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イギリスで独立!帰国して日本の大学教授に

新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生化学分野 教授
照沼美穂

はじめに

 中学の時に読んだ西丸与一先生の「法医学教室の午後」という本で法医学に興味を持ったのが最初なのかもしれません。大学に入学後には医学部法医学教室に出入りさせていただき、DNAフィンガープリント法や血液検査法など、様々な研究手法があることを学びました。このこともあって、基礎配属では生化学を選択して大腸菌を用いた研究や抗体の作製などのお手伝いをさせていただき、研修医をせずにそのまま大学院に入学することにしました。学部生の頃にはまだ歯科医師として働く可能性を捨てていた訳ではありませんが、大学院修了時には研究者になることは心に決めていました。

今の職業に就くためにどう動きましたか?就職に成功した秘訣は?

 私自身、幼少期を海外で過ごしたことや大学院時代にUCL(University College London)で様々な国の研究者と出会ったことから、ポスドクは海外でやりたいと思っていました。日本に帰ってくるつもりも無かったです。ポスドク時代のボスは大学院生だった私を知っていたので、すんなりと雇っていただけました。もちろん雇用されてからは、自分でフェローシップを獲得するなど、それなりに努力しました。PIになる人生が大きく開けていったのは、ボスがラボのポスドクの将来について色々と考えてくれる人で、必要なサポートを積極的に行ってくれたからでしょうか。ジョブインタビューも、ボスが有名人だったために呼んでもらえた、なんてことも数回ありました。また、ラボの先輩たちが次々とPIになっていくので、その様子を間近に見ることができていたのも幸運だったと思います。私が独立する場所に選んだイギリスのレスター大学はボスの知り合いはいなかったのですが、私の研究内容と先方のニーズが合致していたことが大きかったと思います。私がイギリスの大学で研究した経験があったこともオファーをいただけた理由の一つになったようです。イギリスに移ってから3年後に日本に帰国したのですが、きっかけは、前任の教授が退官される2年ほど前に、その大学の先生から後任にどうか、とのお話をいただいたからです。もちろん、公募が出たのでアプライしたのですが、お話を頂かなかったら帰国することは全く考えなかったと思います。ちょうどブレグジットでイギリス国内がザワザワしていた時期だったので、帰国もいいかな、と思いました。どうやったら日本での教授のポジションが獲得できるのか、などと質問されることもあるのですが、基本的には選考する立場の先生に名前を挙げてもらえるようにネットワークを大事にすることと、推薦していただけるような実績(研究、研究資金、教育など)をきちんと作っておくことでしょうか。推してくださる先生がいるというのは大きいです。ネットワーキングのためには、少しでも帰国する気持ちがあるのでしたら日本の学会には参加していた方が良いと思います。

他の進路と比べて迷ったりしましたか?

 両親は私が歯科医師としてのキャリアを選ぶと考えていたようですので、その気持ちを思うと迷いはありました。しかし、最終的には自分が本当にやりたいことを選択しました。

今のご職業を含め、生活の満足度は?やりがい?夢?

 今の生活には大変満足しています。研究の面ではスタッフや大学院生の数もそれなりに増えてきましたし、毎日誰かと研究のディスカッションをしているので、一緒に悩みながら少しずつデータが積み上がっていくのを目にするのは楽しいです。日本のPIだと教育のdutyが大変だと思われがちですが、担当している学生は歯学部の2年生と3年生なので、若者たちと接するのは楽しいですし、その中に未来の研究者がいるかもしれないと考えると、教えていてワクワクします。実際に今2名の学部生が研究をしにラボに来てくれています。また、新潟大学には所属は違いますが、同じ研究分野の研究者がたくさんいらっしゃるので、気軽にディスカッションができるところが気に入っています。
 時間はかかりましたが、研究が少しずつ軌道に乗ってきて、本当の意味で独立PIとしての体制が整ってきたなと実感しています。ラボのメンバーと一緒に、神経科学、口腔医科学の分野で私らしい研究をこれから先も進めていきたいと思っています。


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