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ルソー『社会契約論』を読む

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過去に執筆した記事のうち、『社会契約論』の紹介をした記事がまとめてあります。
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#哲学

1分で分かる『社会契約論』

1分で分かる『社会契約論』

過去17回にわたって本ノートでご紹介してきた『社会契約論』の「1分」シリーズです。

言わずと知れたルソー主著。ぜひ本当は過去の連載記事すべてに目を通していただきたいところですが、まずはこの記事から理解していただけたら幸いです。

社会契約って何?さて、『社会契約論』は何について書かれている本なのでしょうか。

読んで字のごとく、社会契約について論じている本です。

・・・とはいうけれど、これでは

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ルソー『社会契約論』を読む(最終回)

ルソー『社会契約論』を読む(最終回)

 これまで、本編を14回、号外を2回と、計16回もの間にわたって『社会契約論』を読んできました。いよいよ今回が最終回です。さっそく内容を読みましょう。

本題に入る前に この「市民宗教について」と題された章は、事実上、『社会契約論』の最終章といって良い位置づけになっています。厳密に言えば、「結論」と題された章がこの次に続きますから、最終章ではないのですが、そうした形式的な意味ではなく、この章の内容

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ルソー『社会契約論』を読む(14)

ルソー『社会契約論』を読む(14)

 さて、今回からは第四篇。『社会契約論』もいよいよラストスパートです。さっそく読んでいきましょう。

一般意志は破壊できない ここで言われる意志、それは「一般意志」です。この点はもう大丈夫でしょう。ここまでルソーを読んできた人なら、わかるはずです。

 一般意志だけが支配する国家。そこでは、国家のあらゆる原動力は活気に満ちて単純で、国家の格率は明快であり、光り輝いています。そこに利害の対立や矛盾は

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ルソー『社会契約論』を読む(13)

ルソー『社会契約論』を読む(13)

 さて、今回で第三篇も終わりです。さっそく読んでいきます。

従来の社会契約説との違い 市民は、「すべての人がなすべきことを、すべての人が命令することができる」といいます。

ここで言われる権利とは、まさしく、主権者が政府を設立するにあたって統治者に与える権利のことであって、すなわち「執行権」です。
(執行権について詳しくはコチラ)

 しかし、この「執行権」をめぐって、ルソー以前の社会契約論者と

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ルソー『社会契約論』を読む(12)

ルソー『社会契約論』を読む(12)

 今回は、「主権を維持する」ということについて、解説をしていきます。第三篇第十二章以降の議論です。

人民集会 主権者は、立法権以外になんらの力も持ちません。法によってしか行動できないのです。また、法とは、一般意志の真正の行為以外の何ものでもありません。なので、主権者は、人民が集会したとき以外は主権者として行動しえません。この「人民集会」についての議論は、この『社会契約論』のなかでものすごく重要な

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ルソー『社会契約論』を読む(11)

ルソー『社会契約論』を読む(11)

 今回は、第三篇第八章から。以前紹介したことがある引用から始めます。

「絶対的」ではありえない 政府は、これが最善の政府だ、というような形態は実は存在しない、と言うことがここで言われています。

 しかし、前回の記事で、民主政、貴族政、君主政の三つのうち、選挙による貴族政が「最良だ」と言っていたではないか、と思われる方もいるかもしれません。鋭い。でも、まだ甘い。ルソーは、「良い」とか「悪い」とい

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ルソー『社会契約論』を読む(10)

ルソー『社会契約論』を読む(10)

 ついに10回目になったこの連載記事も、おかげさまで大変評判がよく、ありがたい限りです。いつも読んでくださって本当にありがとうございます。特に、前回の第9回は、とても難しい内容でした。今回以降も、何とか頑張ってついてきてくださいね。(他力本願)

 今回は、第三篇第三章以降を扱います。

政府の分類 ルソーは、政府の形態を、民主政、貴族政、君主政(王政)の三つに分類します。以下に、定義を列挙します

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ルソー『社会契約論』を読む(号外)
ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

