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#小説
夢と鰻とオムライス 第1話
◇
飛んできたのは五百円玉だった。
よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。
鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。
「いってぇ……」
俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。
「なにすんだよ!」
渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた
花畑お悩み相談所 プロローグ
プロローグ
寝る前にスマホを見ないのは、良い眠りのためのお約束だそうだ。
そう言われましても。若い頃からずっと夜型で、寝室へ向かう前に最後のメールチェックをしてしまう。退職した今でも、その習慣は変わらない。富原律子は老眼鏡をかけると、スマホの画面をタップする。
深夜のリビングに、かすかな金属音が届く。家の前の空き地に、マンション建設が始まっていて、今夜は突貫で電気工事をすると知らされていた
短編小説 | バースデーバルーン | 創作大賞2024
妹の頭が徐々に大きくなっていく。病気じゃない。
わかっているんだ。家族の誰もが。だけど何も言えやしない。
傷ついても、恥ずかしくても、怒っても、どうしたって、妹の頭は大きくなって、その成長を止めることは出来ない。
(一)
妹は僕の八つ下で、ぼくにとっては目に入れても痛くない存在だった。だけど、そんな例えですら口にするのも憚られるくらい、妹の頭は大きくなっていた。
その始まりはた
【あらすじ‐#1】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】
【創作大賞2024参加作品】#恋愛小説部門
Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民2部構成。全13章、全52話(1話2000文字前後)、12万文字。
連載期間 開始:5月23日 完結:7月13日を予定。
【本編連載】では
・web小説にあわせ、段落や改行を多くとっています
・ビジュアルあり
※【まとめ読み記事】は一般小説に合わせています。内容は一緒ですが
段落や改行は通常小説
「雨上がりのアルテミア・愚痴外来診療録」 第1話 VIPな客
あらすじ どこかの町外れに佇む寂れた診療所、通称「愚痴外来」。宣伝はおろか、看板すらぼろぼろなのに、口コミを頼ってなぜかVIPがやってくる。政治家、芸能人、スポーツ選手、社会に認められた強い存在のはずなのに、みなどこか人には言えない心の闇を抱えている。
所長の「心山(むねやま)」は一見ぱっとせず、空気の読まない発言で依頼者を怒らせる社会不適合者だが、解析心理学という手法を用いて、本人ですら気づか