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アウトソーシング利活用とIT部門の位置づけ考察(8)~アウトソーシング企業の形態と適用考察 ~

前回(第41回)は、「6.アウトソーシングの形態と取り組みパターン」ということで、アウトソーシング利活用形態について、IT部門の方向性に基づいた委託範囲の取り組みパターンについて考察しました。
今回(第42回)は、決定した委託範囲に基づきアウトソーシング先(委託先企業)を選択する際の取り組み形態と、その適用にあたって考えておくべきポイントについて考察します。


7.アウトソーシング企業の形態

7.1 アウトソーシング企業の選択パターン

委託内容による、委託先企業の選択範囲(パターン)について以下に示します。
(1) アウトソーシングセンター機能のみの選択
  ・システム運用関連全般での委託をすること。
(2)(1)に加え、システム開発機能までの選択
  ・開発からメンテナンスまででの委託をすること。
(3)(2)に加え、上流工程(含むコンサル)までの選択
  ・コンサルティング(企画、構想)機能を含む委託をすること。

7.2 選択範囲による、アウトソーシング企業の位置づけ

アウトソーシング選択企業との関係性(位置づけ)について、下記に示します。(委託契約内容)

(1)アウトソーシングセンター(運用機能のみ)での選択

図1:システム運用委託契約に基づく取り組み形態


(2)(1)の機能に加え、システム開発機能までの選択

図2:運用委託・システム開発委託契約に基づく取り組み形態

※一般的に行われる「開発プロジェクト毎の契約」ではなく、自社で発生するプロジェクト全てについて「包括的な契約」での取り組みとする。
(個別システムやプロジェクト毎ではなく、システム構築組織そのものを委託している形態にすること)
※フィールドSEとは、顧客(現場部門やユーザなど)に直接対応する機能を持った人材を言う。

(3)(2)に加え、コンサルティング業務(上流工程)までの選択

図3:上流工程からの委託契約に基づく取り組み形態

※コンサルティング機能に相当する委託先は、システム運用、フィールドSEとの委託先とは異なっても良いが、委託するコンサルティング人材は、自社内に常駐してもらうことが望ましい。

8.アウトソーシング適用考察(留意事項)

7.のアウトソーシング形態から見た自社のプロパー要員の在り方について考察するとともに、その形態のメリット、デメリットについて以下に示します。

8.1 システム運用機能のアウトソーシング化

 この場合、マシン運用以外の機能の全て(ビジネス企画からシステム企画、計画の立案、そのシステム開発、保守の対応、マネジメントしえる人材)を、社内に整備することが必須であるため、それを実現する取り組みへの「投資」が必要となります。 (必要な人材の確保が必須)

【メリット】
・ 自社の『タイミング』で、企画、開発を行うことができる。
(小回り性の確保)
・自社内にシステム構築力、ノウハウの保持を可能とする。
(技術革新への適用力向上性の確保)
・ 社内対応力の強化を図ることができる。
(バックログの軽減、ノウハウの蓄積に期待)

【デメリット】
・自社人件費の上昇対策が必要となる。(組織の肥大化懸念)
・採用難による要員採用コスト上昇が想定される。(必要な人材確保努力)

8.2 システム開発機能までのアウトソーシング化

この場合、アウトソーシング委託先企業との連携を強化し、委託企業先のシステム開発マネジメント要員(PM)、システム技術要員の技術力はもちろん、信頼性の確保(保証)について合意しえることが重要となるでしょう。
 
さらに、アウトソーシング先企業における自社業務ノウハウの理解を高めるため、自社システム部門や現場部門の既存要員について、移籍を含めた強化施策を検討することが望ましいと考えます。(委託先企業との協業(関係会社化、子会社化も検討))
 
これにより、自社要員の役割を「システム企画・計画工程以上」の上流工程機能に特化することに注力することが重要となります。

【メリット】
・自社人件費(固定費)の軽減が図れる。
(システム企画より上流工程人材に集約できる)
・技術者の採用難、キャリアパス制度の整備などのコストから解放される。
・システム開発コストの明確化が図れる。
・専門家集団の活用、集約による技術対応力の向上が期待できる。

