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『血液1滴でがん診断』をめざして

慶應義塾大学薬学部
松﨑 潤太郎

今のご職業に就くと決めた時期は?

小学生のころからサイエンスが好きで、それに加えて人のお役に立てる仕事ということで高校生のときに医師を志しました。

今のご職業に就くためにどう動きましたか?就職に成功した秘訣は?

医学部学生および初期臨床研修医の間は、臨床医として働くことしか考えていませんでしたが、大学院での研究生活が大変充実感があったため、大学院修了後も研究を継続できる道を模索し、国立がん研究センター研究所と米国UCSFでポスドクとして研鑽を積みました。ポスドクからスムーズに独立PIになれたことは、大変幸運なことでした。これで苦労している仲間がいっぱいいます。日本も世界も、アカデミアでのポジション獲得は人脈がかなり重要なので、ご縁を大切にすることは必ずプラスに働きます。アカデミアで生き残るには当然、研究業績も必要なので、大学院博士課程ではとにかく論文を執筆し経験値を上げました。加えて、他のアカデミア研究者から頼りにされる何らかのスキルを身につけると、自然と研究の輪が広がりますし、業績も増えていくのではと思います。留学経験は、スキルを磨くだけでなく国際的に幅広いネットワークを構築する上でも大変、今に生きています。

他の進路と比べて迷ったりしましたか?

自分の専門分野を選ぶときや、臨床・研究のどちらに軸足をおくか(両立できるか)など、選択を迫られるシーンは数多くありました。そんなときは、大学1年時、入学早々の講演で耳にした「医学部を卒業したからってお医者さんにならなければいけないわけではない。官僚・宇宙飛行士・政治家・研究者・・なんでも好きなものになればいい」という一言を思い出し、自分が今一番やりたいことをやろうと思って選んでいます。それでうまくいかなければ、すこし引き返して別の道を選べばいいという気持ちで、わりと直感の赴くままに選んでいます。

今のご職業を含め生活の満足度は?やりがい?夢?

血中RNAを用いたがん診断法の開発をライフワークとしています。この技術が実用化され、人類のがんの克服に一歩でも近づければという思いがあります。いまはようやく自分のペースで自由に研究を展開できる環境を手に入れることができ、非常に満足しています。夢に近づいているのかどうかの実感はなかなか持てないですが、日々データを見ながら一喜一憂する生活がなにより楽しいです。自分のアイデアをすべて自力で検証していくには時間も人手も足りません。興味の方向性の近い仲間を集めること、後進を育成すること、またアイデアの段階でも惜しみなく世界に発信していくことを心がけています。ラボ運営に携わるようになってまだ日が浅く、手探りではありますが、メンバーの意見の多様性を尊重して、誰もが居心地のいいラボを作っていければと思います。

著者略歴
2005年慶應義塾大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期臨床研修修了。2013年慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員DC2、東京都済生会中央病院消化器内科医員、慶應義塾大学病院予防医療センター助教、国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野(落谷グループ)特任研究員、慶應義塾大学医学部内科学(消化器)専任講師、UCSF Diabetes Center博士研究員を経て、2021年より慶應義塾大学薬学部薬物治療学准教授。連絡先:juntaro.matsuzaki@keio.jp


医師として研究者としてがん診断法を開発しておられる松崎先生のコロナ禍での留学奮闘記は現在公開中のGazette7号でお読みいただけます。

私は2019年9月から2020年12月までUCSFで博士研究員として仕事させていただきました。この期間の大半をCOVID-19による制約がある中で過ごすことになってしまい心残りも多々ございますが、多くの学びを得て、今に活かすことができています。ここでは留学に至る経緯と、UCSFで感じたことなどを中心に、自分の研究愛をご紹介させていただきます。これがどなたかのお役に立つという展開はイマイチ想像し難いですが、もしコラボレーションのきっかけにでもなれば大変ありがたく思います。拙い文章ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
医師から研究者へ
自分がまともに研究活動を始めたのは、医学部を卒業し初期研修も終えて大学院に入学した27歳の時でしたので、理工学系や薬学系の方々に比べるとかなり遅いスタートでした。それもなんとなく学位は持っておいたほうがいいだろう、学費のかかる類のものはさっさと済ませておきたい、といった平凡な動機で、ひとまず研究なるものを体験してみようということで大学院に進学しました。当時の大学院生といえば大学病院の臨床を運用していく主力メンバーであり、自分としても内視鏡など診療スキルの向上に最も意欲的な時期でありましたので、決して研究に全身全霊を注ぐような大学院生活ではありませんでした。
臨床の片手間の研究生活ではありましたが、疾患発症に関わる新たな機序を自分で予想して、それを裏付けるための研究をデザインし、その結果がポジティブに出たりネガティブに出たりするたびに同僚や上司と一喜一憂する日々がとても刺激的で、やみつきになっていく自分がいました。またありがたいことに、その研究の進捗を小さな研究会から国際学会までいろいろな場で発表する機会を大変多く頂戴しました。全く同じ内容のリピートとはならないように心がけていたので、毎回その準備は大変でしたが、国内外の多くの先生方と知り合う機会を得ることができ、貴重なご指摘を受け、それによって新たな学びを得たり研究の完成度を高めていけたりすることがまた楽しく刺激的でした。発表のためにいろいろな場所に出かけられることも、旅行好きの自分にはとても楽しみでした。そんなド派手な研究生活を経験したおかげで、今後もぜひ研究を続けたいという気持ちを強くして大学院を修了しました。
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続きはGazette7号で!松崎先生の記事をはじめとして、読み応えたっぷりの季刊誌です。

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