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エッセイ

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ノンフィクション、実録エピソードです。生きづらさ、自己肯定感、悩みが中心。
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#悩み

「人生の引き算」をはじめる

「人生の引き算」をはじめる

新しく何かを始めようと思うと、だいたい足し算になってしまう。ダイエットのためにジムを契約したり、英語のために英会話レッスンに申し込んだり、その先には忙しい日々が待っている。特に都会は選択肢が多いから、ぼーっとしていると、どんどん足し算された人生になってしまう。

でも、これって結局、他人の欲求でしかない。本当に瘦せなくてはいけないのか? 本当に英語を話せなくてはいけないのか? 腹落ちしていないまま

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占いに行って、少し泣く

占いに行って、少し泣く

 占いに行ってみたいと、ずっと思っていた。

 その日は午前中に代官山でマッサージの後に予定があるだけで、午後には何も予定がなかった。そこで友人からお勧めされた、渋谷にある占いのお店のことを思い出した。調べたらお値段も良心的だし、電話をしたら予約が取れた。人間はどうして、ここまで退屈に耐えられない生き物なのだろう。ほとんどの元凶は「ひま」から始まる。

 マッサージを終えて、占いのお店が入るマンシ

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陰毛な話で恐縮です

陰毛な話で恐縮です

 息子が8歳になった瞬間、私は鏡を見て「これ、陰毛じゃねえか……」と呟いていた。よくある落ちていた・付いていた系ではない。自分の髪の毛が、そのものだったのだ。

 昨日の痰の記事といい汚い話題ばかりで恐縮である。だって、ものすごく絶望したのだ。真夜中に夢小説をスマホで読み終えて、ふと目に入った鏡に「かがみよかがみ、答えちゃって。これは、陰毛? いえ、髪の毛です~」と、『Bling-Bang-Ban

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家の前に痰が吐かれるんだが……

家の前に痰が吐かれるんだが……

 家の前に痰が吐かれるようになってから、3ヶ月が過ぎた。

 そいつは朝に現れる。長男と夫が家を出る7時半には吐かれていない。保育園に長女と次女を連れて行く時間帯になると、必ず家の前に泡立った白いヤツが鎮座している。初めは1ヶ月おき、そして1週間おきになった。

 その度に、エントランスにいるマンションの管理人さんに掃除を依頼する。彼は愚痴を言うと必ず「僕が勤務してた前のマンションなんてね、他人の

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不倫小説の連載中に、抱えていた秘密

不倫小説の連載中に、抱えていた秘密

産後の女性はホルモンによって性欲が減る。しかし子どもが小学生くらいになると性欲が正常に戻る。みんなどう処理しているか不思議でたまらない。しかし女性同士で性の話はタブーだから、この謎は一向に解けない。男性が性欲を持つことは「男らしさ」の象徴して良しとされているけれど、女性は「いやらしい」とされているからだ。

先日、夫が高校の同級生との飲み会に参加していた。共通の知人がいて、新婚旅行でハワイに行った

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大丈夫じゃなくても大丈夫なふりをしてしまう

大丈夫じゃなくても大丈夫なふりをしてしまう

先日アフタースクールの面談で、小学1年生の長男がどう過ごしているか教えてもらった。「基本的には問題ないんですが、大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしてしまう時があるんですよね」と先生から言われた。

長男にはよく一緒に遊ぶ、Aくんという男の子がいる。Aくんは長男と二人きりで遊びたいタイプの子だ。だから他の子たちが「仲間に入れて!」とやってきた時、Aくんは長男に「なんか、人いっぱい来ちゃったな……あっ

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「何も学ばない」を学んでみる

「何も学ばない」を学んでみる

「また出たよ、1月恒例のお題が……」

そう思った人も多いのではないだろうか。今回の「今年学べたいこと」のように、「今年こそ」系は1月には多く見かける。

少しだけ思い返してほしい。果たして「今年学びたいこと」に掲げたことが、「今年学べたこと」として、年末に振り返ることができただろうか。

私の経験から話すと、ほぼない。
1月に立てた目標なんて、きれいさっぱり忘れているからだ。

じゃあ、目標を立

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ぎっくり腰で、車に轢かれそうになる #育休から育業へ

ぎっくり腰で、車に轢かれそうになる #育休から育業へ

第二子の育児休業は、ぎっくり腰とともに幕を開けた。

長女が生まれたのは、長男が2歳の頃だった。0歳と2歳の子供たちは、二人とも赤ちゃんみたいなものだ。どこかへ移動する時は2歳長男をベビーカーで、0歳長女を抱っこ紐に入れていた。

