- 運営しているクリエイター
#小説
掌編小説 | 梅の花 | シロクマ文芸部
梅の花がいいと言ったら、渋いねと言った。その女は、オフショルダーのカットソーを着ていた。肌には、背中から肩へ這い上がってきたような格好のヘビが彫られている。悪戯な表情のヘビは、もう少しで彼女の鎖骨を丸呑みしそうだ。
「テスって呼んで。ヘビじゃなくて、アタシのこと」そう言って笑った。外人の男の子のような顔。色白で、後ろを刈り上げた金髪のショートヘアがよく似合う。
テスに、わたしはタトゥー入れそ
短編小説 | いつまでもあなたを | カバー小説
一冊の本を埋めた。誰からの便りも途絶え、使われなくなった、古びたポストの横だ。
365日書き続け、真っ白だった本のページが全て私の字で埋め尽くされた今日、一冊の本を埋めるには大きすぎるくらいの穴を掘って、私はそこに、本を埋めたのだ。
本を埋めた日から、私は毎日水やりをした。
本であろうが、なにであろうが、土に埋めたものには水をやる。そうすることは、私の気を紛らわせるから。
「もしかして、本当に埋