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○ 週 末 ひ と や す み 遠 足 ○


部屋中に
ふんわりお米の香りが立ち込める。

炊飯器の蓋を開けて
釜からホワンと溢れる湯気を
手で仰いでこちらに引き寄せ
鼻から思い切り
吸い込む、吸い込む。

たくさん、たくさん吸い込んで
胸の隅っこの方まで
ごはんの香りで満杯にする。

炊きたてのご飯と焼きたてのパン。
好きな匂いのツートップ。
年中無休で嗅いでいたい。

つやつやごはんの表面に
杓文字を十字にさっくり入れる。
少し硬めに炊いたお米は
粒が際立って美味しそう。


待てない私は思いのままに
杓文字でヒョイとごはんをすくって
あちちと言いつつひとくち分、
指でつまんで

湯気ごと口に放り込む。

ハフハフしながら
目尻はとろり。
思わず顔がにやけてしまう。

秋のごちそう、一番乗り。

炊きたてごはんは
ふっくらもちもち、少しねっとり。
一粒ひとつぶ美味しくて
これぞまさしく幸せの味。

味付けなしでも味がある。
お米そのもののすっきりした甘み。
媚びない甘さがちょうどいい。

今日はこの新米ごはんで
おむすび遠足する予定。

ラップの上にお米をのっけて
きゅっとやさしく三角に。
味は塩だけ律儀なおむすび。

せっかくだから海苔はリッチに。
有明産の特選海苔をジッパー付きの袋に入れて。

その場で新米むすびに巻いて
パリッと言わせて食べるもくろみ。

とことこトコトコ車を走らせ
海をのぞめる公園へ。

木陰のベンチは特等席。
目の前は
空と海だけ広がる世界。

水面が静かに揺れていて
空と海の境界線のところで
色彩が鏡になっている。


薄水色から白へのグラデーション。
水色ってこんなに種類があったんだ。
美しい色だけをのばした
水彩画みたいな風景。

さっそくおむすびを取り出して
海苔を巻きつつ、かぶっと頬張る。
海苔はパリッと音を立て
口の中ですぐにとろけてお米と合流。

空の下のおむすび、
最高のごはん。

おむすび遠足、ばんざい!

『効率的に!生産性を!
  時短!手軽!情報収集!
  よりオシャレに!流行優先!』

何だか速すぎる毎日。
それが最先端だというのなら、

私は週末くらい
その流れから離脱して、むしろ逆らって、
スローペースで過ごしたい。

忘れちゃいけないものを、
忘れないように。

情報に振り回されて
見失わないように。

過ぎてゆく日常に
句読点を打つような週末。

ひとやすみ、ひとやすみ。


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