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#小説
マツリゴトを負う女たちの覚悟の花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第16回 『彼岸花が咲く島』(李 琴峰)ある年の9月、連休に両親がふたりだけで格安のバスツアーに出かけた。例年、8月のハイシーズンを避けて9月に夏休みをとって、両親と私の3人でちょっとした旅行に出かけるのだけれど、その年は仕事の都合で私の休みがとれず、両親だけで行くことになった。
父も母も高級な旅館やホテルに泊まりたいとかいいもの
過去も未来も超える花
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第9回 『時をかける少女』(筒井康隆)
数年前に花生けをはじめるまで、花が好きだとか、植物に興味があるだとか思ったことがあまりなかった。
小学生のとき、夏休みに朝顔やひまわり、糸瓜(へちま)を育てて観察日記をつけるという課題があった。なぜか毎年、芽すら出たことがなく、観察日記がつけられなくて、田舎で植物を育てていた祖父に泣きついた
小町の復讐をかたどる花
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第8回 『小町の芍薬』(岡本かの子)2020年。私たち人間だけでなく、花や植物たちにとっても厳しい年だった。
日本では3月に自粛生活がはじまり、4月に緊急事態宣言が出て、一年のうちでもっとも花を必要とするイベントがすべて中止になった。花や植物の需要が激減し、それを生業とする人すべてが苦しんだ。生産者は丹精込めて育てた花や植物たちを
花に生かされ、花に奪われたラブストーリー
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第7回 『うたかたの日々』(ボリス・ヴィアン)花を生けるというのは、実にお金がかかる。もちろん生ける頻度、花の種類や量、表現したい世界観などによって、かける額は違うけれど、上手になろう、自分の世界を表現して他者に見てもらおうとすると、相応にかかる。
お茶やカメラ、釣り、車、楽器など道具にお金がかかる仕事や趣味はたくさんあるけど、花
“死者”に手向ける花
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第6回 亡き王女のための刺繍(小川洋子)4月からのクラブ活動、何にするか決めた?
まだ・・・やっちゃんと一緒でいいよ。
そう、じゃあ手芸クラブか絵画クラブはどう?
うん、それでいい。
小学4年生になると、月曜日の6時間目にクラブ活動という時間が加わった。小学生なので課外活動ではなく、授業の一つなのだが、自分の趣味や興味に合わ
鬼がこの世にただひとり、生きた証を刻みつける花
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第3回 紫苑物語(石川 淳)前の週の暑さがうそみたいに冷え込んだ9月終わりの雨の日、花の稽古で花材の仕分けをしていると、直径3センチほどの小菊のような薄紫色の花を手にした。
それまであまり見たことのない花だったけれど、その姿形からこれは紫苑かもしれないと直観した。先生にたずねてみたところやはりそうだった。
須賀敦子の『トリエステ