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八百屋編~2030年の食と農と食生活を考える~

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生産者&お客さんと20年以上コミュニケーションとりながら営業する八百屋。会話の中で話題にのぼる「農や食の時事」あれこれについて、思い込み文章ではない個人的見解を書いています。
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記事一覧

いま、ブロッコリーが高い理由【八百屋から見た“食”no.49】

いま、ブロッコリーが高い理由【八百屋から見た“食”no.49】

現代の家庭で最も食べられている(当社比)であろう野菜、ブロッコリー。
栄養価高く&量も食べれて彩りもよい。指定産地野菜の仲間入り(2026年度)でさらなる安定供給が望まれています。

ところが、今年4月~5月初めにかけての店頭価格はちっちゃーい1個298円~標準1個400円前後。つぼみもフカフカで今にも花開きそう。出荷農協も売場もベストを尽くしていますが、高いし小さいし美味しくなさそうです。なぜで

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美味しい野菜を食べるという推し活【八百屋から見た“食”no.47】

美味しい野菜を食べるという推し活【八百屋から見た“食”no.47】

GWです。
私の地元埼玉(とはとても言えない)秘境も例年になく大賑わい。
美味しい水と特産品・鮮やかな新緑・青空・川の流れ・鳥のさえずり・早朝の雲海・夜空の星。温泉・神社・絶景ポイント・体験農園・直売所・地ビールに有名ウイスキーと日帰りでも一泊でも楽しめます。

全国各地にある「道の駅」は行楽の楽しみのひとつ。
道の駅に限らずですが、農園直売所でも土産物エリアでも帰り途中のサービスエリアでもいいで

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画面の中に「解」はない【八百屋から見た“食”no.9】

画面の中に「解」はない【八百屋から見た“食”no.9】

動画・雑誌記事・ワイドショー・健康番組。
すべて“話半分”、もしくは“すべてエンタメ”と思って接してください。

特に動画配信関連。
注目を浴びたいがために『キケン』だ『危機』だと大層な見出しを付ける。過激な物言いをする。皆、フォロワーを増やし、動画再生回数を上げて収入にしたい。要は胴元が囲い込みと換金に必死なだけです。

前回投稿でいうところの
“コダワリが強い・多い”人ほど、囲い込みに弱いです

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買い物と多様性【八百屋から見た“食”no.1】

買い物と多様性【八百屋から見た“食”no.1】

いつからか出てきた多様性というワード。
「多様性こそ大切」と言われてしばらく経ついっぽう、
興味の細分化(分散)と情報化社会が相まって
【共通認識(基礎知識≒一般常識)の低下】を招いている
「多様性は大切」と朧気には皆思いつつ「分断」が進んでいて、
極論の両岸から主張し合っている・相容れない状況が進んでいるように思えるのです。

日本史・戦国史・幕末に詳しい・詳しくない
海外居住・現地事情・外交に

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八百屋からみた“食” ー序章ー

八百屋からみた“食” ー序章ー

こんにちは。noteで出会えたこと、嬉しいです。
対面販売・小売り、学生時代からずっとやってます。
いつのまにか八百屋になってそろそろ20年。独立して10年以上経ちます。

「食」の対象は広いです。とてもとても広いです。
職業柄、青果・農産物に限定しても「原料生産・食品製造全体・世界の政治経済情勢・気候変動・農法(生産技術)・流通(輸送貯蔵技術)・市場出荷/非市場出荷・法律・栄養・ブーム・外食産業

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美味しさに自信を。【八百屋から見た“食”no.3】

美味しさに自信を。【八百屋から見た“食”no.3】

食欲がない人。
味覚に自信のない人、増えてます。

食欲≒食べたい自覚。
味覚≒食べた表現力。
食べた時の「次食べたい・食べたくない・美味しい・美味しくない・スキ・キライ」体験の積み重ね。今までの食事の“経験値”とも言い換えることができます。

例えばトマトを食べて「美味しい・次食べたい」と思える体験がないと、次に体験するときの表現がわからない。“美味しいと思える感覚”に自信が持てず、経験が積み重

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都合のよいSDGs【八百屋から見た“食”no.4】

都合のよいSDGs【八百屋から見た“食”no.4】

こんにちは。
タイトルがまたアレですが、SDGsでもスローフードでもフードロスでもなんでもいいです。

あくまで個人の見解ですが、数年に1度新たなワードが出て、賑やかで盛り上がっていて、さぞ世の全員が知っている…ように見えるだけです。
商業上(商売上)都合よく使われて、消費の一部になり、消耗して、また新たなワードが出て。

