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せーかつ

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まいにちのららら。*・゚
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#生活

好きな色、それぞれ。

好きな色、それぞれ。

プロジェクトがひと段落し
メンバー数名で、簡単な打ち上げでも、
ということになりました。

小料理屋さんで
夏めいたおばんざいをいただきながら、
私は、皆が楽しそうに話すのを
聞いていました。

おしゃべり好きが集まっている今日の会。
ひょんなことから話題は
「好きな色」の話になりました。

テンポよい掛け合いを聞きながら、
私もこころのうちで
自分の、好きな色のことを思いました。

私にもつい、

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小雨の朝と社会人

小雨の朝と社会人

小雨の降る朝でした。

車での通勤中。赤信号で止まっていると
目の前の横断歩道を
ひとりの女性が横切っていきます。

傘をさしながら歩くその方は
ズボンのスーツに、低いパンプス。
前髪は、七三に分けてぴっちり横に流し
長い髪を後ろでひとつに結っています。

気持ちのよい身だしなみです。
この方もいま、出勤するところなのでしょう。

雨の中でも
シャキシャキと歩くその方の姿に
ふと思い出したのは

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連休明けのロッカールーム

連休明けのロッカールーム

その日は少しばかり早く出社をして
職場のロッカールームに着きました。

大型連休明け、初日の出勤日。

デスクに着くと始まるであろうお仕事ラッシュに
やや心が滅入るな、と思いながら
ふぅ、と息をついていると
コンコン、と元気にドアがノックされました。

開けられたドアのほうに目を見やると
立っていたのは、先輩職員のKさんでした。
いつも気さくに接してして下さる方で、
私にとってはお姉さんのような存

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四月には 心を輪にする演出を

四月には 心を輪にする演出を

金曜、四月から入社されたTさんの
歓迎会が開かれました。

和ふうの、小洒落たお食事処に集まったのは
同じ課に所属する、十人。
年代は色々ですが、全員が女性です。

掘りごたつの個室で、
ひと続きのテーブルに
十人が五人ずつ、向かい合うように座ります。
皆が席に着くと前菜が手早く提供され、
一杯目の飲み物が行き渡りました。

「Tさん、これからよろしくお願いします。
では、かんぱい」
上司の音頭の

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菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花が
風に吹かれて
ゆうらり、ゆうらり、と波を打ちます。

一面の黄色。ビタミンイエロー。
花盛りを迎え、
彩度に満ち満ちた葉の花のパノラマが
目の前に広がっています。

黄色い海のように広大な光景も、
そのひとつひとつをよく見ると
それは小さな花たちの集合体。
すっくと伸びた茎先が枝分かれして
そこにいくつもの十字状の花を
ほころばせています。

今日は、近隣の町で開かれた
菜の花まつりにや

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パ リ の 花 束

パ リ の 花 束

エメラルドの瞳、白い肌、
栗色にカールのかかった髪。

ひとりの青年と、すれ違いました。

パリの街は曇り空。
風はなく、穏やかで
過ごしやすい気候です。
カフェのテラス席では
人々が、おしゃべりと軽食を楽しんでいる
そんな午後のことでした。

青年は
細いフレームの丸眼鏡をかけ
白シャツに黒のニット、
それから
ネイビーのオーバーコートを重ねています。

個性のあるお店が立ち並ぶ鮮やかな通りで、

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本を「聞く」ことが好き

本を「聞く」ことが好き

深い瑠璃色の空に
一、二粒の星が
音もなく点る如月の早朝。

私は、パジャマに
あたたかい上着を羽織って
ひとり、キッチンに立ちます。
それから
携帯電話を片隅に置き、
液晶の上の再生ボタンを押して
昨晩の続きをリクエストします。

ナレーターの方の声が
シンとしていた空気の中に、
しっとり響きゆくのを聞きながら
私は、朝食の支度にとりかかります。

流れるのは
川端康成作「伊豆の踊子」。
ナレー

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お い と ま の 流 儀

お い と ま の 流 儀

たとえば小さなベーカリーで

楽しみにしていた
お目当ての商品が売り切れていたとき、
あなたは、どうされますか?

