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【短編小説】誰そ彼のあなたへ
「黄昏の語源は『誰そ彼』なんだって。知ってたか?」
「何それ? 知らない。そもそも黄昏って何」
「いやお前、黄昏も知らんの? それはヤバない?」
「ヤバないよ。全然知らないよ。私の友達たぶん誰も知らんよ」
「義務教育の敗北じゃん。一学年違うだけでそんな教養の差できんやろ」
「地頭の差じゃん?」
「お前そんな自分を卑下すんなよ」
「ヒゲ? 何それ。あんたが勉強オタクって意味なんだけど」
「最近の
【魔王と暗殺者】私と彼女の人生は儘ならない。【[It's not]World's end】
一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】1歳 二人の侍女と私と[3]「お目覚めですか? ネイル様」
「……うん、おはようファーラ」
「もう夕刻でこざいますよ」
「あぁ、そうだね……こんばんは」
「はい、こんばんは。深く眠っていらしたようですね」
「うん、パニャからここで働くことになったいきさつを聞いたからかも。ちょっとこわい話だったから」
「……左様でございますか」
「うん。だいじょうぶだよ。ちゃん
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】1歳 二人の侍女と私と[2]
「ネイル様! まだ寝ないの!? 寝ないのですか!?」
パニャから声をかけられた。
彼女は人に合わせて言葉遣いを変えるのが苦手なのか、私と話す時は敬語で言い直すことがよくある。
「パニャ、いつもみたいにお話ししていいよ?」
「そうもいきません! またファーラ先輩に叱られちゃいますから!」
だそうだ。
言葉遣いは
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】1歳 二人の侍女と私と[1]
ベビーベッドと呼ぶにはやや大きい、一畳ほどの柵付きの木製ベッド。
清潔で見るからにふかふかした柔らかそうなマットが敷かれたベッドの上では、半透明の赤ん坊が仰向けでぷかぷかと宙を漂っている。
当然、マットの意味は無い。
マットの上、20センチくらいの高さで、見えない波に漂っているかのごとく上に下に、右に左に小さく揺れている
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】1歳 魔法とママとそんなのと[2]
「……ちゃん? ネイちゃん?」
「え?」
ハッと我に返る。
ママの顔が私の目の前にあった。
「わああっ。マ、ママ。どうかした?」
「どうかした? はママの台詞よ? 声が聞こえないほどボーッとして。ネイちゃん、どうかしたの?」
そうだった。私はママの使った魔法を見て、ママの女神の笑み――悪魔の笑み?――を見てその
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】1歳 魔法とママとそんなのと[1]
じぃーーー。
おっ。
へぇー。
あー。
へぇー。
おぉ?
おおぉ?
えぇっ!?
あっ……ふぅーん。はぁー。なるほどぉ。
なるほどなるほど。そういうアレかー。なるほどねー。
「ん? なぁに、ネイちゃん? ママの魔法、気になるの?」
「うん。わたしもママみたいに、まほぉつかってみたい。だからママがまほぉつ
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】1歳 ママと妹と私と 暖かい。
そう思った。
それが、私が部屋に入って最初に感じたこと。
部屋全体を包む、まるで麗らかな春の陽気のような感覚。
私はこの感覚を知っている。
忘れるはずがない。
ほんの1年前に私は同じ感覚に包まれたのだから。
部屋の中央に設置された寝台に目をやると、浴衣のような白衣を着たママの姿が映った。
ヘッドボードに背中を
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】1歳 パパと侍女と
「ぱぱー。うぁだ、うぁれないかなー?」
パパの膝の上にちょこんと座る私。
そして私を後ろから抱っこして一人掛けのソファに腰を沈めるパパ。
背中をパパに預け顔を上げると、私はたどたどしい喋り方で問い掛けた。
「うーん。きっともうすぐさ。ネイルはお姉ちゃんになるのが楽しみなのかい?」
「うんっ、たのしぃー」
楽しみ。そう言いた
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】ママと私と[2]
この女性は誰だろう?
私はまた情報を処理しきれなくなり、頭をこてん、と左に倒し頭の上に『?』を浮かべた。心の中で。
両目はまだ眩い光の強襲に慣れずズキズキしているし、視界はほとんどボヤけている。
相変わらず身体の自由は利かず身動き一つとれやしない。
そこに突然の仰向けジェットコースター(超低速)
そして姿勢が安定したと思っ
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一章【呉 理嘉 -転生-】
【転生】ママと私と[1]
私は意識を取り戻した。
ハッと我に返ったとでも言えばいいのか、覚醒したとでも言うべきか、突然意識が鮮明になった。
と同時に感じる違和感と圧迫感。
辺りは真っ暗。身体は窮屈。
私の視界には何も映らない。
って、目を瞑ったままだった。暗くて当たり前だった。
……て、あれ? 瞼がすごく重たい。
と言うか瞼が開けられない。
と
【魔王と暗殺者】私と彼女の人生は儘ならない。【[It's not]World's end】
一章【呉 理嘉 -転生-】
【落下】※文末に用語解説あり「はぁっ……はぁっ…………ふっ」
ぐっ、と右手の人差し指と中指に力を入れて体を引っ張り次の手をホールドする。
「ねぇー、ねぇってばー。理嘉ちゃんってばぁー。……そろそろ帰ろうよぉ。日も暮れてきたし、それに……」
左手でカチ、右手はポケットに。
左足の爪先で石を蹴って跳び上がる。
右足を壁に滑らせるようにスメアさせ
【魔王と暗殺者】私と彼女の人生は儘ならない。【[It's not]World's end】
【抄録】
夕暮れの体育館。
趣味のボルダリングでテスト勉強のストレスを発散していた私は、手を滑らせ落下し死んでしまう。
目が覚めると、そこは異世界。
誰もが見蕩れる美貌。
誰をも凌駕する才能。
誰もが私を持て囃す。
私は魔王家の跡継ぎとして新たな生を受けた。
恵まれた才と環境で私は何不自由無く日々を送る。
この優しい世界で私は第二の人生を歩むーーそう思っていた。
ある日の放課後。
私の忠告に耳
【短編】人外娘の心外な夢 終
【アルラウネ】霖の日の終わり「もうすぐカラカラ期かぁ。今年も種を残せなかったなぁ」
ぽつぽつとまばらに降る雨粒が、アイシャの幹をしっとり濡らしている。
雨季にたっぷりと養分を大地から吸収した彼女の身体は少しだけ膨らんでいる様に見えた。
あの日。
オルと最後に話した日に、二人で暇を持て余し手遊びをしていた場所で、あの時の、オルとの最後の会話を思い出していた。
ぬかるんでいた大地はだん
【短編】人外娘の心外な夢6
【アルラウネ】霖の日5「妹が病気なんだ。街の医者に見せたら助からないと言われた。そして思い出したんだ。昔旅人に聞いた、万病に効く万能薬。アルラウネが持つという霊薬の話を」
「無いわよ? そんな物」
虚に蹲ったままの男と、向かいで湿った大地に腰を下ろすオル。
腐りかけた男の足をオルの身体から生える薬草で治癒しながら、オルは真実を伝えていた。
「私達、霊薬なんて持ってないわ。作ってもいない」