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共鏡

いつも意味のない傘を差して歩く。前の日の疲れが残ったまま、強引に目を開けて鏡の前に立った。ヘアアイロンを通した。その前髪がうねっていく。構わず金曜日の中華料理屋に入る。

「一名様ですか?」
「待ち合わせをしていて、あとでもう一名来ます。」
「一名様ですか?」
「二名なのですが、待ち合わせなんです。」

おそらく母語が中国語の店員さんには伝わらなかった。それでも金曜日の中華料理屋では、私も店員さんもにこにこしていた。

友達がやって来た。ついさっきまで心電図をつけていた彼女は、生ビールを2杯流し込んだあとで、紹興酒を熱燗で頼んだ。赤いテーブルに小さなグラスがふたつと、小瓶が置かれた。店員さんはまだにこにこしていた。

初めて食べる酢豚にはパイナップルが入っていなかったけれど、初めて飲む紹興酒の隣には、ザラメの小瓶が添えられていた。35歳の離れた友達は、レモン汁をもらえないことを残念がっていた。

耳も喉も焼けない。

大事をとって、いつもより早めに別れた。金曜日の店を出るときに、遠くの棚に飾ってあったシェフと木村洋二との記念写真を見て、友達が
「あれはリーチ・マイケル?」
と言った。

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