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かの國|詩

かの國|詩

「かの國」

伸ばした指さき
すり抜けゆく風の影
追い果てたどるや
薄紅の微睡みに抱かれて

健やかであれ
唄い流れる水の音

懐かしさに類義した
温もり愛しさと名付けて

24万マイルの僕|詩

24万マイルの僕|詩

「24万マイルの僕」

音のない世界で僕はひとり
遥かなる君と出逢う
抱えた僕の言葉の意味
水平線まで聴こえる瞳の虚ろ

星の欠片を動かして
僕は君へと手紙を送った

君には、
此方のほうが似合っているから
旅に出ないか裸足のままで

いま、
音のない世界で僕は、ひとり

微睡みに繋いで|詩

微睡みに繋いで|詩

「微睡みに繋いで」

何もない空に朝がやってくる

瞳のまえに広がる
きっと淡いであろう赤子のみどり
産声をあげたひかりの匂い
それは素足の心に
くすぐったいを教えてくれる

背から絡みつく
まるでカフェモカのような温もりと
何もないはずの空に手を伸ばす

微睡み……

昨日より、きょう
今日よりも明日なんだって

違うよ
深い眠りにつく前に
僕たちは誰よりも何よりも、ふたり

そして、君へと。|詩

そして、君へと。|詩

「そして、君へと。」

ひとつ、ふたつ……

見あげる夜空に終わりゆく星と
透明な瞳をもつ少年の背中

ひとつ、また ひとつ……

雨粒の代わりに拾いあげた
小さな正義をポケットにしまって

膨らんだ拳から溢れる涙は
きみの宝物へと流れていくから
ほら、大丈夫
真昼の空には消えない星がある

Mau loa|詩

Mau loa|詩

「Mau loa」

足もと散らばる
不揃いの正義かかえた想いたち
迷子の魂ひとさし指
螺旋をえがいた魔法の呪文

小説などは読まないと
すべては僕から生まれる物語
掬いあげる不器用な真心
それでいい、
根無しの雲が瞳を弧にする

空、それは
静かなる永遠を囁きつづけて

風にとける|詩

風にとける|詩

「風にとける」

透明の言の葉をふた指つまんで
青い風に透かし瞳をとじる
聴こえてくるのは何時かの鈴の音
真暗な峠に灯ったあかり

沈んだ夕陽の代わりの文字に
旅雨たゆたう君の心音
いつかのボクだと細めた声を
背中で拾うて眉間で哭いた

もうすぐ夏がやってくる
庭先わすれた風鈴が
今年も君の名を呼び続けている

瞳、乗せて……|詩

瞳、乗せて……|詩

「瞳、乗せて……」

そこから何が見えますか

夢とか希望とか
愛とか恋とか裏切りだとか
片道乗車券だけを握りしめて
踏切のまえ何度めの電車

ここから海が見えました

カンカン カンカン
遮断機は空へと突き刺さり
原動機付自転車が
眼のまえを横切って行きました

ひとつぼし|詩

ひとつぼし|詩

「ひとつぼし」

君を独りにはしないから

空に
まだ星が遊んでいた

存在意義を失くした僕と
見失いそうに立ち尽くす君と

決して、君を……

あの日の君が
そう言って空を見上げていた

無邪気では……|詩

無邪気では……|詩

「無邪気では……」

高鬼あそびの無邪気が
ふわり空へと舞いあがったとき
触れては駄目だ、風が鳴いて
僕はゆっくりと瞳をとじる

ときに想いは君を傷つけ
言葉はときに邪魔をするから
いつまでも、
子供のままでは居られないから

塀のうえには子猫がひとり
寂しそうに笑っていた

君、物語|詩

君、物語|詩

「君、物語」

天色に紛れこんだ優しい嘘
みなみの海に眠る桜の貝殻は
遠いお空をみはるかす

囲った想いの水面に触れて
くるりくるりと左にまわす
心を軸にしたならば
ゆるり愛おしさが弧をえがく

君の声が聴きたいんだ
どんな物語だって構いはしない

君の声が、聴きたいんだ……

幸せになれ|詩

幸せになれ|詩

「幸せになれ」

じりじりと締め付ける違和感が
埃まみれになった心の臓に忍びよる

戸棚には整えられた記憶たち
小さなメモ書き、其れは
いつかの星詠みからのメッセージ

君は憶えているだろうか

かならず果たして欲しいと願った
約束の片隅に掠れた僕の声
添えられた涙が愛になる瞬間の音を

風と共に|詩

風と共に|詩

「風と共に」

影ゆらし離れてく渡し舟
見つめる瞳の虚ろに溶けてゆく

霞みな岸辺はいつかの浜辺
まちがい探しなどしなくてもいい

荒れ狂う波から逸らさずに
限りを尽くして睨んでこその
あの、
水の境の美しさ聴こゆ
風と添い寝する海鳥のように

落ち葉さがし|詩

落ち葉さがし|詩

「落ち葉さがし」

打ち寄せるアンバーな空のした
掴めない落ち葉のゆくえ心もとなく
ただ、それは
僕から吹いている風のせい

刹那的な極光のなか
ぶらさげた命が嘆いている

引き換えであることなく
両のうでに抱かれたいと揺れる音
未だ、僕は
あの場所で僕らを探している

君だけに見える景色|詩

君だけに見える景色|詩

「君だけに見える景色」

奪われゆく視界に想いめぐる

つたい歩きが空に舞うとき
零れ落ちたサヨナラは
せめて君に掬い上げて欲しいと

とても優しいひとだった
とても愉しいひとだった
誰よりも弱さを教えてくれる
とても強いひとだった

奪われゆく視界に君がゆれる
つたい歩き、
その先にある景色を
君だけは知っているのだろうか