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倉橋耕平 『歴史修正主義とサブカルチャー』 : わが友ネトウヨ

書評:倉橋耕平『歴史修正主義とサブカルチャー』(青弓社)

とにかく長い時間、身を持ってネトウヨとつきあってきた奇特な人間としては、本書に、これといった発見はなかった。
私は10年以上にわたり、千人をゆうに超えるネトウヨと、数千時間もやりあってきたのだから、私より二十も若い著者の仕事を貶めるつもりなど毛頭ありません。本書は、私のそれのような「無駄な時間」を過ごしたくない、多くの読者に読まれるべき本だと思います。

私が長い長い体験を通して到った、ネトウヨに対する態度とは、まさにこれです。

『 分析を終えた私の目には、歴史修正主義者(ここでは限定せずにネトウヨ的な存在も含めよう)との「対話」は困難に映る。少なくとも彼らとの間の溝は広がっているように見える。この状況への「処方箋」はあるのだろうか。
 考えられる一つの方法は、歴史修正主義者を「ちゃかす」ことである。しかし、これが可能なのはごく一部の人に限られる。なぜなら、彼らを俯瞰してやりこめるためには、彼らの「熱量」に見て取れる非常に膨大な量の言説や揶揄をさばくだけのメディア・リテラシーと正しい知識が必要だからだ。また、彼らのメディア・リテラシーの高さ(内容の正しさの精査というよりも、言説空間のノリや情報機器へのリテラシーの高さ)もネックになる。』(P228)

そう。私の自慢は、ネトウヨになど劣らない「熱量」。
ネトウヨのお相手は、いくら頭が良くても知識があってもダメ。もちろん、それが無くては話になりませんが、絶対に必要なのは「こちらがいかに嫌な思いをさせられようと、相手の心臓に、こちらの言葉を刻み込んでやる」という、損得抜きの「執念」です。
それが無い人は、「はい、論破。尻尾巻いて逃げ出しやがったぞ」と挑発的に勝ち誇ってみせるネトウヨたちを背に、「バカを相手にしたって時間の無駄」という正論をもって煮えくり返った腹を抑え込んで、「私は負けたわけではない」と自分に言い聞かせながら、その場から立ち去るしかないのです。

しかし、私は基本的に「貴族主義的快楽主義者」なので、「損得」ではなく「気持ち」の方を選ぶため、愚かにもネトウヨを相手にしたのでした。
もちろん、それが「時間と労力の損失」でしかないのは重々承知していますから、こちらからわざわざ出かけていってケンカを吹っかけるわけではないのですが、視野に入ってきた汚物を放置しておくことは出来ない性分なので「じゃあ、その汚れ仕事をせいぜい楽しもうか」ということになる。

例えば、私は1年ほど前まで「mixi」をやっていたのですが、そこで「ネトウヨ弄り」を徹底的にやったために、ネトウヨに嫌がられ、管理者通報されて、アカウントを凍結されてしまいました。
じつを言うと、私は10年ほど前にも同じことをしてアカウントを止められており、ひさしぶりにmixiに復帰して「今度はケンカはしないようにしよう」と思いながら再開したはずなのに、半年ほど経った頃にはまた同じことをして、再開1年ほどで二度目のアカウント凍結を食らったのでした。

さて、mixiには、「虎の穴」という承認制のコミュニティーがあります。今もまだ、あると思います。

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「キングタイガー」というハンドルネームの人が主催しているのですが、コミュに参加していない(非承認)者が閲覧できる範囲には、何のコミュニティーなのかの説明がなされていないという、いかにも怪しいコミュです。ただ、mixiのシステム上、メンバーリストを見ることだけは出来るので、それをチェックしてみると、ここには「タイガー・ザ・グレート」だとか「タイガーバーム」といった、タイガーを名乗るメンバーが結構いて、このコミュがアニメ『タイガーマスク』に登場する「悪役レスラー養成組織」を模したコミュであることがわかる一方、アイコンに日章旗をあしらったようなメンバーが多いという事実も確認できます。

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そして、こういう特徴的なハンドルネームを持つメンバーが、政治関連の「mixiニュース」に、いかにも彼ららしいコメントをつけ、それに即座にたくさんの「イイネ」がつくという、このamazonレビューでも見られる行動(リベラルな書物について、内容の無い「星1つの悪意レビュー」が投稿され、それにたくさんの「参考になった」が付くというアレ)からも、このコミュの意味が、おのずと推察できるのでした。

