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実行性を担保するための「各種計画書への記載必須事項(撤退条件設定)」考察

昨今、中長期経営計画というフレーズ、特に「中長期」という言葉が死後に成りつつあるような印象を感じています。皆さんの会社、グループでは如何でしょうか。

あまりにも、企業、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しく、数年先を読むという難しさが増しているということが言われています。特に、ビジネスのグローバル化進展に伴う「株主重視発想」という観点から、短期での収益(投資回収)確保への動きが進んでいるということが挙げられるかもしれません。(ビジネスのグローバル化が避けられない時代にあっては、日本人特性の「細く(収益率は低くても)長く(安定)」を求めた取り組み方(経営)が難しい時代と言えます。1980年代の「JAPAN AS №1」時代が懐かしい…..)

ただ、「企業を経営する」という観点で、「計画作り」は無くてはならないものであるということに、異をとなえる方は少ないと思います。「投資をする」、「投資を募る」ためには、必須のことです。さらに、期待する成果を得る期間の短さとは関係なく、あらゆる計画の「実効性担保(期待する収益獲得)」の重要性が高まっているものと考えています。

そこで、今更ではありますが、改めて「計画の立案(投資回収が出来るかという判断材料)」にあたり、盛り込むべき要件について考察したいと思います。良く言われているように、「5W1H」は言うまでもありませんが、それに加え、「2A1K1F」を加えた考え方を提唱したいと考えています。
特に、KPIとして、「撤退条件」を明確にしておくことが重要であると考えています。 

以下に、その項目内容、その記載目的などについて紹介します。

【最低限の設定項目】

A : Aim  (狙いを定める)
・計画に示される「目標、目的」を明記。
・計画内容の共通認識化、共有化を図る。
・収益計画を明記。

W : Why  (何故?)
・どうして、今計画したことが必要なのかを明記。
・対象市場、対象者(実践者)のモチベーション、意識付けという観点から記述すること。

W : What
・取り組むべき施策を明記。
・計画に盛り込まれた目的を達成するために行う施策を明記。

W : Where
・取り組むべき個々の施策に対する具体的な対象を明記。
・対象とする「市場、部門(組織)、業務、プロセスなど」を明記。

W : Who
・Who-1(利害関係者)
  ・個々の具体的な施策に対し、どのような(社内外)利害関係者が存在するかを明記。

・Who-2(実行者、関係者)
  ・個々の具体的な施策に対し、誰が責任を持って進めるか(実行するのか)を明記。
  ・実施にあたり、定常業務内で可能か、専任化が必要か明記。(調整可能性、対策を明記)

・Who-3(解決者・解決可能組織)
  ・利害、留意事項、課題などの発生時に対し、それを解決しえる人物、組織関係を明記。
  ・誰が対処するか、出来るかを明記。

W : When (何時までに)
 ・施策目標達成時期に加え、個々の施策の構築期間、実現時期を明記。(スケジュール)
 ・施策ごとの「中・短・長期」区分けの明記。(中:3年以内、短:半年から1年程度、長:5年程度)
 ・収益(投資回収)時期を明記。

H : How
 ・明記された個々の施策を実現するための、具体的な取り組みを明記。(方法論の明記)
 ・組織変更、人事異動、採用などの有無、可否を明記。
 ・合わせて、実現優先度についてを明記。

K : KPI (Key Performance Indicator)
 ・目標達成評価指標、施策実施時の目標指標を明記。
 ・定量、定性的の両面での達成評価指標を明記。
 ・「成功追求型設定」ではなく、「撤退条件」の併記を必須に。

A : Attention
 ・実行にあたり、起こり得る「障害事項、留意事項、課題等」に関する事項を明記。
 ・合わせて、解決可能者、組織(Who-3)などを明記。(転記可)

F : Follow
 ・どの様なフォローが求められそうか、その際、どの様にフォローするかまでを明記。(Attention事項ごとに明記)
 ・Follow-1(立案時)
   ・各施策の「立案、計画時」における、フォロー方法を明記。
   
 ・Follow-2(構築中)
   ・各施策の「構築中」における、フォロー方法を明記。

 ・Follow-3(カットオーバー後)
   ・各施策の「実践中(達成期間)」における、フォロー方法を明記。
   

当たり前のこととして、既に取り組まれているということではあるとは思いますが、再検証して頂く際のひとつの材料になればと考えています。

同じような取り組みとして、「PDCA」という考え方がある思います。
「Plan・Do・Check・Action」ですが、取り組み方の表現としては少し粗いという印象を持っていました。語り言葉としては、非常にわかりやすいのですが、具体的に内容を規定する際には、マチマチ感が否めない(人によって記載事項が異なってしまう)のではないでしょうか。

ということで、各社に於かれて「A+5W1H+K+A+F」の10項目が最低限網羅がされているかを、改めて確認、検証して頂ければと考えています。

特に、これも日本人特性によるところが大きいと考えていますが、「成功思考型」発想が主流であり、成功する(黒字化)まで「投資を継続してしまう」傾向が高いということが挙げられます。それにより「負債」が膨らみ、二進も三進もいかなくなって、初めて「撤退」という2文字が語られることになってしまうことが起こっていなかったでしょうか。

そうした「無理・無駄」を防ぐためにも、今後は、開始(決裁)するにあたり、「撤退条件」を明確にしているかを判断ポイントの一つとしておくということが重要だと考えています。そうすることで、余計な投資を避けるとともに、新たな取り組みへの「余力」を残すということが必要な選択であると考えています。

もちろん、これまでも投資回収期間を設定(「いつまでに」を設定)していることで、回避可能と考えられると思われているかもしれません。しかし、その時期が来てもなかなか「やめよう」「やめるべき」ということを言い出せる環境、雰囲気が持てない場合が多かったのではないでしょうか。特に、その時に「権力を持っている人が推進していること、そういう方が支持していること」だったりすると……。また、「もう1年、もう少しで……」という言葉にすがりつく(誰も赤字のまま終了させたくない、責任を少しでも軽減したい・・・・)傾向が高くなっていなかったでしょうか。その要因の一つが、「成功型」での思考で承認されることであり、明確に「撤退条件」を宣言していないからではないかと考えています。(計画時に、撤退条件などが記載されていると、それだけで「後ろ向き」「消極的」などと思われてしまうことの回避)

皆様の会社では、如何でしょうか?


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