栄養不足、運動不足、寝不足。母親にとって産後は、足りないものをあげたらきりがない。育児給付金もしばらく経たないと振り込まれないから、お金も満足にあるわけじゃない。
当時

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嫌いな海、狭い心

嫌いな海、狭い心

海が嫌いだった。消したい過去のように、洗っても足にまとまりつく砂。ビーチパラソルを建てたところで、ほとんど逃げられない日差し。夜には日焼た肌がヒリヒリと痛み、黒く焼けた肌には脇腹の白さが醜く目立つ。だから子供の頃に親に連れられて以来、海に行くことは一度もなかった。

私は自他共に認めるように心が狭く、嫌いなものが多い。相手を嫌う感情は、自然と伝わるものだ。特に今年の夏は「地球奮闘化時代」の気候のせ

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難病を持つ息子の未来を照らしてくれた言葉

難病を持つ息子の未来を照らしてくれた言葉

 自分が欲しい言葉だけを「やさしさ」だと勘違いしていた。それは間違いであると、長男の闘病生活を通じて気付かされた。残酷な真実であったり、思わぬ方面からの気付きを与えてくれる言葉も「やさしさ」なのだ。前者が悲しい日のおやつのように、心に寄り添ってくれるものだとすれば、後者は暗闇に突き落とされた先にある、未来を照らす灯りのようなものだ。

 あれは長男が五歳になった、夏の終わり。彼の闘病生活が三年目を

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【その悩み、あの画家と一緒です】ルソー、モネ、ゴーギャンの「つらみ」を徹底解析!

【その悩み、あの画家と一緒です】ルソー、モネ、ゴーギャンの「つらみ」を徹底解析!

今でこそ巨匠で知られる画家たちも、私たち一般人と似た悩みを抱えていた。例えば、以下のように。

・モネとルノワールは貧乏で、お金のために好きな絵ばかり描けない境遇を嘆いた
・フェルメールは副業で絵を描き、本業と十四人の育児をしながら時間をひねり出していた
・ゴッホは片思いと失恋を繰り返しては、落ち込んで仕事が全く手につかなくなっていた

確かに、彼らは絵で悩んだこともあった。けれど、それと同じくら

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1日100円でできる、3児ワーママの育児ストレス解消法

1日100円でできる、3児ワーママの育児ストレス解消法

 フルタイムで会社員をしながら、ワンオペで3児を育てている。正直に言おう。めっちゃ辛い。「子供をかわいいと思えない」「優しくできない」とか、そういう次元の問題ではない。そんな贅沢な悩みはTwitterを開き、140字を書き終わる前にスッキリするはずだ。悩む前に「保冷剤持ってきて(2歳)」「牛乳飲みたい(4歳)」「宿題やりたくねえ!(7歳)」と繰り出されるコンボに対応していかなくてはならない。体力と

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【エッセイ】いきなり老人ホーム

【エッセイ】いきなり老人ホーム

 物心ついた時から「高学歴で大企業の会社員か医者か弁護士にならないと、人生終了」という思い込んでいた。これが変わったきっかけは、大学入試に惨敗したことだけではない。祖父の老人ホームで遭遇した、ある出来事だった。(思い込みが変わった後も、「今まで必死に求めてきた学歴が全てじゃない。だとしたら、自分は今まで何をしていたんだ? そもそも人間の価値って何なんだ?」という問いに、苦しむことになるのだが)。

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存在理由

存在理由

陽が暮れた学校ほど、おかしなことが起こる場所はない。人生で最もおかしなことが起きたあの場所は愛知と岐阜の県境にある、私立の中高一貫校だった。

あの頃、高校校舎の一階廊下の突き当りに鏡が置かれていた。何の特徴もないガラスの板だ。だだ、置いてある場所が妙だった。誰が廊下で身だしなみを整えるだろう? 機能としては最悪だが、高校生の暇潰しには最高だった。正解のある受験勉強に飽き飽きしていた生徒たちは、「

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