で、私はこういう「世論誘導」的なコメントに対し、リベラルとしてのまともに反論するのではなく、「ネトウヨコニュ『虎の穴』のメンバーさんですね。今日もお勤めご苦労さま」というようなコメントを付して、からかいながらの「枠付強調」をして回りました。所詮、いまや廃れきったmixiで「世論誘導」も何もないんですが、それでも目につくと放っておけない。

そんなわけで、だんだん私の日記にイヤガラセのコメントが寄せられるようになり、それに対しては、その人の(mixiでの)ホームページを確認し、捨てアカウントだとわかれば「ネトウヨコミュ「虎の穴」のメンバーさん、捨てアカウントでご苦労さまです」とからかい、捨てアカウントでなければ、相手のところまで出向いて、相手の日記にコメントし「ところで、○○さんはネトウヨなんですね? いや、保守と言うべきでしょうか?」などと、マイミクの見えるところで枠付強調をしてやったりしました。

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(※  私に絡んできた「虎の穴」のメンバー)

また、私の日記に、客観的第三者を装ってつまらないコメントをしてきたネトウヨに対しては、相手のつまらない議論には乗らず「ところで、あなたはネトウヨですか?」と尋ね、(必ず否定するのですが)否定すれば「ネトウヨって、バカばかりですよね。どう思います?」とか「あの『虎の穴』ってコミュ、否定してますが、どう見たってネトウヨコミュでしょ。それにしても『タイガーマスク』を持ち出すくらいだから、コミュ主催者は五十は下らないんじゃないかな。よくやりますよね。雑魚ばかりコメントに来られてもつまらないので、キングタイガーさんが直々に来てくれるよう伝言願えませんか」などと、相手を弄り倒していました。

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で、そんな私に手を焼いたネトウヨたちが何をするか。
仲間を呼び寄せて、その場での「見せかけ上の多数意見」をでっち上げ、マウントを取ろうとしたのですが、何人来ようと、私が「ああ、やはり一人では手に余ったので、お仲間登場ですか」などとからかい続け、結局、のべ8人くらいがコメントしに来て、それにまた私がコメントを被せるということを2ヶ月ちかくやり、最後は「人肉捜査するぞ」なんて、本性丸出しでいきり立つような者まで出てきましたが「それは脅迫罪になりますよ。他の方も共犯になる。もちろんログは採ってますし、コメントのスクリーンショットも撮っていますよ」といった具合に脅迫し返したりして、しつこくコメントを被せているうちに、さすがの彼らも「こんな頭のおかしい奴を相手にするのは時間の無駄だ」と捨て台詞を残して、ほぼ一斉に去っていきました。ま、こんな勝利は虚しいのですが、彼らの心に爪痕を残したのは間違いないと思います。
で、その後しばらくして、アカウントを止められたというわけです。

私としては、これは自慢話のつもりはありません。ネトウヨを相手するというのは、これくらいの「熱量」が必要だというのを、具体的な事例として示したかったのです。

無論、こんなことをしても、それでネトウヨがいなくなるわけでもないし、何の解決にもならないのは、当事者である私自身が、誰よりもよく知っています。
ただ、こうした膨大なやりとりを通して、彼らネトウヨがどういう「人間」なのかを学んだというのは事実であり、その意味で、ネトウヨをよく知っていると言う資格ならあるだろうと思っているのです。私は「図上訓練」の人ではなく、豊富な「実戦」経験者であるというのは、間違いない事実だからです。
(ちなみに、mixi第1期の時には「マルコポーロ事件」の西岡昌紀が「南京事件」について講釈を垂れていたので、「何人殺せば、虐殺になるんですか? ソンミ村は何万人も殺してないけど、虐殺と呼ばれますよね」などと質問して、無視されたりしました)

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では、こんな私に、ネトウヨや歴史修正主義者についての処方箋があるのかと言えば、無論そんなものはありません。
彼らは大概「頭はよくない」(学力ならある場合もある)し「本を読まない」し「承認欲求が強い」し「一人では何もできない」というのは、すでに周知の事実なのですが、その事実を私たちが認識したり指摘したりすることと、その病いを癒すことは同じことではないのですから、事は簡単ではないのです。

ただ、ひとつ言えることは、どんなに下らない連中であろうと、彼らを見下すことで自己満足するだけでは、何も変わらないというのは間違いないでしょう。
だからひとまず、うんざりしながらでも、無理のない程度には、関わり続けることが大切なのではないかと思うのです。
少なくとも私には、彼らの苛立ちや絶望そして少々の狂気が、リアルな息づかいとして感じられはしたのでした。

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【関連レビュー】
・ネトウヨでもパヨクでも楽しめるロリコン漫画
 一一小林拓己『愛国少女ウヨ子ちゃん』(青林堂)

※ 私の「からかい」方の実例です。

初出:2019年5月5日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)

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