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長編小説「ひだまり~追憶の章~」Vol.3-⑤
~真夏のスキーヤー@祇園祭を過ぎた京都~
Vol.3-⑤
1部のステージの後、メンバー達は各々知人のテーブルに紛れ込んで来ていた。
化粧室へと立ち上がった時、ひときわカン高い女性達の笑い声が響いた。見渡すと、中央最後尾ミキシング・ルームの前のテーブルで、女性ばかりを笑わせているナカサンの姿があった。
相変わらず、軽いヤツ。でも憎めないな。
私は苦笑しテーブルを離れた。生憎化粧室は混
長編小説「ひだまり~追憶の章~」Vol.3-③
~真夏のスキーヤー@祇園祭を過ぎた京都~
Vol.3-③
イクタ・ジョージのバンドに居た頃の、ナカサンとの最初で最後の握手を、思い出す。
2年前、活動休止前年のツアー・ステージから、ジョージは『一旦バンドを白紙に戻す』と告げた。『その上で、また一緒に演ろうと互いに思えば、残るメンバーも居るだろう』と。
訳もなく私は、ナカサンは居なくなると確信していた。とても気さくで、旅先のホテルのロ
長編小説「ひだまり~追憶の章~」 Vol.2-④
~雪解けの春@白馬八方尾根~
Vol.2-④
半年分の荷物と、スキーの板やブーツを宅配便で送り出す手配をして、私は厨房へ入って行く。宿泊客も他の居候も居ないので、家族の分だけの遅い朝食を作っている女将に、私は声をかける。
「女将さん。ほな、そろそろ帰ります」
エプロンで両手を拭いながら、女将は振り返る。
「ぁ、もうそんな時間❓」
「ええ。名古屋廻りでゆっくり帰ります」
「それじゃあ、岳彦
長編小説「ひだまり~追憶の章~」Vol.2‐①
Vol.2-①
コロコロ、、、と鈴を転がすようなデジタル・アラームの音に、気づいた。天井を見つめるのを止め、ゆっくりと上体を起こし、四つんばいに成って這って行き、わざと布団の足元に置いてあるアラーム音を、鎮めた。
低血圧で寒がりな私は、冬の間布団から抜け出る事を億劫がる自分を、そうやって無理やり起こしていた。
が、最近目覚めが良い。春になったせいだろうか。ゴールデンウィークも過ぎて、朝晩
長編小説「ひだまり~追憶の章~」
プロローグーーー雪解けの春@白馬八方尾根
Vol.1
窓の外の白樺が、口笛みたいに啼いている。春風に身を任せ、ハスキーに。春一番はもう、2週間も前に通り過ぎて行ったというのに。
心地好い陽射しが、この部屋の床にも届いている。
シーズンOFF間近のスキー場。リフトが止まり、ゲレンデの麓のテニスコートがすっかり雪解けしてしまうと、そろそろここも潮時かな、と住み込みのスキーヤーやボーダー達は
歴史小説「Two of Us」第4章J‐28 (The Epilogue)
~細川忠興&ガラシャ珠子夫妻の生涯~
第4章 On A ”SABO Tea Room” About Some Last Scenes
J‐28
細川ガラシャ珠子は、400年以上も大嘘をつき通しました。忠興もまた、同じく最後の最後、辞世の句で嘘をついたのです。
けれどもその二つの辞世の句は、二人にとっては真実そのものだったのです。二人にだけ分かり合えるメッセージは、魂の真実そのもの。第
歴史小説「Two of Us」第4章J‐27
~細川忠興&ガラシャ珠子夫妻の生涯~
第4章 On A ”SABO Tea Room” About Some Last Scenes
J‐27
1642年ヨーロッパでは、イングランド・アイルランド・スコットランドでの、「ピューリタン革命」が勃発している。いわゆる市民大衆の宗教信仰の自由や弾圧への内乱としての革命である。その後、大英帝国は飛躍的に世界進出を果たして行く。武闘の争いでなく、経