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無限に広がる可能性を探そう

 海外日本人研究者ネットワークUJAは、様々な分野のアカデミア研究者、企業研究者、医者、会社員、政府関係者など豊富な人材を持つ一般社団法人です。https://en.uja-info.org/about

 日本人研究者のキャリアにおける相互支援の場として、留学を検討する方への情報提供や支援、教育・科学技術行政機関との情報交換や連携を行っています。

 我々は科学を通して日本の発展を応援しています。進路に悩む若者に情報を提供する目的で、キャリア体験談を集め、公開することにしました。

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大学教員

 まず大学院で研究する学生さんやポスドクさんにとって身近で、自分の将来像として想定しがちな大学教員についてです。自分の研究をしたい人向けです。ひとくちに大学教授と言ってもいろんなパスがあります。

日本で大学教授になるには? 医師編

 生物系では医師免許や歯科医師免許を持ってから研究の道に転向する道があります。医師が研究をするための研究費申請のサポートも充実していますし、将来的に研究を志すとしても医学知識は強みとなります

Case 1) 医療の現場で多様性の重要性を学び、ヒトゲノム研究をするに至るまで 東京大学教授・鎌谷洋一郎
Case 2) 連邦政府研究機関 東北大学教授・神谷英美子
Case 3) イギリスで独立!帰国して日本の大学教授に 新潟大学教授・照沼美穂
Case 4) 『血液1滴でがん診断』をめざして 慶應義塾大学准教授・松崎潤太郎
Case 5) 医師として勤務し大学での研究活動に至るまで 大阪市立大学准教授・大藤さとこ

日本で大学教授になるには? 基礎研究者編

日本の教員職公募に応募するにしても強い実績が必要です。海外留学中に大きな論文を出して凱旋、独立ラボを持つ、というのがわかりやすい成功例かと思います。

 講座制をとる日本では多くの場合助教は独立ポジションではないので、特任助教→任期切れという袋小路がありえます。一息に独立ポジションで帰国が望ましいです。もしくは特任助教→任期中に実績をあげまくって講師、准教授→教授というパスを勝ち抜く強い力が必要とされます。

Case 1) 私のキャリアパス 福岡工業大学教授・赤木紀之
Case 2) 一歩踏み出してみませんか? 広島大学教授・保田 朋波流
Case 3) 小さな成功体験を、少しずつ自信に変えて 熊本大学准教授・佐田亜衣子
Case 4) 生命科学分野におけるキャリア形成の一事例 東京都立大学准教授・成川礼前編後編
Case 5) 色々あった、けど(今は)とても幸せ:キャリアパス 匿名女性准教授 
Case 6) 経済学者の回り道キャリアパス 立命館大学准教授・関麻衣
Case 7) あるがん研究者の振り返り 北海道大学教授・園下将大
Case 8) ハイリスクなキャリアパスを辿った研究者の例 京都大学・井上詞貴
Case 9) フィジカルコーチを経て大学教授へ 早稲田大学教授・広瀬統一
Case 10) 研究成果を社会実装する-紆余曲折のキャリア構築のススメ- 横浜市立大学准教授・芦澤美智子

海外で大学教授になるには?

国内で限られたポストに挑戦するより、海外で教員ポジションを狙う手もあります。海外では日本と違い、assistant professor 職からもう独立ラボを持ち、数に制限がありませんし、政府からの研究費も潤沢で、研究に専念するなら理想的と言えます。ジェンダー差別も日本に比べて少なく、実力次第でチャンスは豊富にあります。

 公募に応募し、書類選考を通過すると現地に呼ばれ、プレゼン、将来の同僚との会話、会食、チョークトークを通してジャッジされ、採用が決まります。強い論文を複数、もしくは大型研究費を持っているとチャンスが大きいでしょう。

 もしくは内部昇進で特任助教 (research assistant professor) から独立したassistant professor 職に上がる道もあります。大型研究費を獲ってプロモーションを受けるという道です。

Case 1) 海外でPIになる ケンタッキー大学・河島友和
Case 2) スポーツ心理学者|英語力0からアメリカで大学教員になる ペンシルベニア州立大学・岩月猛泰
Case 3) アメリカで独立ラボを持てたのは、ただあきらめなかったから イリノイ大学・山田かおり
Case 4) 世界のアカデミアを歩む 華中農業大学・津田賢一
Case 5) 海外PIのすゝめ シンシナティ大学・佐々木敦朗
Case 6) ボクらなりの二人三脚 ユタ大学・船井勝彦
Case 7) アメリカから香港へ・湯川将之

大学教員になるには?

