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【技法・材料】重要無形文化財保持者   前田昭博氏、十四代今泉今右衛門氏のお話を聞いて

【技法・材料】重要無形文化財保持者   前田昭博氏、十四代今泉今右衛門氏のお話を聞いて

 5月8日、石川県立美術館にて、「白磁」の重要無形文化財保持者 前田昭博氏、「色絵磁器」の重要無形文化財保持者 十四代今泉今右衛門氏による講演がありました。聞き手は、国立工芸館長 唐澤昌宏氏です。(全国・いしかわの工芸講演会 特別対談「伝統陶芸の未来」)

 高校生の時に出光美術館や戸栗美術館で鑑賞して以来、私は鍋島焼、とくに最盛期の色鍋島が大好きです。今回の講演は、またとない機会であり、何日も前

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【材料】日本茜の発芽

【材料】日本茜の発芽

日本茜栽培

 昨年冬、大学の工芸科の庭で栽培されていた日本茜の黒く光沢のある種を集め、黒ポットに直播きしました。一時期は大変な積雪でしたが、4月に入って金沢もずいぶんと暖かくなってきました。そしてついに、日本茜が発芽しました🌱

 日本茜は、その根が赤色の染料としてかなり古い時代から利用されてきました。絵画に使われたか気になるところですが、染料の特定は現在の調査ではなかなか難しいようです。

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【材料】多田銅山の群青・緑青

【材料】多田銅山の群青・緑青

 絵画や仏像、建造物を彩る群青・緑青は、それぞれ藍銅鉱(Azurite)・孔雀石(Malachite)という鉱物からつくられた顔料である。
 
 藍銅鉱・孔雀石は、どちらも銅が水や空気に触れて変化した二次鉱物で、塩基性炭酸銅を主成分とする鉱物である。両者は混じり合って一緒に産出することも珍しくない(Azurmalachite)。やまと絵の山水の色彩感覚は、原石の青と緑の調和した姿を想起させる。

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【材料】松田壽男『古代の朱』

【材料】松田壽男『古代の朱』

 先日、東洋史家・松田壽男氏の著書『古代の朱』を手にした。そのタイトルに強くロマンを掻き立てられたからである。

 本書は、水銀とその原料である辰砂の背景にある壮大な文脈を紐解く、他に類を見ない著作である。
 水銀に関する歴史研究は、松田氏以前は全く未開拓の領域。古代史に通じた江戸時代の国学者たちも、水銀に関する和歌の解釈に難儀した。その理由は、古代と現代とがあまりにも時間的に隔絶されており、数少

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【文化財】「ヨーロッパ古典絵画の輝き―模写に見る技法と表現」茅ヶ崎市美術館

【文化財】「ヨーロッパ古典絵画の輝き―模写に見る技法と表現」茅ヶ崎市美術館

 神奈川県湘南の茅ヶ崎にやって来ました。鎌倉・藤沢・逗子・葉山も近い人気観光地です。

 今回のお目当ては、茅ヶ崎市美術館の「ヨーロッパ古典絵画の輝き―模写に見る技法と表現」です。

 ヨーロッパ古典絵画の謎を材料・技法の面から解読する展覧会です。原画と同じ材料・技法にこだわって制作された模写作品は、一点一点見応えがあります。解説も豊富な図版と詳しい文章で分かりやすく、驚きの連続です。材料や道具は

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【材料】紫草(日本ムラサキ)

【材料】紫草(日本ムラサキ)

紫根(紫草の根)の深紫

 先日、日本民藝館で岩手県鹿角の紫根の絞り染(明治期)を目にしました。紫草の根から抽出された濃い紫色の美しさに、大変衝撃を受けたのを記憶しています。色彩が氾濫する現代においてもなお、自然から取り出された色彩は別格のオーラを放ち、私たちを惹きつけます。
 冠位十二階の最高位の色であったように、古くから紫は貴重な色でした。粉砕して紫の顔料となる鉱物は、あまり手に入らなかったよ

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