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ち あ き
2023年3月26日 20:49
薄手のワンピースにスプリングコートを羽織って耳元には、ロゼ色の小粒なピアスを。いつもよりちょっとだけお洒落をして家を出ました。今日は、主人と、久しぶりのデートです。仕事終わりの彼と本屋さんで待ち合わせしてからふたり、バスに乗りました。向かう先は先日満開の報せがあった、桜公園です。*ゆったりとそぞろ歩く人波に合わせて園内へ入ると、そこはもう花の路。満開を迎え
2023年3月3日 08:34
あまりにありふれた言葉なのでふだんは深く考えず使っているものの、よくよく見つめてみるとその言葉の持つやさしさにはっとすることがあります。**急ぎの用事のために、私は小走りでアパートの廊下を渡り、階段へ向かいました。低いヒールをカツカツカツと鳴らすようにして階段を下り終え、勢いよく道へ出たときです。アッ! と思いました。目の前に、女のひとです。こちらに向かって
2023年1月17日 18:38
ラベンダー色の空に星の光が瞬きはじめた、夕と夜の間。ホールの扉が開きます。背広、蝶ネクタイ、ワンピース、着物、、思い思いに洒落こんだ大人たちが会場内へ、足早に流れてゆきます。音楽の都、ウィーンからやってきた管弦楽団のニューイヤーコンサート開演までもう、まもなくです。*日ごろのご褒美にと、夫婦会議を開催してちょっぴり背伸びをして取ったコンサートのチケット。管弦
2023年1月4日 07:01
少しだけ背筋をシャンとさせてキチンと手を合わせて、みんなで「いただきます」と声を揃える、お正月の朝。黒い漆塗りのお椀の蓋をそっと開けると、穏やかな湯気がふわふわとあがります。お出汁にお餅が溶けだした、ほんのり甘い匂い。やわらかい匂い。いつもの、お正月の匂いです。澄んだおつゆの中でトリや白菜、しいたけと一緒に丸もちはふくよかに煮えています。その上に、ぽっちり浮かぶ橙色のお
2022年11月11日 07:05
リビングの扉を開けると部屋に、西日が差していました。斜めの日差しが、波打つレースカーテンの縦縞を通過してソファに、床に、光を投げています。ワックスの効いた木目の床に光が反射して、部屋全体が明るい色をしています。昼間、ついうたた寝をして起きてみるとすっかり夕方になっていたのです。やさしく揉みほぐしたような夕陽のぬくもり。手のひらで受けるとそれはふっくらとあたたかく
2022年10月19日 17:08
ひんやりする朝。ちょっと、あたたかくなれるものを食べたい、そんな朝です。キッチンに立って思い付いたのは子供のころ、日曜日に父がよく作ってくれた朝ごはんでした。作りやすいふたり分の分量を、ここに書いてみます。炊きたてのごはんに鰹のふりかけをさっくり混ぜ込んでお椀に二膳、よそっておきます。つづいて玉子を2コといて牛乳を大さじ2ほどと、塩を少々。タネを作ります。
2022年10月9日 05:02
澄んだ空の一端を紡いで織り上げたような淡水色のドレス。シフォンのヴェールを幾重にも重ねてつくられたスカートには、ガラスの粒が贅沢に、繊細にあしらわれています。動き合わせてやわらかな煌めきがスカートの上を走り、まるで瞬く流星のようです。私には勿体無いほどのその美しいドレスに身を包んで前へ、前へ。彼の肘に手をかけ生花に彩られた会場の中を進みます。十月の、透き通るよ
2022年6月7日 08:00
店内に、綺麗なピアノの音色が流れ始めました。中庭に面した大きな窓には午後のまぶしい光を背にして男の人の横顔とグランドピアノのシルエットが浮かんでいます。「ここのお店ね、13時になったらピアノの生演奏が始まるの。その席からだとよく見えるでしょう?ぜひ楽しんでほしいなと思って予約の時、席まで指定させてもらったの。」弘子さんは頬にキュートなえくぼをつくりながらふふふ、と笑
2022年1月12日 18:57
こたつに入ってみかんを頬張りながら今までコツコツと貯めてきたレシピの棚卸しを実施。大学生の頃から綴ってきたレシピノートは地味に3冊目を迎えている。作って美味しかったものだけを書き留めているのだけど特にカテゴリを設けるでもなくその日その日で記録しているので後でもう一度作ろうとしてもレシピを探し出すのに一苦労なのだ。まずは主菜別にわけてみようかそう思いつつペラペラとペ
2021年10月21日 22:11
誕生日。久しぶりに両親に手紙を書く。今日までのことを思い返して文字を綴っていると知らないうちに目に涙がたくさん溜まってぽたぽたこぼれて、ちょっと困った。自分で書いてて泣いちゃうなんて。って思ったけれど心が持たなくて休職してたあのころ、ひたすら泣いている私を「大丈夫、大丈夫」とそっと抱きしめてくれた父の、オムレツみたいに優しかった手とか「人の役に立とうなんて今は
2021年1月22日 15:30
今日はぷかんと浮かぶお花を書いた。赤のチェックがよく似合う。影がゆらゆらしてる。透けてるって可愛い。私が休職して間もない時。休みをもらったのに毎日泣いて、ボロボロになって早く人の役に立てる人間にならなきゃ今の自分ではダメなんだ。常に焦って追い込んでいた。そんな時、母は私に言った。今は焦らなくていい。ほかの誰かの役に立とうなんてそんなこと考えなくていい。ま