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アメリカから香港へ

香港中文大学Assistant Professor
湯川将之

はじめまして、湯川将之と申します。2020年9月から香港中文大学でアシスタントプロフェッサーをしています。私は人よりも失敗している数が多いと思います。非常に反省点の多い人生だと自覚していますが、たくさんの人に助けられ、いまがあります。大学生からポスドクの方までをメインに想定して、経験から得られたことをここでいくつか述べさせていただきたいと思います。私の体験談が誰かのお役に立てれば幸いです。

1. いつ頃今のご職業につきたいと思いましたか?

高校生の頃、将来の目標を考え始めた時のことです。私は科学と生き物がとても好きなことに気づき、生物学研究者になりたいと思いました。どうすれば研究者になれるだろうと考え、科学関連本の著者が通ってきたキャリアを通ればいいのかと思いつきました。しかし著者の方々は有名な大学出身ばかりで、当時の自分にはそんなところにいける実力はないし、どうすればいいだろうとよく考えていました。結果的に、興味を持ち続けて頑張っていければ科学者になることができる、ということを身を持って感じました。

2. 現職に至るまでの今までの経緯をお聞かせください

東京薬科大学を学部生で卒業して、東京大学の大学院に行きました。大学院ではなかなか結果が出ず、留年もしてしまいました。その後はアメリカに渡り、ポスドクとして働きました。一つの場所で学べることも限られてくる中で、もっと責任あるポジションに就きたいと思い始めました。100件以上応募して、最終的に今の職に就くことができました。苦労したこともありますが、今の職を得て達成感もありました。

3. 就職に成功した秘訣はなんでしょうか?

アクティブに、行動に移したことだと思います。仮に失敗してもその経験は次に活かせます。無駄な失敗は無いと思っています。特に申請書の書き方など、「習うより慣れよ」の精神です。面接までこぎつけられれば、今度は面接の練習にもなります。どんなことにも言えますが、回数を重ねた方が緊張感もなくなります。自分の母国語でない英語を使うならなおさらです。

後は、応募する数を増やすために、色んなウェブサイトを横断して検索しました。研究所のウェブサイトに直接行って募集があるかどうかも調べました。ときには研究所の部門長に直接連絡して、近々募集があるかなどを尋ねました。私の場合はこのような行動が功を奏したと感じています。実際、香港の大学は大手の雑誌やウェブサイトに募集をかけていなかったので、競争数も少なかったのではないかと思っています。

また一般的にもよく言われますが、日本内外の人と意識して連絡を取り、良い関係性を築いておくのは大事です。先輩、後輩、先生と定期的に連絡する、学会に行って自分の存在を知らせるなどといったことをしておきましょう。このポイントは分野を変えた人は特に要注意な点だと思います。なぜなら、多かれ少なかれ、以前の研究分野の人達との関係性は薄まってしまうからです。私はポスドクになる時に研究分野を変えたので特にそのように感じました。そして研究の世界は分野は違えど、関連し合っているものなのです。もしも良いポジションなどがあれば、教えてもらうこともあると思います。

さらに、良好な人間関係を築く重要性として、ポスドクにせよ、アシスタントプロフェッサーにせよ、応募する時にはどなたか自分のことをよく知る研究者に推薦状を書いていただくことになります。応募のたびに、自分より身分の高い方に何十回と推薦状をお願いするには、それなりの関係性である必要があると思います。また、良い推薦状とは「応募者がどんな人物か」が判断できるものであり、それには深みのある具体的なストーリーが欠かせません。そのためには、普段から交流を深め、自分の性格はもちろん、バックグラウンドや目標としていることなどいろいろなことを良く知っていただくことがとても大切です。私の場合、推薦者の方が大変良い推薦状を書いて下さったので、とても感謝しています。

4. 他の進路と比べて迷ったりしましたか?

これまでの体験の中で、あまり迷うことはなかったです。その時にある縁に身を任せている気はします。若い時は強いこだわりがあって、決めた道だけを進みたいと考えていましたが、最近はそういう考え方も薄れてきました。どんな人と一緒に仕事できるのかということが大事だと最近は考えています。

5. 今の生活に満足しておられますか?

まあまあ満足しています。仕事の面で色々追われることもありますが、金銭的な不安がある程度解消されてたので良かったです。その上で研究に携われて良かったと思います。

6. 生きがいや夢をお聞かせください

恥ずかしながら、未だに自分の全てを懸けることのできる研究に出会えていないと感じています。これを見つけることです。これまでに達成できなかったこと、諦めなければならなかったことなど、それなりにありました。今の現状をかえりみて、さあ何をしようかな、というのを模索しています。刺激のある人生を送りたいです。

7. 最後に、若者にメッセージなどお聞かせいただければ幸いです 

今の時代、特に行動に移すことが大事です。私のキャリアの中でも、何度も周りの人から行動に移すことのアドバイスを受けてきました。やはり、行動を移した時の方が色々うまくいくことが多かったと思います。何か不安があれば人に聞きましょう。忙しい人、偉い人に相談するのを躊躇うのもよくありません。それに歳上の方々は若い人に頼られるのが好きな場合が多いと思います。意識して行動するように心がけるのが良いと思います。

キャリアの中で失敗することもあると思います。けれどどんな時でも腐らないで生きていきましょう。精神的にネガティブになってしまうと、生産性のある考え方も出来なくなってしまい、結果的によくありません。たまにはリラックスして物事を見るのも必要ではないでしょうか?これは、アメリカ留学した時に体験した、どんな時でも休みはとる、という経験から私が感じたことです。特に日本人はその点の解消法がうまくないと思います。それとは逆に、スケジュールを埋めて忙しくしてしまうということも精神的に良いかもしれません。最近、私はこの方法で嫌なことを考える暇を自分に与えないようにしています(笑)。

最後になりますが、若者にはキャリアの中で研究、仕事を含め人生の中で熱中できるものを見つけて欲しいと思います。


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