁっ」
白雪美香は、ぽっちゃりとした白く柔らかな肉体を揺らしながら、福岡市のセントラルパークと言われる大濠公園を走っている。
5月中旬の福岡は夏日になることもあり、今日の気温は25度を超えていた。気温が上がることは白雪美香もわかっていたが、ここまで暑くなるとは予想だにしていなかった。もう夏じゃないか、と白雪美香の荒い呼吸の中にため息が混じる。今更ながら厚手の服
短編小説 | バースデーバルーン | 創作大賞2024
妹の頭が徐々に大きくなっていく。病気じゃない。
わかっているんだ。家族の誰もが。だけど何も言えやしない。
傷ついても、恥ずかしくても、怒っても、どうしたって、妹の頭は大きくなって、その成長を止めることは出来ない。
(一)
妹は僕の八つ下で、ぼくにとっては目に入れても痛くない存在だった。だけど、そんな例えですら口にするのも憚られるくらい、妹の頭は大きくなっていた。
その始まりはた
「雨上がりのアルテミア・愚痴外来診療録」 第1話 VIPな客
あらすじ どこかの町外れに佇む寂れた診療所、通称「愚痴外来」。宣伝はおろか、看板すらぼろぼろなのに、口コミを頼ってなぜかVIPがやってくる。政治家、芸能人、スポーツ選手、社会に認められた強い存在のはずなのに、みなどこか人には言えない心の闇を抱えている。
所長の「心山(むねやま)」は一見ぱっとせず、空気の読まない発言で依頼者を怒らせる社会不適合者だが、解析心理学という手法を用いて、本人ですら気づか