本橋恵一

環境エネルギージャーナリスト 「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」など著…

本橋恵一

環境エネルギージャーナリスト 「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」など著書多数。 サブカル系ライターとしてもこっそりと活動中

記事一覧

笙野頼子はどうしてトランス排除なのか

 笙野頼子は「発禁小説集」で終わったと思っている。「質屋七回ワクチン二回」は笙野の最後の傑作だと思っている。それは、トランスジェンダーに対する妄想にとりつかれた…

本橋恵一
2週間前
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藤高和輝著「バトラー入門」と赤坂真理著「安全に狂う方法」、そしてその周辺

 ぼくにとって、ジュディス・バトラーという哲学者の存在ってとても大きいのだけれど、だからといってバトラーの哲学を理解できているわけではないのだけど。でも、それっ…

本橋恵一
2週間前
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憲法記念日に言いたいこと

 今日、5月3日は憲法記念日です。新聞などのメディアでは日本国憲法を守ろうというのと、改正しようという両方の意見がにぎやかになっています。テレビのように、あまり報…

本橋恵一
3か月前
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共通だが差異ある責任とパレスチナとESG

 ある会社のメルマガに書いた記事を再録。  なんとなく、きれいごとを言っている会社も、ESGとか言っても、今のパレスチナでのジェノサイドに対して何の声も上げない、と…

本橋恵一
5か月前
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2023年10月7日以降のジュディス・バトラーへの違和感について

 ジュディス・バトラーは、ぼくがもっとも尊敬している哲学者でありフェミニストだし、それは今も変わっていない。それでも、2023年10月7日以降の、イスラエルによるパレ…

本橋恵一
6か月前
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オウンドメディアについて考える(5)YouTube体験記

 すみません、このシリーズをすっかり放置していました。  他の仕事に追われて、ずっと書きそびれていました。  でもまあ、正月休みで時間ができたので。  オウンドメ…

本橋恵一
7か月前
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今年の読書

あまり本の話ってしていなかったので、年末くらいは、と。冬休みの読書の参考にしてください。  今年、印象に残った本はこんな感じです。  まず、今だからこそ、ガッサー…

本橋恵一
8か月前
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UNION DES GRANDS CRUS DE BORDEAUXと気候変動

COP28も始まったことだし、たまには真面目に気候変動の話をします。  といいつつ、ワインですね。  実は先日、ボルドーワインの試飲会に行ってきました。100以上のワイ…

本橋恵一
8か月前
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Matteo Colla イタリアワイン

 今年の夏ごろ、血糖値が上昇し、HbA1cが7.5%とかになっていた。血糖値というよりも、これは糖化ヘモグロビンの割合で、通常は5%台。6%を超えると糖尿病といわれてい…

本橋恵一
9か月前
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まずはオスロ合意に戻ろう

 イスラエルがガザに侵攻しようとしている。とにかく、そうした殺戮は防いでほしいし、停戦に合意してほしいと思う。  今回のきっかけとして、ハマスによるテロを「枕詞…

本橋恵一
10か月前

競馬がなくなる日

 今年4月、英国の競馬がニュースになった。「グランドナショナル」というレースで、30個の障害を飛び越え、7,000メートルも走るという、過酷なレースである。このレー…

本橋恵一
1年前
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入管法と人権後進国日本、そしてTSFD

 入管法改正が、政治のトピックスになっている、はずである。はず、というのは、このことがあまり報道されていないから。たぶん、知る限りでは東京新聞が連載までしていた…

本橋恵一
1年前
2

新刊「図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術・・・」が刊行されます。

 昨年末からつくってきた新刊「図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書」が技術評論社から刊行されます。  発売日は4月24日。  脱炭素…

本橋恵一
1年前
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長期脱炭素電源オークションには不安しかない

今年度から、長期脱炭素電源オークションというものがスタートする。これは、20年間にわたって安定して電気を供給してくれる発電所の固定費の回収を確実なものにしようとい…

本橋恵一
1年前
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立憲民主党は初心に返るべき

 最初に言っておくと、支持している政党は立憲民主党である。  そうなんだけれども、立憲民主党もなんだかぱっとしないと思っている人は多いと思う。なんだかどこかで信…

本橋恵一
1年前
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維新の会が支持を集めるのは、誰も政治に期待していないから。

