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ち あ き
2024年7月1日 21:05
プロジェクトがひと段落しメンバー数名で、簡単な打ち上げでも、ということになりました。小料理屋さんで夏めいたおばんざいをいただきながら、私は、皆が楽しそうに話すのを聞いていました。おしゃべり好きが集まっている今日の会。ひょんなことから話題は「好きな色」の話になりました。テンポよい掛け合いを聞きながら、私もこころのうちで自分の、好きな色のことを思いました。私にもつい、
2024年6月18日 21:00
小雨の降る朝でした。車での通勤中。赤信号で止まっていると目の前の横断歩道をひとりの女性が横切っていきます。傘をさしながら歩くその方はズボンのスーツに、低いパンプス。前髪は、七三に分けてぴっちり横に流し長い髪を後ろでひとつに結っています。気持ちのよい身だしなみです。この方もいま、出勤するところなのでしょう。雨の中でもシャキシャキと歩くその方の姿にふと思い出したのは数
2024年6月2日 18:16
その日は少しばかり早く出社をして職場のロッカールームに着きました。大型連休明け、初日の出勤日。デスクに着くと始まるであろうお仕事ラッシュにやや心が滅入るな、と思いながらふぅ、と息をついているとコンコン、と元気にドアがノックされました。開けられたドアのほうに目を見やると立っていたのは、先輩職員のKさんでした。いつも気さくに接してして下さる方で、私にとってはお姉さんのような存
2024年4月21日 17:25
金曜、四月から入社されたTさんの歓迎会が開かれました。和ふうの、小洒落たお食事処に集まったのは同じ課に所属する、十人。年代は色々ですが、全員が女性です。掘りごたつの個室で、ひと続きのテーブルに十人が五人ずつ、向かい合うように座ります。皆が席に着くと前菜が手早く提供され、一杯目の飲み物が行き渡りました。「Tさん、これからよろしくお願いします。では、かんぱい」上司の音頭の
2024年3月10日 17:02
菜の花が風に吹かれてゆうらり、ゆうらり、と波を打ちます。一面の黄色。ビタミンイエロー。花盛りを迎え、彩度に満ち満ちた葉の花のパノラマが目の前に広がっています。黄色い海のように広大な光景も、そのひとつひとつをよく見るとそれは小さな花たちの集合体。すっくと伸びた茎先が枝分かれしてそこにいくつもの十字状の花をほころばせています。今日は、近隣の町で開かれた菜の花まつりにや
2024年2月14日 06:02
エメラルドの瞳、白い肌、栗色にカールのかかった髪。ひとりの青年と、すれ違いました。パリの街は曇り空。風はなく、穏やかで過ごしやすい気候です。カフェのテラス席では人々が、おしゃべりと軽食を楽しんでいるそんな午後のことでした。青年は細いフレームの丸眼鏡をかけ白シャツに黒のニット、それからネイビーのオーバーコートを重ねています。個性のあるお店が立ち並ぶ鮮やかな通りで、
2024年2月4日 18:19
深い瑠璃色の空に一、二粒の星が音もなく点る如月の早朝。私は、パジャマにあたたかい上着を羽織ってひとり、キッチンに立ちます。それから携帯電話を片隅に置き、液晶の上の再生ボタンを押して昨晩の続きをリクエストします。ナレーターの方の声がシンとしていた空気の中に、しっとり響きゆくのを聞きながら私は、朝食の支度にとりかかります。流れるのは川端康成作「伊豆の踊子」。ナレー
2024年1月21日 06:02
たとえば小さなベーカリーで楽しみにしていたお目当ての商品が売り切れていたとき、あなたは、どうされますか?私は、以前までこじんまりとした商店では何も買わずにお店を出ることに少々きまりわるさを感じて売り場にある商品を適当に見繕い、買って帰ることがしばしばありました。レジのところに店員さんがいらっしゃる手前、スーッと入ってきてスーッと出てゆくのは、、とヘンに気を巡らせて
2023年12月18日 05:58
大学の友人たちと、久しぶりの再会。なじみのカフェでめいめいに好きな飲み物を注文して、話に花を咲かせます。そのなかで私はふと、そんなことを尋ねました。ひとりが、「私はね、」と話し始めました。キラキラと楽しげに話す彼女。洋画が好きな彼女らしい、小粋なアイデアです。つづいて、もうひとりが言いました。菫やあやめ、桜に楓。小さなことに目を向けて、心を動かせる人はいま、それ
2023年9月10日 21:14
書店で偶然手にした本を何の気なしにぱらぱらとめくり、ふと目を落としたその先にそんなことが、書かれていました。色鉛筆で描かれたさらりとシンプルな装丁。目を引く黄色い帯には『求めるのは「しあわせ」よりも「安心」』と書かれています。それは、松浦弥太郎さん著書『松浦弥太郎の「いつも」安心をつくる55の習慣』という本でした。書かれている言葉を目で追うごとに、なにか、腑に落ち
2023年3月3日 08:34
あまりにありふれた言葉なのでふだんは深く考えず使っているものの、よくよく見つめてみるとその言葉の持つやさしさにはっとすることがあります。**急ぎの用事のために、私は小走りでアパートの廊下を渡り、階段へ向かいました。低いヒールをカツカツカツと鳴らすようにして階段を下り終え、勢いよく道へ出たときです。アッ! と思いました。目の前に、女のひとです。こちらに向かって
2022年6月7日 08:00
店内に、綺麗なピアノの音色が流れ始めました。中庭に面した大きな窓には午後のまぶしい光を背にして男の人の横顔とグランドピアノのシルエットが浮かんでいます。「ここのお店ね、13時になったらピアノの生演奏が始まるの。その席からだとよく見えるでしょう?ぜひ楽しんでほしいなと思って予約の時、席まで指定させてもらったの。」弘子さんは頬にキュートなえくぼをつくりながらふふふ、と笑
2022年6月1日 18:54
シャワーを上に向けてゆるやかな弧を描くように、花へ水をあげると降り注ぐ水のカーテンに、陽の光が反射してちいさな虹ができるのがちょっとした、朝の楽しみです。虹の先では水が柔らかく花にあたり、花はやや重たそうにからだをゆったりと弛ませますが数分もすると光と水をたっぷり吸ってすくっと背を伸ばし、今日もまたひとつ蕾から花へと、姿を変えてゆきます。日課となった、庭に咲く花
2022年5月18日 18:26
「先生、センスってどうすれば身につくんでしょうか」その日の授業も終盤に差し掛かったという頃、私は先生に質問をした。仕事後に通っていたデザイン教室。デザイナーである先生は自宅の一室を開放して社会人向けの夜間講座を開いている。唐突な質問に「そうだねえ、これはあくまで僕の意見だけれど」と前置きをして先生は答えを返してくれた。*教室で私は、毎回四苦八苦しながらポス