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北欧でのポスドク生活

石﨑隆弘(いしざきたかひろ)
Molecular Infection Medicine Sweden, Umeå University(スウェーデン)

略歴
2016年 帯広畜産大学 畜産学部 獣医学課程 卒業
2020年 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 新興感染症病態制御学系 修了

いつ頃今の職業に就きたいと思ったか?

私が研究職を志したのは獣医学部6年生(4年制大学卒での修士2年相当)の時期でした。私が在学していた帯広畜産大学のシラバスでは高学年から始まる臨床実習に加えて、学部4年次から卒業研究という単位があり学生は基礎系もしくは臨床系の研究室に所属して3年間かけて卒業研究に取り組みます。

私は帯広畜産大学の附置研である原虫病研究センターへの配属を希望し、ウシの赤血球に寄生するバベシア原虫の研究を始めました。当時所属していた研究所の先生、ポスドク、博士課程の先輩たちが楽しそうに研究している姿に憧れたことが研究者を目指したきっかけです。

現職に至るまでの今までの経緯について

日本の獣医学課程では日本の医学部と異なり卒業後に研修医制度がありません。そこで研究職に就きたいと思った自分は、卒業後すぐに博士課程へ進学することを決意しました。進学先を決める際にヒトに感染する寄生虫の研究を分子レベルで行っている研究室に行きたいと考え、長崎大学熱帯医学研究所でマラリア原虫の赤血球侵入機序に関する研究を開始しました。

在学中はリーディング大学院のプログラムで計2回の留学機会を頂き、ハーバード公衆衛生大学院と現所属であるウメオ大学へそれぞれ留学しました。卒業後は1年間出身研究室で助教として働いた後に、海外特別研究員の身分で現職に至ります。

今の職業に就くためにどう動いたか

前述のリーディング大学院での留学機会というのは自由度が高く、留学先を学生が主体となって決めることができる制度でした。そこで自分は留学先を決める=アカデミア就活と考え、博士課程在学中に国際学会に参加して、当時網羅的なマラリア原虫の遺伝子必須性解析を報告して国際的に注目を集めていた現在のボスに会いに行きました。学会終了後にボスの研究室へ留学したい旨を伝えたところ快諾して頂き大学院4年次に4ヶ月間の留学を行いました。

ただセミナー開催時に英国所属だったボスの異動に伴い留学先がスウェーデンになることを知った時は言語面での不安がありましたが、スーパーやレストランなどの研究室外でも店員さんが英語で対応してくれるのでスウェーデン語が分からなくても当面の現地生活に不自由はありません。

またアカデミア就活という点では、留学期間中に一生懸命研究に取り組んで成果を出した点をボスに高く評価してもらい、留学中にポスドクのオファーを頂くことができました。ただ当時の日本の所属でやり残した仕事があり、それらをまとめたいという旨を伝えて雇用の開始時期を待って頂くための交渉を行いました。

今振り返ってみるとポスドクとしてのキャリアを開始するのを1年間遅らせたことで海外留学助成制度の申請書の準備期間に充分に充てることが出来たので、雇用時期について便宜を図って頂いたボスには大変感謝しております(国内外の留学助成制度によっては学位取得後○年以内という制限付きの場合もあるため留学を遅らせることは一概にはお勧めできません)。

また、ボスが日本人はよく働くと肯定的に捉えてくれる背景は、おそらく以前に海外留学された方や現在海外在住の先輩方の努力によって醸成されたものであり感謝すると共に私もその一員として身の引き締まる思いです。

他の進路と比べて迷ったりしましたか?また、現状の生活に満足していますか?

研究者になりたいと決めた学部6年生の頃までは他の進路として企業就職や国際機関勤めといった進路とアカデミアのキャリアの間で迷ったこともありましたが、博士課程進学後はあまり悩んでいません。とても幸運なことに学部・大学院・現所属と、ある程度個人の裁量に任せてのびのびと研究に打ち込める環境に所属しているため現状の生活に大いに満足しています。

現職のボスとの進捗報告の際に言われた「サイエンスは自由な風土から生まれる (Science comes from a culture of freedom)」という言葉はすごく印象的でした。そのマインドを持って今後の研究活動や後進育成に邁進していきたいと考え改めさせられる留学中の貴重な経験でした。

これから研究留学を志す方へのメッセージ

私個人の意見としては研究留学する際に一番大切な点はマッチングであると思っています。一念発起して海外へ渡航したものの、ボスとの相性や海外での暮らしが想像と違ったというような理由で留学期間を楽しめないというのは非常にもったいないと思います。実りある留学にするためにも学位取得後にポスドクとしての研究留学を志す学生さんには、学生という立場のうちにポスドクとして働きたい研究室へのお試し留学を強くお勧めします

留学中の滞在費等を支給してくれる制度として日本学術振興会の若手研究者挑戦プログラム、文部科学省のトビタテ!留学JAPAN、また所属している大学院によっては独自の留学制度があるかもしれないので大学の先生や事務員の方に尋ねてみると良いと思います。海外で生活するということは楽しいことばかりではないですが、これから挑戦される全ての人を応援しています。お互い異文化を楽しみつつ頑張りましょう!


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