ルソー『社会契約論』を読む(号外) ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

以前書いた記事の中で、とあるコメントをいただきました。そのコメントは、「ルソーにおいて「執行権」という概念はあるのか?」という内容。

 こうして私の書いた記事にコメントを頂けるだなんて・・・と嬉しく思っています。と同時に、いただいたコメントが上記のような「質問」でしたので、今回はその質問に対して、私の知りうる限りでお答えする、という回にしたいと思います。

 いつも記事を読んでくださっている方々

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ルソー『社会契約論』を読む(9)

ルソー『社会契約論』を読む(9)

 好評の企画、第九弾。今回からは第三篇を読んでいきます。ルソーは、こんな風に第三篇をはじめます。

読者へ 現代の社会は、「分かりやすい」ことが「良い」とされる時代です。もちろん、そのような時代だからこそ、このnoteのような「分かりやすい」解説記事の存在意義があります。本屋さんを見ても、『○○時間で分かる!』とか『初心者のための○○講座』とか『○○必勝法!』とか、『○○週間でできる』とか、そんな

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美しきルソー

美しきルソー

 前回の記事で、『社会契約論』第二篇第十一章が「美しい」という話をしました。今回は、なぜあの引用箇所が「美しい」のか、を見ていくことにします。

前回の記事はこちら

 というのも、前回、

と言ってルソーの引用をしたのですが、その引用直後に、

とまさかの「説明なし」のまま、ただ美しさを讃美するだけで終わっていたからなのです。今回は、しっかり説明します。

美しいルソーの文章・・・ね。美しいでし

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ルソー『社会契約論』を読む(7)

ルソー『社会契約論』を読む(7)

 今回の記事では、第二篇第八章以降を扱います。この第八章、次の第九章、そしてさらに第十章は、いずれも「人民について」という同じ章立てで構成されています。まず、ルソーはこんな風に言います。

人民についてというのも、建築家と同様、法律を制定する際にも、それ自体として申し分ない完璧な法律を編纂することから始めるのではなく、あらかじめそれを与えようとしている人民が、それを支えるに相応しいかどうか吟味する

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ルソー『社会契約論』を読む(5)

ルソー『社会契約論』を読む(5)

 前回の記事では、以下の2点が明らかにされました。

今回は、この二つをふまえてさらに明らかになることを、まずはじめに紹介することから始めます。

一般意志は常に正しい しかし、ここにはある問題があります。その問題とは、たとえ一般意志が常に正しいとしても、人民の議決が常に同じように公正であるということにはならない、という問題です。なぜ、このような矛盾が起こるのでしょうか。それは、「人はつねに自分の

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ルソー『社会契約論』を読む(3)

ルソー『社会契約論』を読む(3)

 大好評(?)の読解企画。『社会契約論』の第三弾です。

 今日はとても重要な箇所で、実は、以前別の記事で該当箇所を紹介したことがあります。良かったらそちらの記事もご覧ください。

これまでのおさらい 統治の正当性の解明を目指した『社会契約論』は、本論に入る前に、第二章で「父権」を、第三章で「最強者の権利」を、第四章で「奴隷権」を、それぞれ批判したのでした。

社会契約とは何か 上の「これまでのお

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ルソー『社会契約論』を読む(2)

ルソー『社会契約論』を読む(2)

 前回に引き続き、今回も『社会契約論』の読解です。第一篇をじっくり読んでいきます。

前回のおさらいと今回の議論の流れ 『社会契約論』は、以下のような主題について解明することを目標に書かれた本でした。

今回読んでいく箇所は、上記の「統治の正当性」を解明すべく、従来までのさまざまな主張の誤りを、ルソーがひとつひとつ丁寧に論駁していく、という形で論述が展開されます。まず、第二章では、「父権」が統治の

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