#短編小説
電車の中/あるエピソードとそこから生まれた物語
今でもずっと羨ましいエピソードがある。
十年以上前だが、新聞で読んだ読者からのエッセイを掲載する投稿で、と
ても印象深く残っているものがある。
あるご婦人がご主人とのエピソードを綴ったお話なのだが、こんなことあ
るんだと笑ってしまうと同時に、人間的で「なんだかいいなあ」と思わず
呟いてしまいました。全文は記憶していませんが、大まかに説明するとこ
んなお話です。
ご夫婦の姪っ子さん
(短編小説)昼下がりの男たち
6月の土曜日の昼前のことだった。
妻が突然「お腹が痛い」と訴え、ダイニングテーブルに掴まりながらしゃがみこみ、唸り声を漏らすと、しまいに蹲ってしまった。救急車は近所に迷惑掛けるから嫌だと言うので、僕の車で一番近い総合病院に連れていった。
痛みが強いので救急で診てもらった。血液検査のあとにCTも撮ったりと、検査結果が分かるまで3時間以上掛かった。痛みの原因は胆管に石が詰まっていた胆嚢炎だっ
(短編小説)現代っ子
ある夜のこと。
歯磨きを終えたケンタ君が自分の部屋に戻り
ベッドに座った時、どこからか優しい声がしました。
「ケンタ君、ケンちゃん」
聞き覚えのある声。ケンタ君は辺りを見回しました。
「誰?もしかして…ママ?」
すると、ベッドの横に白い影がボヤーンと浮かび、みるみる輪郭をなして
人の形がはっきりと現れたのです。
それはケンタ君のママでした。にっこりと微笑んでいました。
「やっぱりママ