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魔法使いの弟子日記

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服の魔法を使えるようになるために、洋裁学校のことや、その時の気持ちをツラツラ紡ぎます。
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#多様性を考える

棲

「じゃあ、君の雑貨屋は辞めるってことですね」

そんなの続けたいに決まっているじゃないか。

でも、まずはちゃんと働きたいと思ったから、
御社を受けたのですよ。

あなたならって、そう思ったから。なのに。

❄︎ ❄︎ ❄︎

最近、気になっていた会社の2次面接を受けた。

「世界で作って世界で売る」なんて壮大な会社。

憧れのテキスタイルデザイナーになれるなら、
温かな衣服を、より多くの人に届け

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君を知るための衣服

君を知るための衣服

君を、知るため。君の世界を教えてほしいの。

君と生きる温かな未来を、共に創るための衣服。

❄︎ ❄︎ ❄︎

多様性が認められつつある現代社会。

けれど、その実態は?

多様性という言葉が一人歩きして、私たちの意識は何も変わっていない。

相変わらず戦争や搾取は起こり続けているし、
毎日どこかで争いが起こっている。

自分の中の善悪を押し付け合った諍いは、一向になくなる気配が無いじゃないか。

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個性だなんて

個性だなんて

「あんまり個性を出し過ぎないように」

貼り付けたような笑顔と当たり前のような口ぶり
が今も脳裏を焼きついて離れない。

第一志望だったブランドのOB訪問。

“ポートフォリオを作成する上で注意すること”を
尋ねると「個性を出し過ぎないこと」だと言われた。

あまりにも普通のことみたいに言うから、この
違和感に気付くまで、1ヶ月もかかってしまった。

これほど大好きなブランドなのだから、きっと、

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可哀想なスカートなんて

可哀想なスカートなんて

「床にスカートついてんで。あーあ、可哀想や」
製図の先生が、私の足元を見てポロッと呟く。

それって、服飾の世界では当たり前の感覚なの?

分からない。何が可哀想なのか。

だって、この足首まで隠れるふわふわスカートは
引きずるくらいが1番美しいと言うのに。

ほんの少しの風で舞うような位に繊細な布は、
寂しい私を丸ごと包み込んでくれる魔法なの。

裾を引きずりながら歩いたその日の夜は、
刺繍糸や

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フォークロアの縫い目を

フォークロアの縫い目を

人類学の学びをファッションに落とし込みたい!
エスニック市場の先駆者になりたい!

なーんて意気揚々と服飾の専門学校に入学して、
もう3週間目。

正直、毎日の登校を怖がっていた自分がいる。

周りの子は某ギャルソンとか、某ヨージとか、
いわゆる“モード系”を纏っている子が多くて。

それに比べて私は。
ヨーロッパ古着とか、アフリカ布とか。

自分が好きで纏っているはずなのに、周りから
「なんか古

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ミニスカバージン

ミニスカバージン

くるぶし女とは私のこと。

毎日くるぶしが隠れる程の超ロングスカートを履く。
ちょっとでも足が見えようものなら、すぐにペチコートを入れて隠す始末。

そんな私が、中学生ぶりに、膝上スカートを履いた。
2ヶ月かけて自分で作った初めてのスカート。
私だけの採寸の、私だけの型紙の、春らしいチューリップ柄。

完成したは良いものの、ずっとこのスカートを履くのをずーっと躊躇っていた。

だって、恥ずかしいん

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