独立ポジションではなくても大学教員として、講座制の研究室の一員として、学生さんの指導をし、研究に専念する大事な職種、それが助教です。いずれ独立を見据えた登竜門としても、海外ポスドク留学を経てまず目指すのが助教として大学教員となることで、これもかなりの狭き門なのです。また学生さんと年も近いですからまず相談する頼りになるお兄さんお姉さんポジションでもあり、教授からも頼られていろんな仕事を任される、重要な職です。研究者として一番脂ののった時期でもあり、いったんPIになってしまったらなかなか手を動かして研究はできない、助教のうちが一番ばりばりできていたかもしれないと思いをはせるものですが、私生活としても出産子育てとかぶる、まだ子供が小さい、大変な時期でもあります。

Case 1) コンフォートゾーンからはみ出し続ける 東北大学・別所-上原 奏子

専門技師としてコアファシリティで専任するには?

一流の技術を持ち、多くの研究者の研究を支える専門家として貢献するとても意義のあるお仕事です。ポスドクをした後に、技術を買われてなる人が多いです。

Case 1) 海外研究者のキャリアパス|研究者として日本からイギリスへ Diamond Light Source (UK)・井上勝晶

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政府関連の研究所で研究に専念するには?

日本で言うなら理化学研究所、アメリカで言うならNIH。設備がしっかりしていて予算が潤沢で、研究に専念できる研究所。そんな施設が充実していることが国力アップには欠かせません。

そんな理研の欧州事務所長としてマネジメントをしておられる市岡さんにお話を伺いました。

Case 1) 研究経験・国際経験を基にしたキャリア形成 理化学研究所 欧州事務所長・市岡利康

政府関連で研究をサポートする、アメリカで言うならNIH、日本で言うなら日本学術振興会!研究費や奨学金を審査し配分して国の研究を支えます。これらのサポートなくして国の研究力促進はあり得ない、そんな大事な機関で働くという選択肢もあります。研究者であった経験があるからこその視点で研究を支援する大事なお仕事です。

Case 1) ご存じですか?就職先としての学振 日本学術振興会・安東正隆

企業で働くには?

研究を社会に具体的に還元したい人にはアカデミアより企業の方が向いているかもしれません。企業といっても、企業で研究するか?営業をするか?マーケティングをするか?製品を社会に送り込む過程で様々な立場からの貢献があり、自分がどれに向いているか、どれに興味があるかは人それぞれなのです。国内の企業で働くか、海外の企業で働くかも、人それぞれです。

Case 1) キャリアパスを振り返る 会社員・吉村優一
Case 2) アカデミアを離れて海外企業に転職するには イルミナ株式会社マーケティング・花岡秀樹
Case 3) 海外就職の秘訣 Pfizer・山口雅也
Case 4) 宇宙工学技術者として研究者から英国スタートアップ企業へ Oxford Space Systems・荻芳郎
Case 5) アメリカ田舎の企業で気ままな研究者生活 アメリカ企業研究者・水原司
Case 6) 学問の街ボストンで創薬研究を駆け抜ける アメリカ企業研究者・宍戸英樹
Case 7) 自分だけの道を探して 株式会社シンプロジェン・野村愛
Case 8) 海外企業就職のための博士号取得 欧州企業プロジェクトマネージャー・八木良平

企業で働き始めてから社会人博士としてレベルアップをはかる手もありますね。
Case 1) 人生のパラダイムシフトで社会人博士に 機械メーカー・竹野内二世

起業するには?

既存の枠組みで実現できない強い夢を実現するには、いっそ起業してしまうのもいいですね。強い実現力、行動力を持って夢をカタチにする、素敵なキャリアパスです。日本では起業する方法など体系的な教育はあまりされませんが、海外ではそんなセミナーシリーズもありますし、大学からのベンチャーやそれを支える仕組みも充実していますね。

Case 1) なぜアフリカでのエンパワーメントなのか? 株式会社Darajapan 代表取締役・角田弥央
Case 2) 研究を社会実装へ:新しいゲームのスタート 株式会社ヒューマノーム研究所 瀬々潤

自由に研究を続けるには?

起業して仲間を集めるほど大それたことをしなくても、ひとりで自由に研究を続ける道、フリーランス、自由業、そういう生き方もあります。

Case 1) 研究は趣味であり道具 国際保健コンサルタント・橋本謙

一度、結婚や出産で研究を離れた後も?そうです、主婦として一線を退いたように見えても、問題意識を持ち続け、研究生になって博士を取り、起業!国際協力専門員を務めたのちフリーランスでコンサルタント、というパワフルなキャリアもあります!

Case 2) 元リケジョ、いろいろあったおかげで今があります フリーランス開発コンサルタント・中野恭子

研究を支える職種もいろいろあります!