【デメリット】
・外部委託費が上昇する。(社内人件費、支払コストとの比較要)
・小回り対応への懸念が残る。
・「アウトソーシング先は別会社」という「壁」に対する回避対策が求められる。(専属化ができないと、タイムリーな対応に課題)
・お任せ意識の芽生えが懸念される。(自社の牽制機能が弱くなる可能性)

【採択時の注意点】
※外部に委託するということから、今まで以上の開発見積もり根拠の明確化が必要です。(標準開発工数、生産性に対する「合意基準」作り)
※自社要員のスキル変革が求められます。(企画、構想力は基より、マネジメント力の強化、向上(言いなりにならないために))
※アウトソーシング先への移籍の有無に限らず、自社システム部門の機能構成を変革し、要員構成、役割を見直すことは必須です。

8.3 コンサルティング機能までのアウトソーシング化

 ここで言うコンサルティング機能とは「システム企画、構想立案」を軸としたものであり、自社要員を、より経営が期待する「ビジネス企画、構想立案ノウハウに特化する」、所謂「DXを実現」する部隊への変革を目指す取り組みです。
この場合も、8.2で提示したように、自社内要員(業務ノウハウ所持者)を中心に、委託先企業への移籍を考慮し、システム部門の再編は必須となるでしょう。特に、本形態の場合は、委託先企業との協調関係を強固にする必要性があるため、「子会社化か共同会社化」を検討することがより重要だと考えます。
さらに、自社としてビジネスコンサルティングノウハウの獲得のための取り組みが、必要になると考えられます。

【メリット】
・自社人件費の軽減が図れる。
(ビジネス企画人材に集約することが可能になる)
・技術者の採用難、キャリアパス制度の整備などのコストから解放される。
・業務、システム企画、構想力の向上が期待できる。
(本業以外のキャリアパス考慮からの解放)
・専門家集団の活用、集約による技術対応力の向上が図れる。

【デメリット】
・外部委託費が大幅に上昇する。(社内人件費、コストとの比較要)
・委託先を専属化できないと、タイムリーな対応に課題を残すことになる。 
・組織の壁に対する回避対策が求められる。
(子会社化としても、意識しておく必要あり)
・お任せ意識の芽生えが、8.2以上に懸念される。
(自社の牽制機能が弱くなる可能性)

8.4 その他 留意事項

 いずれのパターンを実施するにしても、以下の点は基本的な事項として押さえておく必要があると考えます。
 
■それぞれでの「役割、位置づけ」を明確化すること
・例えば同じ「SEという職種」であっても、自社と委託先において並列(同じ役割、機能)での存在では意味がないので、それぞれの位置づけをハッキリさせ、その責任範囲を明確化し、対応する必要性があります。
 
■契約条項、評価条項、運用条項の具体化、明確化を行うこと
・出来るところから順次確定し、実施することとします。
 
■委託先企業との関係性を、曖昧にしないことが重要と考えます。
・責任ルートを明確化すること。
・窓口の一本化を図ること。

8.5 アウトソーシングコスト項目考察

 アウトソーシング(外部委託先を含む)する際に、考えておくべき「掛かるコスト」について、以下に示します。

【留意事項】
■マシン費用は、その所有権をどちらが保持しているかで異なります。
・アウトソーシング会社の所有であっても、「自社専用機」かどうかでも異なります。
・自社所有または専用機運用の場合は、「固定費扱い」が基本になるでしょう。
・共用利用の場合は、「システム規模やデータ取扱量」などによる「従量制」が基本となるでしょう。
 
■場所(設置)、光熱費関係、通信費関係も、マシン費用と同じ考え方となると考えます。オペレータ要員についても同様となるでしょう。
 
■何れにしても、「コストの透明性」を如何に担保するかがキーとなると考えます。
・出来るだけ細分化し、始めからグロスでの検討はしないことが肝要と思います。(「SLA」の明示)
 
以上、アウトソーシング先(委託先企業)を選択する際の取り組み形態と、その適用にあたって考えておくべき観点について考察しました。ここでもやはり、IT部門の在り方をベースに検討し、コストと見合う形態を模索することが必要であると言えます。アウトソーシングの採用を考えられる際、試算の参考にして頂ければと考えます。
 
次回(第43回)は、「アウトソーシング委託詳細事項と選択重視観点」、その「契約方式」について考察したいと思います。

 
【前7回までの掲載記事】
 
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第36回

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第40回

第41回


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