 統一地方選挙の前半戦、大阪府、大阪市、奈良県の首長選は維新(日本維新の会と大阪維新の会をひとまとめにして)が勝った。大阪府や大阪市の議会でも維新が過半数を占め…

本橋恵一
1年前
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笙野頼子はどうしてトランス排除なのか

笙野頼子はどうしてトランス排除なのか

 笙野頼子は「発禁小説集」で終わったと思っている。「質屋七回ワクチン二回」は笙野の最後の傑作だと思っている。それは、トランスジェンダーに対する妄想にとりつかれた女性を主人公とした作品として、距離を置いて読むことができる。
 でも、実際には笙野自身が妄想にとりつかれており、後に「女肉男食」というヘイト本を出すにいたる。
 だからといって、それまで文壇で女性として戦ってきた笙野の作品が色あせることはな

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藤高和輝著「バトラー入門」と赤坂真理著「安全に狂う方法」、そしてその周辺

藤高和輝著「バトラー入門」と赤坂真理著「安全に狂う方法」、そしてその周辺

 ぼくにとって、ジュディス・バトラーという哲学者の存在ってとても大きいのだけれど、だからといってバトラーの哲学を理解できているわけではないのだけど。でも、それってどういうことなのか。
 その先、クイア理論があり、トランスジェンダーの問題についてはいろいろ論考を読んだりしている。
 ぼくはいちおうはシスジェンダーだしストレートなのだけれど、というところで、藤高と赤坂の本を読んでいて、まあそうかな、と

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憲法記念日に言いたいこと

憲法記念日に言いたいこと

 今日、5月3日は憲法記念日です。新聞などのメディアでは日本国憲法を守ろうというのと、改正しようという両方の意見がにぎやかになっています。テレビのように、あまり報道しないメディアもありますが。というか、テレビは大事なことは何も話さないので、これはしかたないですね。

 日本国憲法でもっとも改正の是非が注目されているのは、第9条です。これが平和憲法とよばれる根拠となっています。でも、これを改正して、

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共通だが差異ある責任とパレスチナとESG

共通だが差異ある責任とパレスチナとESG

 ある会社のメルマガに書いた記事を再録。
 なんとなく、きれいごとを言っている会社も、ESGとか言っても、今のパレスチナでのジェノサイドに対して何の声も上げない、というかイスラエルと取引しているのであれば、それはもう、ESGのSの部分でダメなんじゃないか、ESGって嘘だったのか、とか思う件。
 気候変動問題でも、先進国は「共通だが差異ある責任」というのを無視してきたし、全く同じことがイスラエルによ

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2023年10月7日以降のジュディス・バトラーへの違和感について

2023年10月7日以降のジュディス・バトラーへの違和感について

 ジュディス・バトラーは、ぼくがもっとも尊敬している哲学者でありフェミニストだし、それは今も変わっていない。それでも、2023年10月7日以降の、イスラエルによるパレスチナへのジェノサイドに対するバトラーの発言にはどこかしっくりこないところがある。
 最初に発表された文章は以下のサイトで読める。

 その後の発言についても、以下のサイトで。他にもあると思うけれども、とりあえずこんなところで。

 

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オウンドメディアについて考える(5)YouTube体験記

オウンドメディアについて考える(5)YouTube体験記

 すみません、このシリーズをすっかり放置していました。
 他の仕事に追われて、ずっと書きそびれていました。
 でもまあ、正月休みで時間ができたので。

 オウンドメディアといっても、テキストばかりではなく、動画もあります。作成した動画をYouTubeで公開するというのも、しばしば行われています。
 とはいえ、動画の再生回数はなかなか伸びないのではないでしょうか。なかなか人の目に留まる動画の作成は簡

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今年の読書

今年の読書

あまり本の話ってしていなかったので、年末くらいは、と。冬休みの読書の参考にしてください。
 今年、印象に残った本はこんな感じです。
 まず、今だからこそ、ガッサーン・カナファーニーは読んでほしい、くらいには思います。パレスチナの作家です。「太陽の男たち」はわりと有名な作品だけれど、これがパレスチナが置かれている状況の比喩でもあります。ぼくはハマスをテロだとは思っていなくて、そもそもガザに閉じ込めら

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UNION DES GRANDS CRUS DE BORDEAUXと気候変動

UNION DES GRANDS CRUS DE BORDEAUXと気候変動

COP28も始まったことだし、たまには真面目に気候変動の話をします。

 といいつつ、ワインですね。

 実は先日、ボルドーワインの試飲会に行ってきました。100以上のワイナリーがビンテージワインを持ってきています。

 通常のワインの試飲会だと、1つのワイナリーがブドウの品種が異なるものや醸造年度が異なるものなどいくつかのアイテムを持ってくるのですが、この試飲会は、そういうものではなく、基本的に