自分で研究する以外にも研究を支える仕事はたくさんあります。たとえばサイエンスコミュニケーターが近年注目を集めていますが、世の中の人たちにわかりやすく研究を伝えたり、啓蒙活動をしたり、科学への関心を持ってもらったりする大事なお仕事ですね。広報やアウトリーチ活動をしている研究者は増えてきていますが、専門のサイエンスコミュニケーターと組んで仕事をするのもかなり助かりますね。

Case 1) 私にしかできないことを探して サイエンスイラストレーター・小林沙羅

研究を支えるために、研究者と企業をマッチングする仕事もあります。「研究者の可能性を最大化するプラットフォームを創造する」
研究が好きで関わっていたい人は、研究そのものをするだけじゃなく、いろんなやり方で科学コミュニティに貢献できますね。

Case 2) 研究者じゃないキャリアを選んだ私が大事にしている”自分の物差し"  株式会社POL・服部明日希

University Research Administrator (URA) というお仕事をご存知でしょうか?「大学の研究を加速度的に推進させる戦略ブレインであり、大学が持つ研究シーズを駆使して社会課題の解決を実践するといったことも可能な職種」です。海外の大学では博士号を持ったAdministratorが事務室にいて、知財の扱いや、動物実験計画書の作成の補助、研究費獲得に伴う事務仕事の補助など、研究者を支えてくれる非常にお世話になっているありがたい職種の人達です。日本の大学にもそんなURAのかたがいらっしゃいます!研究者としての経験があり博士号も持つ、経験者だからこそできる補助の仕事、非常に頼りになるのです。

Case 3) URA (University Research Administrator) という仕事を通じて大学を活性化し社会を活性化させる 九州工業大准教授 研究戦略URA・米澤恵一朗
Case 4) 研究の橋渡し カナダ Queen's 大学リサーチコーディネーター・春日翔子

スポーツ留学!

留学はなにも研究のためだけではありません。スポーツのため、芸術のため、様々な理由で海外へ挑戦する人達がいます。

Case 1) 2028年LA五輪のラクロスで金メダル獲得! Falcons Lacrosse Club・中村弘一
Case 2) スポーツ留学のすゝめ アイスホッケー日本代表・佐野月咲

そして夢に向かって今道を模索している人達も…

Case 1) しくじり留学体験記 Max Planck Institute・英山明慶
Case 2) 貴重なポスドク期間で好きなことをやってます コーネル大学・本谷友作
Case 3) 海外でポスドク後、一旦日本に戻り再び海外でキャリアアップを目指す フランスCNRS・藤田智史 
Case 4) 北欧でのポスドク生活 スウェーデンUmeå University・石崎隆弘
Case 5) 学校の先生を目指していたけど、オックスフォードでタンパク質の研究をしています オックスフォード大学・加藤孝郁
Case 6) 「とりあえず、やってみる!」アメリカでのポスドク生活。 ペンシルバニア大学・坂本 智弥

海外の大学や大学院に進学

いつ海外に留学するか、それもキャリアを構築する上で、一つの作戦になってきますよね。今は高校のうちに短期交換留学を経験できるチャンスも増えていますし、大学でも短期交換留学があります。日本で高校、大学に進学する人が多いですが、大学から海外に行くという手もありますし、日本の大学を出て海外の大学院に行くという手もあります。たくさん吸収できる若いうちに海外を見ておくと視野も開けますよね。海外と言っても、アメリカ、ヨーロッパ、国によっていろいろ制度も違います。海外進学した先輩方からの情報はきっと役に立つでしょう。

Case 1) 研究は好きだけど博士進学に迷いがある?ドイツに来ませんか? ドイツ生命科学系博士課程大学院生
Case 2) プランF: フランス大学院進学という選択肢 黒岩杏佳

一度キャリアを断絶しても…

結婚、出産、介護、病気、いろんな理由で仕事を辞めることもあります。また、一度社会人として働いて学費をためてから学業を継続という方法もあります。ストレートで進学し新卒で採用されるのが王道となっている日本ですが、多様化する生き方の人達それぞれの幸せを考えると、回り道をしてもいつでも続けられるような社会のほうが、皆幸せになれるんじゃないでしょうか? 海外では一度社会人になってから、子供を産んでから、大学院に入ったり研究の道に戻ってきたりする人たちが少なくありません。一度キャリアを断絶したからって、今まで培った力が失われたわけではありません。いつでも、好きなところからリスタートできる、そんな社会のほうが、皆、きっと生きやすいでしょう。再出発する人達を、応援しています。

Case 1) 家庭から研究の世界へ 大学院生・さおり

おわりに

 いかがでしたか。あなたの夢に参考になる体験談は見つかりましたか?夢に向かって道を模索しているのは、あなただけではありません。私達も、今生きがいとなる職で活躍しているあの人達も、かつてはもがき苦しみじたばたと模索しながら、道を見つけていきました。あなたも10年後、20年後に、なりたい自分を手に入れていることを願い、応援しています。

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上記キャリア体験記はUJAのwebサイト、キャリアセミナーのページにまとめています。
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