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ぼくとカエル

ぼくとカエル

あのさ、話をきいて欲しいんだけど
なんだい?

ぼくは何もできない自分が惨めで仕方がないんだよね
呼吸をしているじゃないか

違うんだ、そういう話じゃない
じゃあどういう話なんだい?

ぼくは今のままではダメなことをわかってても
うん。

…こわくて何もできないんだ。
うん。

え?何も言ってくれないの?
だってきいてって言われたから

あ、うんじゃあさ何か意見がほしいな

俺はカエルだけど、少し

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好きな自分を殺さないために

情景の温もりは浸っていたくなる。
肩まで浸かったぬるま湯のように、少し立ち上がっては直ぐに外の寒さに驚いて体を沈めたくなってしまう。
実家に帰る電車で田んぼが増えてくると、どこか安心している自分がいる。
窓の外を見れば、開けた視界と都会より高く感じる青空、きっと建物の背がすべて低いせいだろう。
田んぼ道の用水路なんかには子供がいて、もしかしたら過去の自分もいるんじゃないかと思い、どこかで探している

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オール夢オチペインティング

オール夢オチペインティング

【恋人】という存在。
自分に対しては優しくても優しくなくてもどっちでもいい特別扱いされたくない、いや恋人って特別扱いの最たる例やとは思うけど
人間に興味のない博愛主義者みたいなんがすきなんやろ?あたし。
あらもしかしてかなりのあまのじゃく子なんかしら。
それにしたってヤマトは、可も不可もなく「ヤマト」だった。
これを特別って言うんだと思う、たぶん。
昨今の粉チーズ不買行動には胸焼けがする。
ピザに

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【エッセイ】「ただ、そうなっている」としか言いようのない朝

【エッセイ】「ただ、そうなっている」としか言いようのない朝

モーニング・ルーティーンについて書いてみる。30歳の男が毎朝何をやっているのか、知ったところで何の参考にもならないだろうけど、書いてみる。

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安心な僕らは旅に出ようぜ

安心な僕らは旅に出ようぜ

日記っていうのは、ノートっていうのは、
思ったことをただ文字に書き起こすだけで
よくって、ていうか、それすらしなくてもいい
ことなんだけど、でも私は文字がすきだから毎回
律儀に書き起こす。弟がダチのガキを呼んで、
隣の部屋でどんちゃん騒ぎをしている!

知らぬ土地 初めていく駅 知らない匂い

優しいおじちゃんはどこにでもいるけど、
ジャズロックカフェを経営する、優しくて面白くてかわいーおじちゃん

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共鏡

共鏡

いつも意味のない傘を差して歩く。前の日の疲れが残ったまま、強引に目を開けて鏡の前に立った。ヘアアイロンを通した。その前髪がうねっていく。構わず金曜日の中華料理屋に入る。

「一名様ですか?」
「待ち合わせをしていて、あとでもう一名来ます。」
「一名様ですか?」
「二名なのですが、待ち合わせなんです。」

おそらく母語が中国語の店員さんには伝わらなかった。それでも金曜日の中華料理屋では、私も店員さん

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春の星

指先から春になった、わたしは大好きな歌を口ずさみながら、
誰もいなくなった地球を歩いている。
夜なんてものが本当にあるとしたら、きっとこんな表情をしているんだろう。
つま先まで春になった、だけどわたしはひとりぼっちで、
生き物たちをずっと探している。人をずっと探している。
いつまでたっても、春になっても、世界は全然あたたかくならない。
誰も冬眠からさめない。
だからわたしは、夜空に指先で、
春の星

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世界から置き去りにされたとて。

世界から置き去りにされたとて。

ヒルナンデスで田崎真也がブイブイ言わせていた頃、僕は引きこもり6年目に突入していた。
と言ってもすでに実家はないので、アクセスの良い友人の家をただひたすらにはしごする、放浪という名のこもりであった。

日中は適当な場所でストリートマジックをしながら小銭を稼ぎ、合間の時間は天使探しにいそしんでいた。

まだ僕が自動車整備士だった頃、アトピーと不眠症と深酒が爆発した夜に天使は現れた。
ブライアン・メイ

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月にご老人とお巡りさん

月にご老人とお巡りさん

月を見る。今日も少し欠けている。不意に見える。あ、こんなにも欠けていたのか。近くに明るい星もあるではないか。そんな日々は平穏であり、いつまでも続いてほしいと願うばかり。まだ赤みが残る時は、静かな様子。真上から煌々と照り下げる時は、目一杯の力を込めて目から光が弾けそうな様子。カメラのシャッターを切ろうとしても、元気すぎてよく映らない。まだまだ科学には負けません、と言わんばかりの滅裂スプラッシュを放っ

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円環を塗り潰す

円環を塗り潰す

あの人のことを怖がってはならないよ。あの人に君の話が通じると思ったとしても、実際にそんなことなど出来るはずもない。君が怖がるべきは、君の話を聞いたフリをして、悩める君に向かって頷いてみせる連中だ。奴らに君の辿り着いたそれらの観念について、その一片であろうと触れさせてはならない。

君があの子たちの見せびらかす膝小僧に夢中になるような男の子ではないことくらい、昔から知っている。階段の端を音を立てずに

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月を見つけた瞬間が好き。でも人前で「月がきれいですね」と言わなくなった話。

月を見つけた瞬間が好き。でも人前で「月がきれいですね」と言わなくなった話。

月を見つけた瞬間が好き。
見つけた瞬間が好きなだけで、別に月に強い関心があるわけじゃない。

ずーっと眺めていたら結構はやめに疲れてくるタイプだと思う。
別に、月の構成物質も知らないし、裏側に誰が住んでいるのか興味があるわけでもない。

***

見つけた瞬間だけが好き。
例えば、夜空に満月がこうこうと輝いているのを見つけてしまったらスルーできない。

絶対言いたい。
「月、超きれいだね!」
とか

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浅縹と微睡(あさはなだとまどろみ)

浅縹と微睡(あさはなだとまどろみ)

これは現在販売中の青の写真シリーズ「浅縹と微睡」の裏側の世界のショートエッセイです。ぜひ作品と照らし合わせながら楽しんでいただけたら幸いです(作品リンクはエッセイの終着点からどうぞ)

* * *

「微睡む」という言葉が好きだ。
どこが好きかを聞かれると、具体的にこれ!と断定できるものは何ひとつ無いのだけれど、薄紫色に染まる空や、綻び始めた花の濡れた優しい花弁のような、そんな優しい時間の並列に並

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空にこんなにも言葉が溢れてくるのだから

空にこんなにも言葉が溢れてくるのだから

ふわり、と起きれた。
こんな日は誰かに手紙を書きたくなる。

昔のことを思い出す。淡々と流れる時間をなぞったかと思ったら、心臓がどきりと沈む言葉を投げかけたり。昔を思い出すとはなかなか重い。どうしてふわりとした気持ちは風といっしょに空気へ浮かんでいってしまうのか。暗い気持ちほど重く胸に残るのか。

そんな思いがさらりと香る、朝の電車に木漏れ日がきらり。吸い込まれるようにずんずんと進む綺麗なガタンゴ

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海に沈んだ

海に沈んだ

 たった数行の手紙すら書き終えることができません。率直な気持ちを書き連ねても二言三言で止まってしまう。不特定多数に読まれるのであれば、このような気苦労もなく、気のきいた冗談でも思い浮かぶのでしょうが、素直な言葉をまとまった形にするのは気恥ずかしくもあり、なかなか上手くいかないものです。

 あの日は雪が降っていましたね。プラットホームに人影もなく、並んでベンチに座っていました。覚えていますか。とっ

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