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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2023年12月の記事一覧

罪の轍 (奥田 英朗)

罪の轍 (奥田 英朗)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 このところこういったジャンルの本はあまり読まないのですが、ちょっと前に評判になった小説なので、手に取ってみました。
 いまだにかなり人気のある本のようで、図書館で予約してから貸し出しまで約10か月かかりました。

 ミステリー小説なので、ストーリーに関してはコメントは控えます。

 読み終えた感想ですが、読み始めた当初は、期待していたほど

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宇宙飛行士は見た 宇宙に行ったらこうだった! (山崎 直子)

宇宙飛行士は見た 宇宙に行ったらこうだった! (山崎 直子)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 山崎直子さんご本人のTwitterへの投稿で知った本です。
 完全に児童向けのつくりですが、面白そうなので手に取ってみました。

 たくさんの質問に対する回答という形式なのですが、その質問が多種多様で恥ずかしながらこの本で初めて知った事柄も数多くありました。

 たとえば、その中からひとつ、「宇宙空間の温度」について。地球からの高度によっ

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教養としての「世界史」の読み方 (本村 凌二)

教養としての「世界史」の読み方 (本村 凌二)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 ありがちなタイトルですが、素直に釣られて手に取ってみました。

 時系列を辿るのではなく、「文明の誕生」「ローマの興亡」「民族の大移動」といったテーマごとに俯瞰的にトピック的史実の連関を論じていきます。

 さて、各論の中での気づきを紹介する前に、まずは著者本村凌二東京大学名誉教授の「歴史の捉え方」の基本スタンスについて開陳しているくだり

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ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法 (ちきりん)

ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法 (ちきりん)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 ネットの世界では超有名な「ちきりん」さんの著作です。タイトルに惹かれて手に取ってみました。

 ちきりんさんのBlogで発信した記事に手を入れて再録したものとのこと、“ちきりんさん流の「生き方」” が生活のさまざまな場面を捉えて紹介されています。
 その「生き方」とはこういったものです。

 この「ちきりんさん基準」の考え方のススメは、最

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日本問答 (田中 優子・松岡 正剛)

日本問答 (田中 優子・松岡 正剛)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 変わったタイトルだったので目に付きました。

 松岡正剛さんも著者のひとりということで挑戦することにしました。対談の相方は社会学者(法政大学総長(注:当時))田中優子さんです。

 まさにお二人ならではのとても面白そうなテーマの対談だったのですが、私にとってはちょっと荷が重すぎました。著者と読者の持っている基本的な知的素養の量と質があまり

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上を向いて歩こう (佐藤 剛)

上を向いて歩こう (佐藤 剛)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 いつも聞いているpodcastの番組に著者の佐藤剛さんが登場したとき話題になった本なので、気になって手に取ってみました。

 坂本九さんの代表曲「上を向いて歩こう」をテーマにしたノンフィクションです。
 確かにとても興味深いエピソードが盛りだくさんの内容ですが、その中から私の印象に残ったものをいくつか書き留めておきます。

 まずは、「上

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陰謀の日本中世史 (呉座 勇一)

陰謀の日本中世史 (呉座 勇一)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 以前読んだ出口治明さんの本で紹介されていたので手に取ってみました。

 なかなか “刺激的なタイトル” ですが、単に「陰謀論」を紹介しているのではなく、実しやかに語られる陰謀論を論理立てて論破していく内容です。

 論破の対象は “史実(と主張されるもの)” ですから、論破の根拠は現存している「文献史料」が主になります。そして根拠の正当性

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データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (伊藤 公一朗)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (伊藤 公一朗)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 Twitterの投稿でお薦め本として紹介されていたので手に取ってみました。

 ちょっと前に出版された本ですが、その時には「データ分析の入門書」としてかなり評判が良かったようです。

 まずは、この手の入門書としては定番の「因果関係と相関関係とは違う」という点の解説から始まります。

 このイントロダクションの後に、「因果関係の存在の有無

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「民都」大阪対「帝都」東京 (原 武史)

「民都」大阪対「帝都」東京 (原 武史)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

タイトルに惹かれて手に取った本です。

 著者の原武史さんは、「東京」&「大阪」、「国鉄」&「私鉄」を対置しつつ論を組み上げていきますが、その内容は日本思想史的な色合いで、ちょっと予想外のものでした。

 「はじめに」の章で、著者は、人文思想的側面から、鉄道を “シンボリックな装置” として位置付けています。
 それは、東京にとっては「国民

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寒い国から帰ってきたスパイ (ジョン・ル・カレ)

寒い国から帰ってきたスパイ (ジョン・ル・カレ)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 ちょっと前に読んだ手嶋龍一さんの本(汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師)で紹介されていたので手に取ってみました。

 海外のスパイ小説としては、以前、フレデリック・フォーサイスあたりは何冊か読んだことがあるのですが、恥ずかしながら、このジャンルの巨匠ジョン・ル・カレの作品はこれが初めてです。なので、最初の代表作のこの作品を選んでみた

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思考の技術 - エコロジー的発想のすすめ (立花 隆)

思考の技術 - エコロジー的発想のすすめ (立花 隆)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 立花隆さんの著作は久しぶりです。タイトルもシンプルで直截的ですね。
 1971年が初版の立花さんのデビュー作とのこと。本書を手に取ると、ある種「古典」に向き合うようなピリッとした心持ちになります。

 さて、読み終えてみての素直な感想ですが、驚くべきことに、書かれている内容についていえば、その本旨は現代にもそのまま通用するものでした。
 

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これからの時代を生き抜くための生物学入門 (五箇 公一)

これからの時代を生き抜くための生物学入門 (五箇 公一)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 Webマガジンのお薦め記事で紹介されていたので、手に取ってみました。

 期待していたとおり、(ダニや昆虫関係のウェイトが高かったのですが)生物学・生態学に関わる “興味深いエピソード” が数多く記されていました。

 まずはタイトルにもある「生き抜く」というコンセプトに密接に関連した「進化」についての基本事項の押さえから。

 “環境へ

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エネルギーの物語:わたしたちにとってエネルギーとは何なのか (マイケル・E・ウェバー)

エネルギーの物語:わたしたちにとってエネルギーとは何なのか (マイケル・E・ウェバー)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 “持続可能な社会”というコンセプトが世界的にも市民権を持ち始め、「CO2排出量削減」「再生可能エネルギーへの転換」に大きく世の中が動き始めている昨今、私も仕事がら「エネルギーの将来」については少々関心があります。この本もそういった問題意識から手に取ってみました。

 著者は、「水」「食糧」「輸送」「都市」といった身近な事物を材料に、それら

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汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 (手嶋 龍一)

汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 (手嶋 龍一)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 よく聞いているPodcastのバックナンバーの番組で紹介されていたので手に取ってみました。

 著者の手嶋龍一さんはNHKの海外特派員としてよく知られていますが、その経験を活かしてインテリジェンス小説も書いているんですね。
 本書は、サブタイトルに「インテリジェンス畸人伝」とあるように、フィクションではなく「人物評伝」です。

 その人物

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