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Matteo Colla イタリアワイン

Matteo Colla イタリアワイン

 今年の夏ごろ、血糖値が上昇し、HbA1cが7.5%とかになっていた。血糖値というよりも、これは糖化ヘモグロビンの割合で、通常は5%台。6%を超えると糖尿病といわれているけれど、6%台なら薬はいらない、と医者に言われていた。まあ、食事に注意して適度な運動をしていればよかった。でも7%を超えると、治療が必要ということになる。そこで、薬を飲み始めた。
 最初に飲んだのがデペルザという、SGLT2阻害薬

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まずはオスロ合意に戻ろう

 イスラエルがガザに侵攻しようとしている。とにかく、そうした殺戮は防いでほしいし、停戦に合意してほしいと思う。

 今回のきっかけとして、ハマスによるテロを「枕詞」のように非難してから、イスラエルは侵攻すべきではない、という言い方がなされるが、ぼくはその立場をとらない。
 イスラエルがパレスチナに不法行為をはたらく限りにおいては、第一にイスラエルに責任があるし、テロのリスクを背負ってしまうことは当

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競馬がなくなる日

競馬がなくなる日

 今年4月、英国の競馬がニュースになった。「グランドナショナル」というレースで、30個の障害を飛び越え、7,000メートルも走るという、過酷なレースである。このレースで死ぬ馬もいるという。そのため、動物愛護団体がこのレースを妨害したということだ。
 レースは15分間遅れたものの、無事に開催された。出走した39頭のうち完走したのは17頭、けがをした1頭は安楽死処置がとられたという。

 正直に言えば

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入管法と人権後進国日本、そしてTSFD

入管法と人権後進国日本、そしてTSFD

 入管法改正が、政治のトピックスになっている、はずである。はず、というのは、このことがあまり報道されていないから。たぶん、知る限りでは東京新聞が連載までしていたのが、一番大きいかも。
 とりあえず、廃案になってほしいし、その先、最低限の人権が守られるようになって欲しいと思う。
 現在でも、難民認定は日本ではなかなか通らないし、通らないと収容されるか仮放免されるけど、仮放免されたところで仕事につくこ

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新刊「図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術・・・」が刊行されます。

新刊「図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術・・・」が刊行されます。

 昨年末からつくってきた新刊「図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書」が技術評論社から刊行されます。
 発売日は4月24日。
 脱炭素にかかわることを、かなり広い範囲で取り上げた本なので、入門書ではありますが、けっこう独自の視点で書いているところもあります。
 以下、「おわりに」を全文、ここにアップしておきます。
 だいたいどんな本なのか、これでわかってもらえると思

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長期脱炭素電源オークションには不安しかない

長期脱炭素電源オークションには不安しかない

今年度から、長期脱炭素電源オークションというものがスタートする。これは、20年間にわたって安定して電気を供給してくれる発電所の固定費の回収を確実なものにしようというものだ。

どうしてこんなしくみができたのか。

電力小売り全面自由化になったことで、大手電力会社は採算の合わない発電所を閉鎖していこうとした。そのため、実際に2017年、2020年、2021年の冬は電気が不足したことは記憶に新しい。

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立憲民主党は初心に返るべき

立憲民主党は初心に返るべき

 最初に言っておくと、支持している政党は立憲民主党である。
 そうなんだけれども、立憲民主党もなんだかぱっとしないと思っている人は多いと思う。なんだかどこかで信念がぐらついていて、ふらふらしているんじゃないか、と。
 旧民主党時代から、なんだかポンコツなところがあって、党首の選び方を間違えたり、小池百合子のところに走ったり、まちがった世論=メディアの印象操作にぐらついたり。
 ほんと、しっかりして

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維新の会が支持を集めるのは、誰も政治に期待していないから。

維新の会が支持を集めるのは、誰も政治に期待していないから。

 統一地方選挙の前半戦、大阪府、大阪市、奈良県の首長選は維新(日本維新の会と大阪維新の会をひとまとめにして)が勝った。大阪府や大阪市の議会でも維新が過半数を占めた。
 なんとなく、他の地域に住む人は、関西は大丈夫か?と思ってしまうかもしれない。それだけ、温度差が違うということなのだ。

 なぜ、関西で維新が強いかといえば、メディアの影響を指摘する人は多い。
 実際に、大阪のホテルに宿泊した時に、朝

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