オウンドメディアについて考える(5)YouTube体験記
すみません、このシリーズをすっかり放置していました。
他の仕事に追われて、ずっと書きそびれていました。
でもまあ、正月休みで時間ができたので。
オウンドメディアといっても、テキストばかりではなく、動画もあります。作成した動画をYouTubeで公開するというのも、しばしば行われています。
とはいえ、動画の再生回数はなかなか伸びないのではないでしょうか。なかなか人の目に留まる動画の作成は簡単ではないでしょう。まして、宣伝だけの動画であれば、あまり見てもらえないですよね。
筆者は前職で、ニュースサイトの執筆や編集だけではなく、動画のキャスターも行っていました。動画によっては10万回を超える再生回数になりましたし、登録者数も4万人を超えています。「エナシフTV」というタイトルで、今でも視聴できるはずです。オウンドメディアのサイトとしては、まあまあいい数字だと思います。
筆者はエナシフTVでは、どちらかといえばわき役でした。というか「じゃない方」の人でした。ぼくではなく、他のメンバーががんばった、というのが正直なところです。ですから、どちらかというと彼らの仕事を紹介するということになります。
でも、その中に、成功の要素みたいなものはあると思うので、そこはきちんと紹介します。
エナシフTVが始まったのは、2020年秋でした。ニュースサイトEnergy Shiftのメンバーが、勝手に始めたといってもいいでしょう。動画でニュースを紹介する、というものです。メインのキャスターがいて、ぼくはどちらかというとコメンテーターのような立ち位置で、毎日のエネルギーニュースを解説していました。
そういった取組みそのものは経営者も好きだったようで、最初は特に文句を言われることもなく、スタジオを整備したり、機材をととのえたりもしました。
その後、ニュースの数を1つに絞り、コロナ危機ということもあって、メインキャスター1人を中心に、週に一度はぼくともう一人の出演者(女性)が穴を埋めるような形で動画を作成してきました。
でも、再生回数が増えていったのは、いくつか理由があります。メインのキャスターのキャラクターのインパクトが強かったことが1つです。
また、ディレクターが動画再生の状況を分析したことも大きかったのです。
基本、早口でしゃべること。そうしないとすぐに視聴者は脱落します。脱落するスキを与えないことです。
また、時間も5分がめやす。長い時間の動画は見られません。
どんな話題が注目を集めるのかは、ネットの検索を使います。ちょうど、半導体不足が話題となっていたので、エネルギーということはさておいて、半導体テーマの動画も作成しました。このあたりは、見せたいものをつくるのではなく、見たいものをつくる、という感じでしょうか。
広告も使っています。自信のある動画が作成されたときは、インプレッションを増やします。これにより、再生回数を増やすことができます。
そして、サイト全体の評価が高まることで、広告を使わなくてもインプレッションが増えていきます。
もちろん編集作業も必要です。関心が途切れないように動画をつなぎ、必要な画像も差し込んでいきます。
二人でやりとりをしていると、「そうですね」とかワンクッションをおいたりするのですが、そういうのもカットです。
再生時刻を見ると、けっこう通勤途中で観てくれる人が多かったように思います。
このようにして考えていくと、公開した動画の視聴データをとって動画作成を修正していく、いかにもPDCAをまわしている、というあたりまえのことをしている感じですね。
ただ、ある程度、動画のつくりかたがわかってくると、最後はネタの勝負になります。
結局、いくらフォロワーが多くても、興味を持たれない動画の再生回数は1,000回にとどきません。逆に興味を持ってもらえれば、広告なしで10万回を超しました。
開始してから1年ぐらいして、もう一人のキャスターが忙しくなってきたことで、筆者の出番が増えることになります。
ではこの時期、どのようにして動画をつくっていったのか。
まず、ディレクターからは、ネタを提案されるので、それに対してリサーチし、構成を考えます。また、必要な画像も取りそろえます。
政府のサイトにある画像は基本的に出典を明記すれば問題ありません。また、企業の広報媒体についても同様です。
最初に取り組んだのは、注目の脱炭素企業です。株価を表示しながら、脱炭素の面で注目する点を紹介します。
(実は、このときの経験が、2023年12月に公開された、ダイヤモンドオンラインの記事に生かされています。2024年1月15日には週刊ダイヤモンドにも転載される予定です)
いくつか注目の企業をディレクターがピックアップし、筆者がサイトを調べます。株価がどうなっているのか、会社の沿革、注目の技術など。統合報告書もざっと見ます。
そうして構成を考え、話すポイントをまとめておきます。
収録にあたっては、この構成をまとめたものや差し込む画像を見ながら、ほぼアドリブで話しています。
全体では10分くらいになり、ちょっと長いかな、とも思いましたが、それでもどうにか見てもらえました。
まあ、キャリアを積んだ環境・エネルギージャーナリストとしての知見を活かすことができたし、それで多少なりとも関心をもって聞いてもらえる解説ができたのかな、とは思います。
再生回数でいえば、岩谷産業を紹介した動画が14万回も再生されたし、筆者が出演したものではこれが最大でした。それだけ、世間が水素に注目していたということでしょう。
他にも注目の技術やエネルギー業界のしくみなどの解説動画も作成しています。
いずれにせよ、優秀なディレクター、カメラマン、編集者などのスタッフがいることで、見てもらえる動画が作成されたということになります。筆者はどちらかといえば、動画の素材として使われる立場でしたし、素材は十分に生かしてもらえたと思っています。
結局、このYouTubeも、会社の都合で終了せざるを得ませんでしたし、制作していたメンバーもみんな退社してしまうのですが、それはまた別の話です。
とはいえ、事業としてはある程度成果を出していたものだけに、残念というのもあるのですが、まあ、しかたないですね。足元で利益を出す事業ではありませんから。
オウンドメディアとしてYouTubeで動画を公開する場合でも、テキスト系のオウンドメディアと変わらないと思います。オウンドという発想を捨てて、見てもらえる動画をつくることが大切だと思います。
結局それは、自社がスポンサーとなっている番組、というものでしょうか。
しかし、自社の広告や広報を考えないことは重要です。というのも、情報を提供することによって、市場を拡大することが、目的の1つだからです。そしてもう1つの目的は、ブランド力の向上です。
この2つで投資が回収できればいいと思いますし、また、本業がそこで回収できるだけの質の高いものであるべきです。
脱炭素の情報を提供しつつ、石油を売っていては、意味がありません。
もちろん、広告収入も入りますが、これは再生回数が多い動画を制作できたごほうびくらいに考えればいいと思います。
結局、エナシフTVのブランド力は、会社を辞めた筆者の方にも残っています。
しばしば、「YouTubeを見ました」と言ってもらえるのはありがたいことです。そのことが、信用にも多少なりともつながっています。エナシフTVのメンバーには感謝しかありません。
とまあ、そんな感じで動画作成にかかわってきました。こうした経験、少しでも読者のお役に立てばいいかな、と思います。
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