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せーかつ

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まいにちのららら。*・゚
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#しあわせ

真っ白なノートの上に

真っ白なノートの上に

机の上には
ノートと万年筆、
カップに淹れた茜色の紅茶。
それから、読みさしの本が1冊。

そうして、栞を頼りに
本を開いたら、
私の、好きな時間のはじまりです。

万年筆にインクを十分に充填して
姿勢をととのえて
書かれている文章に目を落として。

本の中の、
美しい響きの言葉や
新鮮に感じる表現、
思わず共感する部分だったり、
心に触れた台詞を
真っ白なノートの上に
ひとつひとつ、拾い集めてゆ

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帰り道の秋キャフェ

帰り道の秋キャフェ

映画を観た帰り道に
キャフェへ寄りました。

時計は十六時をまわったところ。
磨きあげられたガラスのドアを押すと
店内は、なかなか賑わっています。

私は栗のパウンドケーキと
カフェラテをお願いして
入口から離れた
店内をゆったり見渡せる席をとりました。

このお店を利用するお客さんは
テイクアウトとイートインが
半はんといった具合で、
おしゃべりに夢中の学生さんたちや
ゆったりと本を読む白髪の女

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七夕の夜、北欧ビストロ。

七夕の夜、北欧ビストロ。

家に帰ってからの楽しみがあると、
つい、帰宅の足取りが弾んでしまいます。

今夜はあいにく、
雨模様の七夕だというのに
ちっとも気にかかりません。

その訳はほかでもなく
楽しみな夜ごはん。

先週末に読んだ本、
北欧の暮らしについて書かれたその本に
興味をそそられて
“今夜はおうちで、北欧ビストロを” と
ひとり、たくらんでいるのです。



キッチンに立ち
冷蔵庫から取り出したのは
じゃがい

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読書好きなあの子への贈りもの

読書好きなあの子への贈りもの

第一子の出産を、8月に控え
里帰りをした友人へ
郵便を出しました。

同封した
“おすすめ図書のしおり”には
こんな本を載せました。

*------------------*

○ 愛のエネルギー家事

心を健やかに整える「きっかけの言葉」に出会えますように。この本には、やさしい暮らしを送るためのヒントがいっぱい。本田亮さんが描かれている挿絵は、見ているだけでほっこりしてきます。心がすこし疲れた

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ほのぼの、おいしいお味噌汁日記。

ほのぼの、おいしいお味噌汁日記。

あなたの、朝ごはんの定番は何ですか。

私はもっぱら
ご飯にお味噌汁、カンタンなおかずといった
和ふうの朝食です。

あついお味噌汁を啜り
ふっくら炊けた白米を頬張ると、
身体の芯がホカホカとして
少しずつ目が覚めてゆきます。

それでも
品数が少ない朝ごはんですから、
満足感を足すために工夫しているのが、
お味噌汁です。
季節の野菜を使うことはもちろん、
本で読んだ新しいレシピを試したり、
思い

