日曜、花咲く庭先で

シャワーを上に向けて
ゆるやかな弧を描くように、花へ水をあげると
降り注ぐ水のカーテンに、
陽の光が反射して
ちいさな虹ができるのが
ちょっとした、朝の楽しみです。

虹の先では
水が柔らかく花にあたり、
花はやや重たそうに
からだをゆったりと弛たゆませますが

数分もすると
光と水をたっぷり吸って
すくっと背を伸ばし、
今日もまたひとつ
蕾から花へと、姿を変えてゆきます。


日課となった、庭に咲く花のお世話。

ビジョザクラ、マーガレット、
アリッサム、デージーといった
色も形も高さも異なる花々が
風に揺られて、
今日も元気に咲いています。

＊

先日、お花屋さんで見つけて
新しく庭に仲間入りした、八重咲きの紫陽花は
中心が淡い青紫で、縁に向かって
白く滲むグラデーション模様。
ひかる星のような花は顔を寄せ合って咲き、
清楚でいて華やかです。

紫陽花の前にかがんで、よく眺めると

先ほどあげた水が、玉になって
葉や花の上にコロンと転がり、
紫陽花はガラス細工のおめかしをしたように
いっそう美しく見えます。

「あら、綺麗やねえ」


声の方を向くと
隣に住むおばあさんでした。
おばあさんは花をつくる農家さんをされていて
平家のお家に面した畑には
季節ごとに、さまざまなお花が咲いています。

「昨日、お花屋さんで見つけて、一目惚れです」

「紫陽花があると、梅雨の時期も楽しみよね」


おばあさんの丸く、ふっくらした笑顔。
お花がくれる、季節のたのしみを
一緒に喜んでくれる人がいると思うと嬉しくて、
紫陽花が素敵にほころぶ雨の季節が
ちょっと待ち遠しくなりました。

＊

せっかくだからと庭に椅子を出して
お花見しながらのモーニングにしました。
くるみといちじくのベーグルに
たっぷりのホットミルク。
それからお供に、本を一冊。
吹く風が、裸の足をなでて
どこか、懐かしい心地がします。

今日は、固くない、
やわらかい自分でいましょう。
引っかかりの無い
なめらかな自分でいようと
心がけましょう。

暮らしのヒント集3  松浦弥太郎

なんとなく開いたページに見つけた
素敵なことばを
心の中で繰り返します。

＊

本から目をあげると
紋白蝶がぱたぱたと翅をはためかせ、
庭に遊びにきていました。
時に隣の畑とを行ったり来たりしながら
花の蜜を存分に楽しんでいるみたい。

青い空とそよ風、
それと元気に、楽しそうに咲く花。


今日は宝物のような日、
と思いました。