私は、以前まで
こじんまりとした商店では
何も買わずにお店を出ることに
少々きまりわるさを感じて

売り場にある商品を適当に見繕い、
買って帰ることがしばしばありました。

レジのところに
店員さんがいらっしゃる手前、
スーッと入ってきてスーッと出てゆくのは、、と
ヘンに気を巡らせて

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あなたが名前をつけるなら?

あなたが名前をつけるなら?

大学の友人たちと、久しぶりの再会。
なじみのカフェで
めいめいに好きな飲み物を注文して、
話に花を咲かせます。

そのなかで私はふと、
そんなことを尋ねました。

ひとりが、「私はね、」と話し始めました。

キラキラと楽しげに話す彼女。
洋画が好きな彼女らしい、
小粋なアイデアです。

つづいて、もうひとりが言いました。

菫やあやめ、桜に楓。
小さなことに目を向けて、心を動かせる人は
いま、それ

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27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

書店で偶然手にした本を
何の気なしにぱらぱらとめくり、
ふと目を落としたその先に
そんなことが、書かれていました。

色鉛筆で描かれた
さらりとシンプルな装丁。
目を引く黄色い帯には
『求めるのは「しあわせ」よりも「安心」』
と書かれています。

それは、松浦弥太郎さん著書
『松浦弥太郎の「いつも」
安心をつくる55の習慣』という本でした。

書かれている言葉を
目で追うごとに、
なにか、腑に落ち

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まいにちの 暮らしのなかに 在る言葉

まいにちの 暮らしのなかに 在る言葉

あまりにありふれた言葉なので
ふだんは
深く考えず使っているものの、

よくよく見つめてみると
その言葉の持つやさしさに
はっとすることがあります。

**

急ぎの用事のために、私は
小走りでアパートの廊下を渡り、
階段へ向かいました。

低いヒールをカツカツカツと鳴らすようにして
階段を下り終え、
勢いよく道へ出たときです。
アッ! と思いました。

目の前に、女のひとです。
こちらに向かって

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ステキな笑顔の裏側に。

ステキな笑顔の裏側に。

店内に、綺麗なピアノの音色が
流れ始めました。

中庭に面した大きな窓には
午後のまぶしい光を背にして
男の人の横顔とグランドピアノのシルエットが
浮かんでいます。

「ここのお店ね、13時になったら
ピアノの生演奏が始まるの。
その席からだとよく見えるでしょう?
ぜひ楽しんでほしいなと思って
予約の時、席まで指定させてもらったの。」

弘子さんは
頬にキュートなえくぼをつくりながら
ふふふ、と笑

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日曜、花咲く庭先で

日曜、花咲く庭先で

シャワーを上に向けて
ゆるやかな弧を描くように、花へ水をあげると
降り注ぐ水のカーテンに、
陽の光が反射して
ちいさな虹ができるのが
ちょっとした、朝の楽しみです。

虹の先では
水が柔らかく花にあたり、
花はやや重たそうに
からだをゆったりと弛ませますが

数分もすると
光と水をたっぷり吸って
すくっと背を伸ばし、
今日もまたひとつ
蕾から花へと、姿を変えてゆきます。

日課となった、庭に咲く花

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「♥」を因数分解してみたら

「♥」を因数分解してみたら

「先生、センスってどうすれば
身につくんでしょうか」

その日の授業も終盤に差し掛かったという頃、
私は先生に質問をした。

仕事後に通っていたデザイン教室。
デザイナーである先生は
自宅の一室を開放して
社会人向けの夜間講座を開いている。

唐突な質問に

「そうだねえ、
これはあくまで僕の意見だけれど」
と前置きをして
先生は答えを返してくれた。



教室で私は、毎回四苦八苦しながら
ポス

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