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DIVE INTO THE BATHROOM
「今日も1日暑くて長かったな…疲れたぁ…」
俺は、職場の古くて殆ど効いてないエアコンをリモコンでオフにし、照明を全て消し、玄関に鍵を掛けて機械警備システムをセットしてから、駐車場へと向かう。
丸1日炎天下に晒されたマイカーのドアを開けると、一体車内は何度まで上がっていたのかという熱気が一気に解放され、俺を襲ってくる。
すぐ車内に身を滑り込ませるのは危険だ。
俺はエンジンをかけ、カーエアコン
読切小説「ファーストキス」
序章伊藤正樹は、迷いに迷った挙句、結婚式の招待状には「欠席」で返事をすることにした。
「それでいいの?本当は出席したいんじゃないの?」
伊藤の妻、咲江は言った。
「ううん、いいんだ。あの人のことは、思い出の中で綺麗なままで保存しておきたいんだ。結婚披露宴に出て、あの人のウェディングドレス姿とか、相手の男性を見ちゃったら、俺、ジッとしていられないと思うから…」
「うふっ、そんなところ、昔から
短編小説「バレンタインデー」後編
前回はコチラ ↓
5「大学祭前」夏合宿が終わり、そのまま軽音楽部は大学後期が始まるまで、開店休業となった。
大学の後期が始まるのは10月だが、その前の9月を目一杯使っての、前期期末試験が行われるので、この時期だけは勉強に専念せねばならない。
更に伊藤は試験後、アパートに引っ越さねばならないのもあって、落ち着かない日々を過ごしていた。
最も野球等のスポーツ推薦で特待生扱いの極一部の学生は、試験
【読切小説】ガラスのPALM TREE
「もう…あたし達はダメなのかな…」
知子が助手席でそう呟いた。
「俺は…知子次第だと思ってる」
「もうっ、正志君のバカッ…」
夜の首都高の大黒パーキングエリアに停めた車の中で、俺達は最後かもしれない話し合いをしていた。
2人の中がギクシャクし出したのはいつだろう。
夏に海で出会った頃には、互いが互いを必要としていた。
必然的に俺達は惹かれ合い、どちらからともなく告白し合い、付き合うよ
【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第1回)
1「えっ?転勤?」
父からの突然の言葉に俺が驚いたのも、ある意味当然だろう。
俺は大学2年生の伊藤正樹。今の大学は滑り止めで受けた私立大学で、いまだに第一志望の国立大に未練が残っている。
だが、家計を気にして浪人は出来ないと思いやむを得ず通うことにしたのと、バイトも色々掛け持ちしているので、なかなか授業にも身が入らなかった。
家計を気にする理由には、3歳下の妹の存在があった。
伊藤由美、高校2
【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第2回)
<前回はコチラ>
4俺と由美は、いずみ野のアパートでの役割分担を、パスタ専門店で夕飯を食べつつ、色々話しながら決めていた。
簡単に言えば、先に帰った方が炊事、洗濯、風呂の準備といった家事をやるとことになったが、俺が木曜から日曜まで居酒屋でバイト、火曜は家庭教師のバイトをしているので、木曜から日曜までの夕飯は、由美が俺のバイト先の居酒屋へ夕飯を食べに来ることになった。
「水泳部って、何時までな