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ち あ き
2023年10月15日 20:30
机の上にはノートと万年筆、カップに淹れた茜色の紅茶。それから、読みさしの本が1冊。そうして、栞を頼りに本を開いたら、私の、好きな時間のはじまりです。万年筆にインクを十分に充填して姿勢をととのえて書かれている文章に目を落として。本の中の、美しい響きの言葉や新鮮に感じる表現、思わず共感する部分だったり、心に触れた台詞を真っ白なノートの上にひとつひとつ、拾い集めてゆ
2023年9月29日 20:41
映画を観た帰り道にキャフェへ寄りました。時計は十六時をまわったところ。磨きあげられたガラスのドアを押すと店内は、なかなか賑わっています。私は栗のパウンドケーキとカフェラテをお願いして入口から離れた店内をゆったり見渡せる席をとりました。このお店を利用するお客さんはテイクアウトとイートインが半はんといった具合で、おしゃべりに夢中の学生さんたちやゆったりと本を読む白髪の女
2023年7月9日 20:47
家に帰ってからの楽しみがあると、つい、帰宅の足取りが弾んでしまいます。今夜はあいにく、雨模様の七夕だというのにちっとも気にかかりません。その訳はほかでもなく楽しみな夜ごはん。先週末に読んだ本、北欧の暮らしについて書かれたその本に興味をそそられて“今夜はおうちで、北欧ビストロを” とひとり、たくらんでいるのです。*キッチンに立ち冷蔵庫から取り出したのはじゃがい
2023年6月30日 21:49
第一子の出産を、8月に控え里帰りをした友人へ郵便を出しました。同封した“おすすめ図書のしおり”にはこんな本を載せました。*------------------*○ 愛のエネルギー家事心を健やかに整える「きっかけの言葉」に出会えますように。この本には、やさしい暮らしを送るためのヒントがいっぱい。本田亮さんが描かれている挿絵は、見ているだけでほっこりしてきます。心がすこし疲れた
2023年5月13日 13:43
あなたの、朝ごはんの定番は何ですか。私はもっぱらご飯にお味噌汁、カンタンなおかずといった和ふうの朝食です。あついお味噌汁を啜りふっくら炊けた白米を頬張ると、身体の芯がホカホカとして少しずつ目が覚めてゆきます。それでも品数が少ない朝ごはんですから、満足感を足すために工夫しているのが、お味噌汁です。季節の野菜を使うことはもちろん、本で読んだ新しいレシピを試したり、思い
2023年3月3日 08:34
あまりにありふれた言葉なのでふだんは深く考えず使っているものの、よくよく見つめてみるとその言葉の持つやさしさにはっとすることがあります。**急ぎの用事のために、私は小走りでアパートの廊下を渡り、階段へ向かいました。低いヒールをカツカツカツと鳴らすようにして階段を下り終え、勢いよく道へ出たときです。アッ! と思いました。目の前に、女のひとです。こちらに向かって
2023年2月9日 11:52
かるい気分転換にとほんのり暮れていく町を気まかせに散歩していた時のことです。大きな通りを折れ、路地を少し入ったところに、ぽつんとみかん色に灯っている窓が目に入りました。ふつうのお家のようですがよくよく見ると看板が立っています。黒い板に白いチョークで書かれているのは「本日のぱん」という文字と英文字のメニュー。あら、こんなところに、隠れ家のようなパン屋さんです。木製の
2022年7月9日 21:22
町の台所として親しまれる、古い商店街のすみっコでおばあちゃんたちが営んでいるお惣菜屋さん。赤いチェックのテーブル掛けが広がる机には小松菜と油揚げのお浸し、塩鯖、胡瓜とわかめの酢の物、ひじきの煮物、唐揚げ、いりこの甘辛煮など昔ながらの素朴なお惣菜がパックされ山になって並んでいます。***大学一年の春。入学式を終えた日の帰り道にそのお惣菜屋さんを見つけました。店頭
2022年6月1日 18:54
シャワーを上に向けてゆるやかな弧を描くように、花へ水をあげると降り注ぐ水のカーテンに、陽の光が反射してちいさな虹ができるのがちょっとした、朝の楽しみです。虹の先では水が柔らかく花にあたり、花はやや重たそうにからだをゆったりと弛ませますが数分もすると光と水をたっぷり吸ってすくっと背を伸ばし、今日もまたひとつ蕾から花へと、姿を変えてゆきます。日課となった、庭に咲く花
2022年2月23日 05:50
冷たい雨の降る土曜日。立春も過ぎたというのにほんものの春が来るのはまだ、幾分先のことみたいです。*やって来たのは一軒のカレー屋さん。気分まで塞ぎがちなこんな日は刺激的なスパイス料理に力をもらおう作戦です。外壁に這う深みどりの蔦は屋根の方まで登っています。店内は昭和ふうの装いでラジカセから、歌謡曲が遠く懐かしく流れてきます。カウンター席に女の人がひとり。あとはテ
2022年1月28日 22:06
静かな部屋にひとり、ソファに体育座りして肌なじみの良いブランケットにくるまっている。午前8:20。少し疲れたので、今日はお休みを取った。体調崩壊前の予防的休暇取得である。大切なお休み、なにをしようか。部屋の中を見回すと外から注ぐ、白くて淡い光が窓辺に広がっていた。今日は、天気がいいらしい。*先日お家に迎えたアネモネの苗はあれから次々に新たな蕾をつけ、ぷっく
2022年1月23日 06:18
小高い坂の上にあるうつわ屋さんはとても可愛らしい佇まい。真っ白な壁に濃いブルーの屋根、木製のドアと大きな窓。アトリエとお店がひとつづきになっています。のどかな街にぽつんと現れるこの可愛い器のお店を訪れたのはまだ暑さの残る秋の日のことでした。きっかけとなったのはSNSで見かけた、ひとつの器。ポテッとした丸みのあるフォルム。正円に近い形の取っ手。注ぎ口の、チュッととかが
2021年10月16日 07:19
部屋中にふんわりお米の香りが立ち込める。炊飯器の蓋を開けて釜からホワンと溢れる湯気を手で仰いでこちらに引き寄せ鼻から思い切り吸い込む、吸い込む。たくさん、たくさん吸い込んで胸の隅っこの方までごはんの香りで満杯にする。炊きたてのご飯と焼きたてのパン。好きな匂いのツートップ。年中無休で嗅いでいたい。つやつやごはんの表面に杓文字を十字にさっくり入れる。少し硬めに炊い
2021年9月5日 15:32
届いた手紙を取っておくための箱が半分くらい埋まり始めている。箱・第二号をそろそろ用意した方がいいかもしれない。大学の頃の友人と文通を始めて1年半になる。やさしくて読書家で繊細で、好きだと思うものが似ている友人がいてくれることは私の心の支えだ。だから私は、友人へ送る手紙にはあらゆる方法で心を込める。読書にぴったりな春の日の手紙には和紙でできた薄桃色の栞を入れてみたり、