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個人的な栞(しおり)として皆さまの作品をピン留めしております。ヒマなときに見てもらうと、ひょっとしておもしろいかも。
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#コラム

13 雑然の命│随想詩

13 雑然の命│随想詩

ぼくの命は雑然としている。

何もかもが中途半端であり、とっ散らかっている。

おそらく一生このままだろう。

と思ったが、そう思うのはやめる。

この野放図にばらけていくぼくの関心が、ある日、美しく白き雪の結晶へと向けて、空気中の微塵の埃のひと粒から、軽々と成長を始めないとも限らないからな。

けれど一生このままでもいいのだ。この現状肯定こそがすべての基礎なのだ。今ここでの現実を認識しないことに

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ナイルの水を飲んだから

ナイルの水を飲んだから

「ナイルの水を飲んだ者はナイルに戻ってくる」
Once you drink from the Nile, you will come back again.

اللي يشرب من النيل لازم يرجع له تاني
読み方:イッリー・イシュラブ・ミン・ニール・ラーズィム・ヤルガア・ラフ・ターニー

エジプトには、
そんなことわざがあります。

実は、エジプトは私の初めての海外

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芥川賞162回分の選評を分析してみた

芥川賞162回分の選評を分析してみた

 前回、「小説家になろう」に投稿された新着2000作品のタイトル分析を行った。やったからといって特別なにか新しいことがわかった訳ではないのだけれど、「精読(close reading)」の対義語である「遠読(distant reading)」は何かの役に立ちそうではある。ということで、別のものを「遠読」してみることにした。

 とはいえ、ぼくとしても時間や手間がかかるようなことはしたくない。なので

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「エリートパニック」の闇

「エリートパニック」の闇

今年の初めに発覚した原発事故で 「東大の早野龍五名誉教授らが市民の被曝線量を過小評価した論文」の問題について、彼を擁護する論調を続ける人々を批判するツイートをしたことがある。

この「エリートパニック」。もう知っている人は多いだろうが、災害社会学者キャスリーン・ティアニーという人が考えた言葉で、『災害時などに、権力者や文化人など社会のエリートたちが「一般の人がパニックを起こすので

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「作家になる」とはどういうことか?

「作家になる」とはどういうことか?

「小説、書いてみたいんですよ」
 飲み屋かなにかでたまたま話すことになったおっちゃんのひとことに、ある作家はこう返したという。
「じゃあ、あなたが持っているそのiPhoneで今から書き始めたらいいじゃないですか」
 今日の話は、いってしまえばこのやりとりのことを何度も繰り返すだけだとはじめに書いておく。



 社会人1年目のとき、ものかきになるための「社会経験」として会社に入った。会社に勤めた

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「作家と名乗れば作家になれるのか」問題についておもうこと

「作家と名乗れば作家になれるのか」問題についておもうこと

 さんざん芥川賞のお祭りに乗っかっておいてなんだけれど、賞レースという競技性をたのしむことはできても、「賞」による権威がもたらす力学についてはすごく苦手だ。芥川賞の予想はたのしい。だけど芥川賞がすべてじゃない。とでもいえばわりとありがちな話になるし想像もしやすいかもしれない。その想像でたぶん正しい。

 ずっと悩んでいることがあって、それは「ぼくは作家なのか?」ということだった。じつは「作家」を自

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友だちが芥川賞をとった件

友だちが芥川賞をとった件

新潮で町屋良平『1R1分34秒』が掲載されてすぐに読み、これはぜったいに芥川賞をとると確信していろんなひとに即LINEを送ったのだが、いざほんとうに受賞となるとすごく不思議な気分になる。
かれらしい控えめで謙虚な受賞会見で質問を受けていた赤い上着は、町屋良平が文藝賞を受賞した際にかねてからの友だちたちのあいだで行ったちいさなお祝い会で着ていたものだ。質問に「一張羅です」とこたえたその赤い上着が2年

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日本はもうだいぶ寒いらしい

日本はもうだいぶ寒いらしい

「ハーイ、ゲンキ?ノミイコウヨ」

これがボブの常套句だった。
ボブは繁華街から少し離れたところにあるおっぱいパブのキャッチだ。
でもいつ見ても全然仕事してねえ。

「ワタシト イッショニ ノモー!」

これだけ聞くと商魂たくましい思われるだろうが、ボブは真剣に私をキャッチするつもりはない。
仕事中に
"うちの店でも、どこでもいいから飲もうぜ"
と言っているのだ。
とんでもねえ。

それでも一応、

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おもしろきことなき批評を面白く -星新½「時事ショートショート」集-

おもしろきことなき批評を面白く -星新½「時事ショートショート」集-

科学、政治、社会、ビジネス。芸能を除けば、ニュースや批評はいつだって難解だ。しかし、ちょっとしたユーモアでその壁を取り払うことは出来る。人民に批評的視点を与えることが出来る。すると、ほんの少し世界は動き出す。ニュースや季節の行事に基づく短編小説「時事ショートショート」は、そんな大袈裟な目的を持った小さな取り組みである。

作られ笑い

エモリー大学の脳外科チームは、大脳の内側面において、脳梁の辺縁

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noteが少しだけバズったこと

noteが少しだけバズったこと

私のnoteがバズらない。

そんな「夫のちんぽが入らない」みたいなフレーズを、心の中でずっと思っていた。

2月から始めたnoteの毎日更新。ありがたいことに、記事を読んでくれる方はだんだんと増えている。

だけど、PVは1記事あたり2000~3000くらいで、一向にバズる気配がない。

DRESSやcakesで書いたものは1万PVを超えることもけっこうあるけど、それは媒体の力であって(あとスマ

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していただけると嬉しいこと

していただけると嬉しいこと

先日も書いたとおり、「夫婦でフリーランスを目指していたら貯金が尽きた」という話を書いたnoteが1万人以上に読まれた。

このnoteを読んでサポートしてくださった方がなんと9人も!

とてもありがたい。

だけど、「労働の対価」以外のお金をいただくことには、どうしても心苦しさがつきまとう。

原稿を書いて、その対価として原稿料をいただく。これなら別に心苦しさは生じない。

だけど、サポートはどう

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私のnoteが読まれない

私のnoteが読まれない

私のnoteが読まれない。

いきなり「夫のちんぽが入らない」みたいなことを言ったけど、何があったかというと、ここ最近noteの月間PVが著しく下がった。

9月半ばからグングン下がり、今は8万3000~6000くらい。

下がりはじめるまで、月間PVは10万を超えていた。8月は10万2000前後で安定していて、いちばん多いときは11万台までいった。

つまり、8月と今とではPVが2万近くも下がっ

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<昔のレコーディング雑記>その3

<昔のレコーディング雑記>その3

アナログマルチレコーディング時代の思い出を、さらに幾つか。

レコーディングは、リズム録り~各種ダビング~MIX(トラックダウン)~マスタリング~カッティング(アナログ盤当時は)と続き、プレス行程に入りアナログレコードが完成する。

各工程で様々な逸話が存在するが、もちろん僕より詳しい人が大勢いるので(汗)なにとぞ突っ込みはご勘弁を笑。記憶違いや思い違いもありますのでご容赦ください。

<アナログ

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世の中ちょうどよいことが起こりにくくなっている。鋭角な集中か閑散か。これを俯瞰したとき果たして富は増す方向なのか否か。多くの人にとって喜ばしいことなのかそうでないのか。もし喜ばしくないなら解決方法には高い価値がある。