都内の八百屋の店頭で、ずっとそんな状況を見聞きしてきました。

今話題のS

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店を続けたいなら値上げしよう【八百屋から見た“食” no.5】

店を続けたいなら値上げしよう【八百屋から見た“食” no.5】

先々続けたい店は値上げする。このシンプルな事実。
「食」関連の値上げ(だけ)は残念に感じる人が多いのはなぜでしょうか。

■原料価格の視点から
農産物価格は豊作不作で変動しますが、近年は国内外とも天候不順による不作が目立ちます。とくに土地利用型の穀物・根菜・果樹に多く、高騰が長引いています。豊作不作に関係なく“物流費・動力費”も上昇。機械を動かすガソリン・ボイラーを焚く重油・宅配便等々、実感する場

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都市生活における「自炊」【八百屋から見た“食”no.7】

都市生活における「自炊」【八百屋から見た“食”no.7】

私は(特に都市部において)
【自炊=時間と労力のぜいたく】と捉えています。

巣ごもり生活で自宅調理は一時的に増えました。
それでも大きな流れとしては、自炊しない生活に向かいます。
人口動態の変化(人口減と高齢化)、前後5年の暮らしぶりを想像するに自宅調理は1世帯平均1日1食(週3-5食)がイイトコでしょう。

そんな2022年以降の生活環境下でも
自炊前提の八百屋/食材屋ができるアプローチとはな

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多様化する生活の中で、専門店ができること 【八百屋から見た“食”no.8】

多様化する生活の中で、専門店ができること 【八百屋から見た“食”no.8】

画一 と 多様 は対義語です。
皆、同じをヨシとしたり
ロールモデルがあったり
似たような価値観・人生観(死生観)・金銭感覚・生活感覚・宗教観・ブームでグループ分けをしづらくなった2010~20年代。Web・SNSの発展で、情報の囲い込みや仲間・グループ・コミュニティづくりに昭和旧来の画一した手法が通用しなくなりました。多くの個を内々につなぎとめることが難しくなった10年とも言えるでしょう。

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味でつながる信頼。【八百屋からみた“食”no.11】

味でつながる信頼。【八百屋からみた“食”no.11】

産直八百屋をずっと続けて思うことです。

作り手からお客さんが食べるまで。
私が仕事とする“食”は、生産者も 消費者も 売場も 飲食店も
『味』でつながっている(から成り立つ)と思っています。

作り手(生産者・食品製造/加工業者)
売り手(卸・売場・飲食店・通販)
買い手(消費者・お客さん)

各ステージ・個々が持つ“コンセプト・こだわり”は
各自で大切にしてもらって。
【食べて美味しいという

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これからの小売と消費【八百屋から見た“食”no.12】

これからの小売と消費【八百屋から見た“食”no.12】

ここ2年、食品小売業界に訪れた「巣ごもり消費」という名のフィーバー。
今、ようやく平常運転と感じています。

日本社会≒個人消費がゆるやかに(やがて急激に)老衰するのは自明。

今フィーバーしている業態も、じき落ち着きます。
どの業態の消費も、コロナ禍でゲームルールの一時変更があっただけ。
老化・縮小・減退・関心の分散と低下は進み、今後さらにしぼみます。

じゃ、どーするか。
広告で(買いに来ない

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安全に食べる=農薬&肥料の使用不使用“ではない”話。【八百屋から見た“食”no.13】

安全に食べる=農薬&肥料の使用不使用“ではない”話。【八百屋から見た“食”no.13】

栽培期間に起こり得るあらゆる病害・虫害・天候不順を経験されながらも、いわゆる無農薬(≒栽培時農薬不使用)のポリシーを持つ生産者皆さんには敬意しかありません。美味しい状態にまで仕上げ、当店に出荷される農薬/化肥不使用の生産者も多数いらっしゃいます。本当にお世話になってます。

しかし出来上がったいわゆる無農薬野菜/農産物に対して、
“病気治す効果”とか
“栄養価高い”とか
“安全に生で食べれる”とか

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食べ物にも“ベストバイ”の習慣を【八百屋から見た“食”no.14】

食べ物にも“ベストバイ”の習慣を【八百屋から見た“食”no.14】

直近のあらゆる原材料&食品の値上がり要因は主に4つです。

①原料の供給減:稀少化・輸入減・不作
②動力費:ガソリン・電気・ガス
③輸入品:円安
④給与増:人件費上昇

小麦・大豆・食用油・砂糖・カカオ等含めた豆類は現地コスト増と円安の掛け算で値上げ続き。いま挙げた5種はほぼすべての食品でなにかしらの原材料となるため、今後も数段階の値上げが想定されます。また、輸入果物(&原料にしたジュース類)も安

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