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まいにちの 暮らしのなかに 在る言葉

まいにちの 暮らしのなかに 在る言葉

あまりにありふれた言葉なので
ふだんは
深く考えず使っているものの、

よくよく見つめてみると
その言葉の持つやさしさに
はっとすることがあります。

**

急ぎの用事のために、私は
小走りでアパートの廊下を渡り、
階段へ向かいました。

低いヒールをカツカツカツと鳴らすようにして
階段を下り終え、
勢いよく道へ出たときです。
アッ! と思いました。

目の前に、女のひとです。
こちらに向かって

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17:00  よりみちパン屋さん

17:00 よりみちパン屋さん

かるい気分転換にと
ほんのり暮れていく町を
気まかせに散歩していた時のことです。

大きな通りを折れ、
路地を少し入ったところに、ぽつんと
みかん色に灯っている窓が目に入りました。

ふつうのお家のようですが
よくよく見ると看板が立っています。
黒い板に白いチョークで書かれているのは
「本日のぱん」という文字と
英文字のメニュー。

あら、こんなところに、
隠れ家のようなパン屋さんです。

木製の

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隠し味は、ひと匙の心意気

隠し味は、ひと匙の心意気

町の台所として親しまれる、
古い商店街のすみっコで
おばあちゃんたちが営んでいるお惣菜屋さん。

赤いチェックのテーブル掛けが広がる机には
小松菜と油揚げのお浸し、塩鯖、
胡瓜とわかめの酢の物、ひじきの煮物、
唐揚げ、いりこの甘辛煮など

昔ながらの素朴なお惣菜がパックされ
山になって並んでいます。

***

大学一年の春。

入学式を終えた日の帰り道に
そのお惣菜屋さんを見つけました。

店頭

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日曜、花咲く庭先で

日曜、花咲く庭先で

シャワーを上に向けて
ゆるやかな弧を描くように、花へ水をあげると
降り注ぐ水のカーテンに、
陽の光が反射して
ちいさな虹ができるのが
ちょっとした、朝の楽しみです。

虹の先では
水が柔らかく花にあたり、
花はやや重たそうに
からだをゆったりと弛ませますが

数分もすると
光と水をたっぷり吸って
すくっと背を伸ばし、
今日もまたひとつ
蕾から花へと、姿を変えてゆきます。

日課となった、庭に咲く花

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--- 人と人の  あいだ  を繋ぐ糸 ---

--- 人と人の あいだ を繋ぐ糸 ---

冷たい雨の降る土曜日。

立春も過ぎたというのに
ほんものの春が来るのはまだ、
幾分先のことみたいです。



やって来たのは一軒のカレー屋さん。
気分まで塞ぎがちなこんな日は
刺激的なスパイス料理に力をもらおう作戦です。

外壁に這う深みどりの蔦は
屋根の方まで登っています。
店内は昭和ふうの装いで
ラジカセから、歌謡曲が
遠く懐かしく流れてきます。

カウンター席に女の人がひとり。
あとはテ

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花に 音楽を添える 時

花に 音楽を添える 時

静かな部屋にひとり、
ソファに体育座りして
肌なじみの良いブランケットにくるまっている。

午前8:20。

少し疲れたので、今日は
お休みを取った。
体調崩壊前の予防的休暇取得である。
大切なお休み、なにをしようか。

部屋の中を見回すと
外から注ぐ、白くて淡い光が
窓辺に広がっていた。

今日は、天気がいいらしい。



先日お家に迎えたアネモネの苗は
あれから次々に新たな蕾をつけ、
ぷっく

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坂 の 上 の う つ わ 屋 さ ん

坂 の 上 の う つ わ 屋 さ ん

小高い坂の上にあるうつわ屋さんは
とても可愛らしい佇まい。

真っ白な壁に濃いブルーの屋根、
木製のドアと大きな窓。
アトリエとお店がひとつづきになっています。

のどかな街にぽつんと現れる
この可愛い器のお店を訪れたのは
まだ暑さの残る秋の日のことでした。

きっかけとなったのは
SNSで見かけた、ひとつの器。

ポテッとした丸みのあるフォルム。
正円に近い形の取っ手。
注ぎ口の、チュッととかが

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○ 週 末 ひ と や す み 遠 足 ○

○ 週 末 ひ と や す み 遠 足 ○

部屋中に
ふんわりお米の香りが立ち込める。

炊飯器の蓋を開けて
釜からホワンと溢れる湯気を
手で仰いでこちらに引き寄せ
鼻から思い切り
吸い込む、吸い込む。

たくさん、たくさん吸い込んで
胸の隅っこの方まで
ごはんの香りで満杯にする。

炊きたてのご飯と焼きたてのパン。
好きな匂いのツートップ。
年中無休で嗅いでいたい。

つやつやごはんの表面に
杓文字を十字にさっくり入れる。
少し硬めに炊い

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〒 長月の - お手紙時間

〒 長月の - お手紙時間

届いた手紙を取っておくための箱が
半分くらい埋まり始めている。
箱・第二号をそろそろ
用意した方がいいかもしれない。

大学の頃の友人と文通を始めて
1年半になる。

やさしくて読書家で繊細で、
好きだと思うものが似ている友人が
いてくれることは私の心の支えだ。

だから私は、友人へ送る手紙には
あらゆる方法で心を込める。

読書にぴったりな春の日の手紙には
和紙でできた薄桃色の栞を入れてみたり、

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